KADOKAWA Technology Review
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コネクティビティ

A chip design that changes everything: 10 Breakthrough Technologies 2023 RISC-V

コンピューター・チップの設計は高額な費用がかかり、ライセンスを得るのも困難だ。「RISC-V」と呼ばれるオープン標準の設計基準により、こうした状況が一変しようとしている。

by Sophia Chen 2023.03.06
Nick Little
キープレイヤー
RISC-V インターナショナル、インテル、サイファイブ、セミファイブ、中国RISC-V産業アライアンス
実現時期
実現済み

メーカーが違うのに、なぜスマホとBluetoothスピーカーが接続できるのか? 考えたことがあるだろうか。それはBluetoothがオープン標準だからだ。つまり、要求される周波数やデータの暗号化プロトコルといった設計仕様が一般公開されているからである。イーサネット、Wi-Fi、PDFなど、オープン標準に基づくソフトウェアやハードウェアはすっかりおなじみになっている。

そして今、「RISC-V(「リスク・ファイブ」と読む)」と呼ばれるオープン標準が、企業のコンピューターチップ製造のあり方を変えるかもしれない。

インテルやアーム(Arm)をはじめとするチップ企業は、長きにわたって自社のチップ設計の所有権を保持してきた。そのため、顧客企業は、自社製品とは関係ない機能が搭載されている市販チップを購入したり、チップを独自設計するのに余分な費用を払ったりすることになる。RISC-Vはオープン標準であるため、誰もがその仕様を無料で利用してチップを設計できる。

RISC-Vはコンピューターチップの命令セット用に設計基準を規定している。この命令セットは、トランジスターが表す値を変更するためにチップが実行できる基本動作を記述するものだ。たとえば、2つの数字をどのように加算するかといったことである。RISC-Vの最も単純な設計では、命令は47個しかない。だがRISC-Vは、より複雑な機能を持つチップを求める企業用に、別の設計基準も提供している。

現在、企業や学術機関を含め、世界中で3100の会員が、非営利組織であるRISC-Vインターナショナル(RISC-V International)を通じ、こうした設計基準の確立と開発に向けて協力している。2022年2月、インテルはRISC-Vチップを開発する企業の支援も含めた、10億ドルの基金設立を発表した。

RISC-Vはすでに、イヤホン、ハード・ドライブ、人工知能(AI)プロセッサーなどに採用され始めており、すでに100億コアが出荷された。データセンターや宇宙船用のRISC-V設計にも取り組んでいる企業もある。RISC-Vの支持者は、数年のうちにこのチップがあらゆる場所で使われるようになると予想している。

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