まず増やし、後で働かせる
遺伝子改変微生物で
肥料を再発明する企業
化学肥料の製造は、世界の温室効果ガス排出量の約2%を占める。これを微生物で置き換える試みは長く続いてきたが、窒素を作らせると微生物自身が増えなくなるという壁があった。スイッチ・バイオワークスは、まず増殖させ、その後で窒素を作らせる遺伝子スイッチで、これを乗り越えようとしている。 by Casey Crownhart2026.09.02
- この記事の3つのポイント
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- 微生物が窒素を固定する「遺伝子スイッチ」技術で化学肥料代替を目指すスタートアップが登場
- 増殖と窒素固定のトレードオフという生物学的制約が、微生物肥料開発の核心的課題となっている
- 代替可能な肥料は最大50%程度にとどまり、合成肥料の完全置換は当面実現しない見通しだ
肥料は世界の食料供給に不可欠だが、その製造には大量のエネルギーが必要で、大量の温室効果ガスを排出する。そうした中、微生物がその解決策になることを期待する企業がある。
作物の根の周囲の土壌に有益な微生物を加えることで、植物に養分を与え、成長に不可欠な窒素を供給できることを示す研究が増えている。これにより、化学肥料への依存を減らせる可能性がある。化学肥料の製造は、世界の温室効果ガス排出量の約2%を占める。また、農家のコスト削減にもつながる可能性があり、特にイランとの戦争によってここ数カ月、エネルギーと肥料の価格が急騰している中では大きな恩恵となる。
人類は、堆肥のような生物由来の肥料を数千年にわたって利用してきた。また、企業は長年、遺伝子工学を利用したものも含め、微生物を使った肥料を開発してきた。しかし、作物に安定して窒素を供給しながら、微生物自身も旺盛に増殖できるよう設計するのは難しい。
スイッチ・バイオワークス(Switch Bioworks)というスタートアップは、微生物がまず定着して健全なコロニーを形成し、その後、窒素を産生するモードへ切り替わるという新しいアプローチを採用している。「肥料を根本から再発明しなければなりません」と、同社の創業者兼CEO、ティム・シュナーベルは言う。
大気の約80%は窒素だが、植物はその「ただで手に入る」窒素を直接利用することはできない。窒素はほかの元素と反応しにくいためだ。植物が利用するのは、アンモニアなど、より反応性の高い化合物に変換された「固定窒素」である。自然界では、微生物がこの窒素固定を担うことができる。マメ科植物のように、窒素固定細菌と共生関係を築き、根にできる根粒の中に細菌を住まわせている植物もある。合成肥料は本質的には、天然ガスからアンモニアを製造して農地に施すハーバー・ボッシュ法による工業的な窒素固定である。
生物由来の肥料は、植物のために窒素を固定できる微生物を使い、合成肥料の一部を置き換えることを目指している。しかし、微生物肥料を開発する企業が直面している課題の一つは、微生物がアンモニアを作り、それを放出するには大量のエネルギーが必要になることだ。エネルギーを窒素固定に注ぎ込みすぎると、微生物自身の増殖が妨げられる。
根の周囲には、ある程度の数の微生物を定着させる必要があると、シュナーベルは説明する。必要な数の微生物をすべて植物に直接与えるのは、費用もかかり、物流面でも難しい。そのため、最初は少数の微 …
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