コンパクトに運べる「宇宙飛行士の家」 プロトタイプが完成
米国の航空宇宙企業「シエラ・ネバダ(Sierra Nevada)」が、新型の膨張式居住の実物大プロトタイプを公開した。このプロトタイプは、深宇宙で生活しながら任務に取り組む未来の宇宙飛行士の住居となるかもしれない。
8月21日にヒューストンのジョンソン宇宙センターで公開されたこのモジュールは、直径8メートル、容積約283立方メートル。内部は3階層に分かれており、第1層は食品や保管機器の倉庫、第2層は農耕モジュールと実験用の器具の収容、第3層が睡眠と食事のためのスペースとなっている。
新モジュールの容積は国際宇宙ステーション(ISS)のわずか3分の1でしかない。だが、ISSは複数の構成要素を何回にも分けて打ち上げ、組み立て、何年もかけて建造された。この膨張式モジュールは圧縮され1回の打ち上げ貨物として積み込むことができ、展開、設置作業もわずか数日で完了する。シエラ・ネバダのモジュールは防弾チョッキの材料にも使われる軽量素材ベクトロン(vectron)でできている。3メートル弱の大きさに圧縮でき、 大半の大型ロケットのペイロード・フェアリング(打ち上げロケットの先端部分)内に容易に収容できる。
2016年、米国航空宇宙局(NASA)は「月ゲートウェイ・プロジェクト(Lunar Gateway project)」の一環として、小型の宇宙住居の製作と実験に取り組む航空宇宙企業6社のうちの1社としてシエラ・ネバダを選んだ。月ゲートウェイ・プロジェクトは、月より遠い深宇宙の探査ミッションの起点として運用される宇宙ステーションだ。ノースロップ・グラマン(Northrup Grumman)が小型宇宙住居製作の本契約を獲得したため、シエラ・ネバダが製作したモジュールの用途は未定だ。
このモジュールは、ビゲロー・エアロスペース(Bigelow Aerospace)の膨張式モジュール「ビーム(BEAM)」と同様に、ISSに接続して使われるかもしれない。あるいは、新たな地球低軌道ステーションで利用されたり、月や火星への旅の役割を担う可能性もある。