KADOKAWA Technology Review
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MITTRが選ぶ、
最低な破壊的テクノロジー
5選【2018年版】
John Ueland
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The biggest technology failures of 2018

MITTRが選ぶ、
最低な破壊的テクノロジー
5選【2018年版】

MITテクノロジーレビューは、毎年、世間を騒がせた最低なテクノロジー利用法のリストを発表してきた。その内容は年々ひどくなっているようだ。2018年版のリストを発表する。 by Antonio Regalado2018.12.28

2018年、テクノロジーとそれを作り出す人間は、正しいことができなかったどころか、あらゆる過ちをしでかした。私の知人は、そんな「お騒がせ」なテクノロジーに反応してツイッターでつぶやいた。「2018年よ、早いとこ終わってくれ」。

過去数年間、MITテクノロジーレビューは、その年でもっとも無意味で破壊的なテクノロジー利用法だと思うものをリストアップして、公開してきた(過去のリストは以下の通り:2017年、2016年、2015年、2014年)。だが、2018年はこれまでにも増してひどくなっているようだ。テクノロジーは憎悪と中毒を拡散し、自殺を正当化し、赤ちゃんを実験台にするために使われた。MITテクノロジーレビューが選んだ、2018年の最低なテクノロジー利用法を以下に挙げておこう。

クリスパー(CRISPR)ベビー

遺伝子操作された人間がいつの日か生まれてくる。それは誰もが知っていたことだ。だが、こんなに早い実現を望んでいた者はいない。ましてや、こんな形でとは……。MITテクノロジーレビューは11月、中国の深センにある南方科技大学の科学者、賀建奎(フー・ジェンクイ)准教授が、ゲノム編集を施した赤ちゃんを誕生させる初の試みに密かに着手していたことを報じた。賀准教授は遺伝子編集ツール「クリスパー(CRISPR)」を使ってヒトの胚を編集し、遺伝子を1つだけ取り除いた。こうして生まれた双子の女児、ルルとナナは、ゲノムの組み換えによってHIVに耐性を持っていると賀准教授は主張した。

ところが、世間の受けは芳しいものではなかった。しかも、編集は必要なものですらなかったのだ。HIV感染を防ぐには、もっと安価で簡単な方法がある。どうやら双子の女児は、本人たちの同意なしに、「科学史上初」を狙った無謀な試みの被験者にされてしまったようだ。ノーベル賞まで期待していた賀准教授は現在、中国で取り調べを受けている。

関連情報:

 

電子タバコ「ジュール(JuuL)」

認めるべき功績は認めておこう。若者のニコチン中毒蔓延を引き起こしたのは、スタンフォード大学出身の製品デザイナー、ジェームス・モンシーズとアダム・ボウエンだ。

ジュール・ラボ(JuuL Labs)を創業した2人は、洗練されたデザインで中毒性のある物質を出す電子タバコ機器を開発した。確かに、燃やした葉っぱの煙を吸い込むことに慣れきった黄色く変色した指を持つ喫煙者にとっては、薬品入りの液体を噴き出す手のひらサイズの容器に乗り換えるのは得策かもしれない。だが問題は、ジュール・ラボが、クリームやマンゴーといったフルーティーなフレーバー付きの「iPodみたいな電子タバコ」として、インスタグラムで若者向けに宣伝したことだ。

米国食品医薬品 …

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本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

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日本発「世界を変える」U35イノベーター

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