1本のスクープから始まった「検閲産業複合体」取材の記録
2025年4月15日、外国からの偽情報を監視していた米国務省の小さな部署が、翌日に閉鎖されるという情報が記者のもとに入った。この1本のスクープから、右派インターネットの周縁にあった考えが政権の論理になるまでを追う取材が始まった。MITテクノロジーレビューの特集・調査担当上級記者アイリーン・グオによる取材ノート。 by Eileen Guo2026.09.28
私が「検閲産業複合体」という言葉を初めて耳にしたのは、2025年4月15日のことだった。
その日、米国務省内の小さな部署が翌日にも閉鎖されるという情報が、私のもとに入ってきた。その部署は、ロシア、イラン、中国などによる外国からの偽情報の監視と、それへの対抗を専門としていた。
閉鎖の理由は何か。外国情報操作・干渉対策部(R/FIMI)と呼ばれるその部署は、いわゆる検閲産業複合体における国務省の中枢拠点として機能していると非難されていた。検閲産業複合体とは、政府機関、学術界、市民社会団体、巨大テック企業のプラットフォームが広範に連携し、偽情報対策を名目にネット上の保守派・ポピュリスト的な言論を抑圧しようと共謀しているとされる巨大な構造のことだ。
私は4月16日の午前10時半ごろ、このニュースをスクープした(その後数週間でさらに続報も報じた)。だが私にとって、それはある考えの深部へと踏み込む取材の出発点に過ぎなかった。
その考えは右派インターネットの周縁から主流へと移行し、潤沢な資金を持つ保守系メディアプラット・フォームや非営利団体のネットワークによって支持・拡散され、最終的には第2次トランプ政権における内外政策の多くを貫く、一種の支配的な論理のようなものになった
しかしこれは単なる政策の話ではない。検閲をめぐる考えの武器化は、政策の外でもオンラインで情報を得たり互いにやり取りしたりしている世界中の数十億人、つまり私たち全員に影響を及ぼしている。
このナラティブ(物語)がインターネットにとって何を意味するかについては、私が書いたこちらの記事を読んでほしい。
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- アイリーン・グオ [Eileen Guo]米国版 特集・調査担当上級記者
- 特集・調査担当の上級記者として、テクノロジー産業がどのように私たちの世界を形作っているのか、その過程でしばしば既存の不公正や不平等を定着させているのかをテーマに取材している。以前は、フリーランスの記者およびオーディオ・プロデューサーとして、ニューヨーク・タイムズ紙、ワシントン・ポスト紙、ナショナル・ジオグラフィック誌、ワイアードなどで活動していた。

