KADOKAWA Technology Review
×
【春割】実施中!年間購読料20%オフ!
子宮内の胎児の脳外科手術に成功、出産後の手遅れ防ぐ
37週の胎児の3D超音波画像(提供写真)
生物工学/医療 無料会員限定
Doctors have performed brain surgery on a fetus in one of the first operations of its kind

子宮内の胎児の脳外科手術に成功、出産後の手遅れ防ぐ

命にかかわる脳の疾患を持つ赤ちゃんに対し、生まれる前の外科手術が米国のボストン小児病院らのチームによって実施された。手術は成功し、赤ちゃんは現在、元気に生後7週目を迎えている。 by Jessica Hamzelou2023.05.09

本人はまだ分かっていないが、ボストン近郊に住むある女の子の赤ちゃんが、歴史に名を刻んだ。生後7週間となるこの赤ちゃんは、まだ子宮の中にいる間に実施する実験的な脳手術の、最初の被施術者の1人になったのだ。この手術の成功によって、彼女の命が救われた可能性がある。

女の子は生まれる前、脳の中の幅14ミリの嚢包に血液が溜まる危険な症状を発症した。この症状は、生まれた後に脳障害や心疾患、呼吸困難などの疾患をもたらし、命に関わる可能性もあった。

女の子の両親は、それらの疾患のいずれかが発症する前に医師による治療が可能かどうか確認するため、子宮内外科治療の臨床試験に登録した。治療は効果があったようだ。手術を実施したチームは現在、同じ方法を用いて、より多くの胎児を治療することを計画している。他の似たような脳の症状にも、この方法が有効かもしれない。胎児脳外科手術は、それらの疾患に対する希望となる可能性がある。

ガレン大静脈瘤と呼ばれる今回の赤ちゃんの疾患は、妊娠30週目の定期超音波検査で初めて発覚した。この症状は、脳内で静脈と動脈がつながることで起こる。動脈と静脈の血管はそれぞれ異なる機能を担っており、別々に分かれていなければならない。動脈は、心臓から送り出される酸素含有量の多い高圧の血流を運ぶ一方で、壁の薄い静脈は、低圧の血流を逆方向に運んでいる。

この2種類の血管がつながってしまうと、動脈から流れ出る高圧の血流によって静脈の薄い壁が引き伸ばされてしまうことがある。「基本的には、時間とともに静脈が風船のように膨らんでいきます」と、ガレン大静脈瘤を患う赤ちゃんたちの治療にあたっている、マサチューセッツ州ボストン小児病院の放射線科医、ダレン・オーバックは言う。

血液の風船

症状の結果として生じる血液の風船は、赤ちゃんに深刻な問題を引き起こす場合がある。「血液循環の他の部分から、血液が奪われてしまいます」と、英国オックスフォード大学病院の顧問神経外科医、マリオ・ガナウは言う。ガナウ医師は今回の手術に携わっていない。豊富な酸素を含む血液が脳の他の部分へ十分に行き渡らなくなれば、脳障害が起こる可能性があり、脳内出血の危険性もある。血液を送り出すため心臓に余分な負担がかかれば、心不全になることもある。他の臓器、特に …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中!年間購読料20%オフ!
人気の記事ランキング
  1. Will fusion power get cheap? Don’t count on it. 核融合は本当に安くなるのか? 楽観論に「待った」をかける新研究
  2. Digging for clues about the North Pole’s past 12万年前は無氷だった?海底22メートルの泥で掘り起こす北極点の謎
  3. Is carbon removal in trouble? 炭素除去業界に激震、最大顧客のマイクロソフトが購入を一時停止
MITテクノロジーレビューが選んだ、 世界を変える10大技術

MITテクノロジーレビューの記者と編集者は、未来を形作るエマージング・テクノロジーについて常に議論している。年に一度、私たちは現状を確認し、その見通しを読者に共有する。以下に挙げるのは、良くも悪くも今後数年間で進歩を促し、あるいは大きな変化を引き起こすと本誌が考えるテクノロジーである。

特集ページへ
AI革命の真実 誇大宣伝の先にあるもの

AIは人間の知能を再現する。AIは病気を根絶する。AIは人類史上、最大にして最も重要な発明だ——。こうした言葉を、あなたも何度となく耳にしてきたはずだ。しかし、その多くは、おそらく真実ではない。現在地を見極め、AIが本当に可能にするものは何かを問い、次に進むべき道を探る。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る