「VRは最初の驚きだけで中味なし」と、オキュラス幹部が認める
2016年は「VR元年」といわれていたが、VRメーカーの幹部でさえ、なぜVRに価値があるのか、上手に説明できないことを認めだした。 by Jamie Condliffe2016.10.14
13日、ソニーはVRゴーグル「Playstation VR」を世界同時に発売した。Playstation VRは、本格的なVRデバイスをヒット商品にし、バーチャルな現実に大きな需要があることを実証する、今年の最後のリアルな望みだ。実質現実(VR)は、この分野の指導的立場の企業でさえ、本格的需要があるとは認めていない。
Playstation VRは、オキュラス・リフトやHTC Viveのような競争力のあるデバイスを打ち負かす潜在性を秘めており、VRの明るい見通しを間違いなく示している。まず、Playstation VRは安い。競合製品とは性能上同等で、オキュラス・リフト(599ドル)やHTC Vive(799ドル)よりも安い399ドル(日本国内では4万4980円)で発売された。オキュラス・リフトやHTC Viveには高性能で高価なPCが必要だが、Playstation VRは、すでに多くのユーザーが所有しているソニーのPlayStationで動作する点でも有利だ。
したがって、ソニーには明らかに市場での優位性がある。しかし、展開可能な市場があると「想定」しての話だ。
2016年は実質現実の「普及元年」といわれていたにもかかわらず、ソニーや HTC、 オキュラス VRの設定した価格帯で、ユーザーはいまだに本格的なゴーグルを購入していない。 ニュー・サイエンティスト誌が指摘しているように 、 グーグルのカードボード(段ボール製のVRゴーグル)やサムスンのGear VRなど、この分野の新参者のデバイスがゆっくりとではあるが勢いを増しているように見える。しかし、こうしたデバイスよりも高性能なデバイスは、まだ大量に販売されてはいない。
フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは、サンノゼでのオキュラス・リフトの開発者会議で、同じことを認めていた。ザッカーバーグCEOは、オキュラス・リフトが「開始の遅れ」に苦しむ可能性があると述べていた。この発言は、フェイスブックのCEO本人が当初から述べていた警告の繰り返しだ。ザッカーバーグCEOは、VRが市場の本流となるためには、 10年は掛かると示していた。「こういった種類の新しいプラットフォームは、開発に長い時間が掛かるでしょう」と最近の業績会議でもザッカーバーグCEOは自身の見解を述べていた。
しかし、こうした見解は、打開策というよりも、説明や言い訳のように聞こえる。 オキュラス VRのジョン・カーマック最高技術責任者(CTO)は、VRに関する主要な問題を特定したと考えている。カーマックCTOは、ビジネスインサイダーに以下のように述べたのだ。
「私たちは新しいもの、そして人がそれ以前に見たこともないものへの最初の驚きを当てにしています。しかし、私たちは自分自身を評価し始める必要があるのです。相対的にでななく、絶対的にです。VR以外でできることと同等か、それ以上のことを、VRはできるのだろうか?と自分に問いかけることです」
実際これは、とても良い質問だ。現在、VRの利用方法としては「映画を観ること」に人気がある。なぜなら、あらゆる他のことに関して、映画とゲーム以外のことは、PCやタブレットを使って、同じように十分できるからだ。マーク・ザッカーバーグCEOは、VRが、先行するPCやスマホと同規模の、次世代のコンピューティング・プラットフォームになるだろうと広言している。しかしカーマックCTOがいうように、最初のうちは、ユーザーが価値があると認知できるような、わざと使わざるを得ない環境をもっとつくりだす必要がある。そうなるまで、売り上げは恐らく低調なままだろう。
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