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豪華装備も航続距離も捨てたスレートの格安EV、米国で売れるか
Slate Auto
Is Slate Auto's new electric truck the EV Americans need?

豪華装備も航続距離も捨てたスレートの格安EV、米国で売れるか

米国の新車平均価格は約5万ドル。これに対し、スレート・オートの新型ピックアップトラックはベースモデルが2万5000ドル未満だ。窓は手回し式、航続距離は約330キロメートルと、米国市場の常識に真っ向から逆らう。この割り切りは通用するのか。 by Casey Crownhart2026.08.28

この記事の3つのポイント
  1. スレート社が2万5000ドル未満の小型・短航続距離EVトラックを発表し、EV普及の新モデルを提示した
  2. 米国人の実走行距離は1日56km未満が大半であり、長航続距離へのこだわりは実態と乖離している
  3. 価格優位性と生活コスト高騰が追い風となる一方、シンプルさへの消費者受容が普及の鍵を握るか
summarized by Claude 3

電気自動車(EV)は、米国の新車販売全体の10%にも満たず、その数字は減少している。気候変動の観点からすれば、これはかなり厳しい状況だ。とりわけ、輸送セクターが米国最大の温室効果ガス排出源であることを考えれば、なおさらである。

この状況を好転させる助けになるかもしれないものとは? スレート・オート(Slate Auto)の新型トラックだ。豪華装備と長い航続距離を求める米国市場で、クルマを売るための常識にことごとく逆らうような車両である。

同社は、質素と言っていいほど徹底して簡素さを追求している。「スレート(Slate)」は、ホンダ・シビック(Honda Civic)よりも全長が短い、小型の2ドア・ピックアップトラックだ。メディア報道の多くが注目しているのは、ベースモデルの窓が手回し式だという点で、まるで20世紀からそのまま持ってきたような装備である。

スレートはまた、航続距離でガソリン車に対抗しようとする他のEVメーカーの路線とも一線を画している。このトラックには、容量65キロワット時の小型リン酸鉄リチウム(LFP)電池が搭載され、公称最大航続距離はわずか約330キロメートルだ。比較すると、最も基本的なテスラ(Tesla)の「Model 3(モデル3)」は、1回の充電で約515キロメートル以上走行できる。

航続距離が短いことを受け入れ、米国人がクルマに求めるようになった豪華な装備を省くことで、スレートはベースモデルを2万5000ドル未満で提供できる。Bluetooth(ブルートゥース)対応ステレオシステムや車体のビニールラッピング、さらにはパワーウィンドウといったオプションを追加する顧客もいるだろう。それでも価格は、米国の新車平均価格である約5万ドルを大きく下回る可能性が高い。

大型化が進む市場で、これほど小さくシンプルなクルマを選ぶのは奇妙に思えるかもしれない。しかし、これまでのやり方がEVメーカーにうまく機能してきたとは言い難い。数年前、米国の自動車電動化をけん引する存在として期待されていたのは、フォード(Ford)のF-150 Lightning(F-150ライトニング)だった。2021年に発表されたこのモデルは、米国で最も売れている車種の電動版だった。

しかしフォードは2025年12月、発表からわずか4年でこのトラックの生産を終了した。もちろん、すべてがLightningのせいというわけではない。トランプ第2次政権が、EV普及を後押しするための税額控除やその他の支援策を大幅に削減したことも影響している。

Lightningは価格上昇にも悩まされた。2022年に出荷が始まった当初、ベースモデルは約4万ドルだったが、最終年には価格が5万4000ドルを超えた。値上がりの一因は、巨大な電池(バッテリー)にあった。約480キロメートル近い航続距離を実現するには、スレートのトラックの約2倍の容量を持つ電池が必要だったのだ。

こうした航続距離へのこだわりには、実のところそれほど根拠がない。米国人は昔から航続距離の長さを追い求めてきたが、平均的なドライバーが1日に走る距離は約56キロメートル未満で、個人の車による移動の約90%は約32キロメートル以下だ。

EVドライバーを対象とした調査でも、同様の傾向が見られる。最近のある研究では、通常の1日で使うのはEVの航続距離の20%未満であることが多いとわかった。

ドライバーが実際に必要とする航続距離は、自分で思っているよりはるかに短いという考え方は、今なら以前より説得力を持つかもしれない。普段の用事ではなく、最も長いロードトリップを基準にクルマを選びがちな米国人にとってさえ、そうだ。米国民のおよそ半数が、ガソリンや食料品といった生活必需品の支払いに苦労している。また、最近のハリス・ポール(Harris poll)によると、米国人の95%が、手頃な価格で生活することが難しい危機的状況にあると考えている。ガソリンスタンドに立ち寄らずに済む安価なクルマは、魅力的な選択肢に思える。

手頃な価格のEVは、航続距離が短くても、すでに世界の他の地域で購入する人を見つけている。中国では現在、4000万台を超えるEVとプラグインハイブリッド車が走っており、新車販売のおよそ半分が電動車だ。2025年に中国で販売された新型EVの航続距離は平均約398キロメートルにすぎなかった。同じ期間の米国の平均は約529キロメートルで、欧州はその中間の約452キロメートルだった。

スレートは2026年末に予約注文分の納車を始める予定だ。同社の工場は初年度に10万台、その後まもなく15万台の生産能力を持つ見込みである。同社によれば、すでに数千人の顧客が予約注文を入れているという。

このトラックの将来性を信じている人がいることは明らかだ。ジェフ・ベゾスを含む投資家は、3回の主要な資金調達ラウンドを通じて、同社に総額約14億ドルを投じている。フォードも近くこの分野に再参入する。同社は独自の小型電動トラックを開発しており、2027年に小売価格約3万ドルで登場する見込みだ。

スレートの成否を左右する最大の問いは、価格の安さと引き換えに、ドライバーが小型で航続距離の短いクルマを受け入れられるかどうかだ。今の時点では、私は答えは「イエス」だと思う。

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MITテクノロジーレビューの気候変動担当記者として、再生可能エネルギー、輸送、テクノロジーによる気候変動対策について取材している。科学・環境ジャーナリストとして、ポピュラーサイエンスやアトラス・オブスキュラなどでも執筆。材料科学の研究者からジャーナリストに転身した。
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