フラッシュ2023年12月8日
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生物工学/医療
損傷したDNAを光回復酵素が修復する仕組みを解明=理研など
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]理化学研究所、台湾中央研究院・生物化學研究所、台湾大学、大阪大学などの国際共同研究チームは、紫外線によって損傷したDNAを修復する「光回復酵素」の動的構造を解明した。
細胞内で紫外線によってDNAに損傷が生じると、DNA複製や転写の妨げとなり、細胞死や突然変異、がん化など、細胞にさまざまな弊害をもたらす。光回復酵素は青色光が当たるとDNAの修復を始めるが、修復の最中の酵素およびDNAの立体構造はこれまでわかっていなかった。
研究チームはまず、還元状態の古細菌のDNA光回復酵素のタンパク質と、シクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)を持つDNAを混ぜて反応直前の酵素-DNA複合体の結晶を準備した。次に、反応のトリガーとなる青色光を当て、ピコ秒(1兆分の1秒)からサブミリ秒(1万分の1秒)の時間差でX線自由電子レーザー(X線領域のパルスレーザー)を照射。回折光から得られる数万のイメージデータからタンパク質と修復DNAの立体構造を決定し、DNA光回復酵素が損傷DNAを修復する際の全ての原子メカニズムをリアルタイムで解明することに成功した。
今回の成果は、疾患の原因にもなるDNA損傷の修復過程に関する理解を深め、立体構造に基づくより合理的な人工酵素や薬剤の設計に寄与することが期待される。
研究成果は科学雑誌サイエンス(Science)オンライン版に2023年12月1日付けで掲載された。
(中條)
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