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持続可能エネルギー

Carbon removal factory 二酸化炭素除去工場

大気中の二酸化炭素を捕捉する大規模なプラントは、危険なレベルの地球温暖化を回避するのに役立つと同時に、新しい産業の創出に貢献するだろう。

by Casey Crownhart 2022.04.11
Kristján Maack
キープレイヤー
クライムワークス(Climeworks)、カーボン・エンジニアリング(Carbon Engineering)、カーボン・コレクト(Carbon Collect)
実現時期
実現済み

クライムワークス(Climeworks)は2021年9月、「オルカ(Orca)」と呼ばれるプラントを始動させた。オルカは、空気中の二酸化炭素を除去するプラントとしては過去最大規模を誇る。

アイスランドのレイキャビク郊外にある同プラントでは、年間4000トンの二酸化炭素を回収できる。大型ファンで吸引した空気をフィルターに通し、二酸化炭素分子を他の物質に結合させる。次に、同社のパートナーであるカーブフィックス(Carbfix)が、二酸化炭素を水と混ぜてポンプで地下に送り込み、玄武岩と反応させて最終的には石に変える。同プラントは、主に近隣の地熱発電所から供給されるカーボンフリーの電力だけで運営されている。

workers at the orca plant
オルカの各モジュールは、十数台の二酸化炭素除去ユニットで構成されている。格子を通った空気がフィルターを通過する際に、吸着剤で二酸化炭素を捕捉する。フィルターが満杯になると、本体前面の格子を閉めて、密閉された空間にパイプで熱を送り込み、吸着した二酸化炭素をフィルターから放出させる。放出された二酸化炭素がポンプで貯蔵場所に運ばれると、再び格子が開いて二酸化炭素捕捉プロセスが再開される。

確かに、年間4000トンはそれほど多くない。自動車900台分の年間排出量よりも少ない。また、さまざまな研究によると、地球温暖化で気温が産業革命以前の水準から2℃以上上昇するのを防ぐためには、地球全体で数十億トンの二酸化炭素を大気中から除去しなければならないとされている。4000トンはごく一部に過ぎない。

 

オルカは、さまざまな方法で組み合わせることができるモジュールで構成されているので、同じようなプラントを世界中で建設しやすくなっている。クライムワークスは、豊富な地熱発電を利用できるアイスランドに最初のプラントを設置した。これにより同プラントは、二酸化炭素を回収する過程で発生する排出量を最小限に抑えられる。

 

各モジュールの背面で、ろ過された空気をファンが大気中に放出している。ファンに柔軟なカバーをかけることで、フィルターに緩く留められた小片が、アイスランドの強い風で吹き飛ばされないようにしている。これらのカバーが必要なのは、このユニットがテストされている間、最初の1年間だけのはずだ。

 

捕捉された二酸化炭素は、固体の炭酸塩鉱物に変換される。ここでは、黒い玄武岩の石基内の光点として見られる。

 

さらに大規模な二酸化炭素回収プラントも計画されている。ブリティッシュコロンビア州スコーミッシュに拠点を置くカーボン・エンジニアリング(Carbon Engineering)は2022年に、二酸化炭素を年間100万トン除去できる工場を、米国南西部で建設開始する予定だ。同社はまた、さまざまなパートナーとともに、スコットランドノルウェーで、年間50万トンから100万トンの二酸化炭素を捕捉するプラントの計画作成や設計の作業を開始している。

pipes across landscape in Iceland
二酸化炭素を加圧して水と混ぜ、巨大なパイプでカーブフィックスに送る。カーブフィックスはポンプで、二酸化炭素を地下に貯蔵する。
カーブフィックスが運営する注入用井戸から、地下1000メートルに二酸化炭素を送り込む。送り込まれた二酸化炭素は玄武岩と反応して、2年以内に鉱物の形で固定される。

大気中の二酸化炭素を回収するプラントをどんどん増やしていくことで、これらの企業は運用を最適化し、コストを下げ、いずれはスケールメリットを実現できるはずだ。クライムワークスは、大気中から二酸化炭素を回収するのに現在1トン当たり600ドルから800ドルかかっているのを、2030年代後半までに100ドルから150ドル程度に減らせると試算している。

すでにマイクロソフト、ストライプ(Stripe)、スクエア(Square)など、現在の高いコストを支払ってでも二酸化炭素を吸収し、排出量を相殺しようとする企業や個人も増えている。そうした企業が初期の重要な収益源になっている。

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