KADOKAWA Technology Review
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Bill Gates explains why we should all be optimists

ビル・ゲイツインタビュー「私が10大テクノロジーを選んだ理由」

MITテクノロジーレビューが、今回の「2019年版ブレークスルー・テクノロジー10」の選出を依頼したビル・ゲイツ氏に、なぜそれらのテクノロジーが重要なのか、考えを聞いた。ゲイツ氏の未来観は総じて楽観的だった。 by Gideon Lichfield2019.04.23


——現在、テクノロジーの有害な影響について非常に懸念されています。楽観主義で有名なあなたですが、どうしたらそうした懸念について楽観的でいられるのですか?

人々の寿命が延び、5歳未満の死亡率が減少し、女性の待遇も改善されています。世界全体で不平等が減り、豊かな国々がさらに豊かになる以上のスピードで貧しい国々が豊かになりつつあります。今日、大多数の人々が中所得国に暮らしています。50年前、中所得国というものはほとんどありませんでした。さらに、問題を解決する科学の力があります。心臓疾患やがんで大きな進歩がありました。うつ病や糖尿病といったより慢性的な疾患についても進歩が見られています。肥満でさえ、マイクロバイオームや肥満に関連するシグナル伝達機構の基本的な理解が得られています。

そうですね。確かに私は楽観的です。ですから、ほとんどの人々が楽観的でないことが、本当に気にかかるのです。

——あなたには成功者特有のバイアスがあるのかもしれませんね?

もちろんそれは考えられます。私はこれまでの人生で、非常に運に恵まれてきました。しかし私自身の経験を差し引いても、大局的に見て、今が生まれてくるのに最も良い時代だと思っています。そして20年後は今よりもさらに良い時代となっていると思うのです。

——あなたのリストにあげられたテクノロジーの一つに、研究室培養の肉がありますが、これはまだごく試験的な段階で、高額なものです。 どうしてこれを選ばれたのですか?

選んだ理由の一つは、クリーンエネルギーが気候変動を解決するのではないことを人々に再認識してもらいたいからです。発電所からの二酸化炭素排出量は、全体のたった4分の1ほどなのです。温室効果ガス問題について、人々はこのことにあまり注意を払っていません。とは言うものの、温室効果ガス問題を解決する方法は、セメントとか鉄とかその他の材料などにおける問題よりも明白であると考えています。

——あなたは再発明されたトイレもリストにあげて、過去200年で衛生分野における最も大きな進歩だとおっしゃっています。なぜですか?

下水システムの構築、清潔な水の使用、処理プラントなどは、豊かな国々の方法論です。貧しい国々では、下水システムの資本コストはとても払えるような金額ではないのです。このトイレは液体・個体両方の人間の排泄物を取り込み、大抵の場合何らかの形で分離します。固形物は基本的に燃やせます。液体は濾過できます。ますます近代化されつつある世界において、不快さと病気の両面で生活の質に膨大な影響を及ぼすでしょう。

ビル&メリンダ・ゲイツ財団はこのテクノロジーを推進するため、2億ドルを拠出しました。しかしまだ十分ではありません。

——リストにあげられたテクノロジーのうち、3つが温室効果ガスの削減に関するものです。あなたは10億ドルの投資基金、ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ(Breakthrough Energy Ventures)を率いていますが、気候変動にはすでに多くの技術的な解決策があるような気がしています。本当にこれ以上必要なのでしょうか?最大の問題は政治的なものではありませんか?

いいえ、問題が起こるのはインドに対してこのように言う場合です。「全国民に電気を供給して、冷暖房のような私たちがごく当たり前に使っているものを与えなさい」と。 そのときに彼らがとる方法は石炭工場を増やすことです。最も安く電気を手に入れる方法であるからです。フランスでは、人々がディーゼル燃料の値段を5%増しで払うように言われました。それだって容認できることではありません。

政治的な要素は、基礎研究につぎ込む金額を決めたり、革新的な企業を惹きつけるため方法を決めたりする時に介入してきます。しかし、現在テクノロジーを凍結すれば、将来は今より平均気温が4 °C高い世界で暮らすことになるのは間違いありません。

——リストには核融合もあります。核融合はこれまでもずっと、すぐ目前に来ている技術であるかのように思われていました。それなのに、なぜ楽観的になれるのですか?

ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズの投資先に、コモンウェルス・フュージョン・システムズ(Commonwealth Fusion Systems)という企業があります。彼らの用いる方法を使えば大幅なサイズダウンができ、ひいては資本コストも大幅に削減できるのです。非常に素晴らしいことです。10社以上の企業が様々な方法で核融合に取り組んでいますが、大方はうまくいかないでしょう。しかしこれらのプロジェクトは、大きな貢献を確実に生み出してくれます。ですから核融合を支援するのは重要なことだと考えています。

——中国がテクノロジー大国となりつつあります。中国パワーについての懸念が高まる中、これについてどうお考えですか?

中国のイノベーションが始まっていることは、世界にとって良いことです。

中所得国のほとんどがそうであるように、中国は大きなプロジェクトの実施に躍起になっています。50年代・60年代の米国、70年代・80年代の日本、80年代・90年代の韓国を考えてみてください。技術力が非常に強くなり、世界に飛び出してあっと言わせるような大きなことをしたいと考えますよね。

自国の技術力を刷新する必要があると感じるのは、米国にとっても良いことです。70年代、80年代に、「大変だ、我々が成し遂げていないことを日本がやってしまった」と慌てて、基礎研究への注力を新たにしました。実際には、日本が科学的イノベーションという意味で米国を追い越しそうになっていたわけではありませんでした。しかし私は、そうした危機感は米国にとって健全なことだったと思います。


ビル・ゲイツ氏が選んだ「2019年版ブレークスルー・テクノロジー10」はこちら。
 

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ギデオン・リッチフィールド [Gideon Lichfield]米国版 編集長
MITテクノロジーレビュー[米国版]編集長。科学とテクノロジーは私の初恋の相手であり、ジャーナリストとしての最初の担当分野でもありましたが、ここ20年近くは他の分野に携わってきました。まずエコノミスト誌でラテンアメリカ、旧ソ連、イスラエル・パレスチナ関係を担当し、その後ニューヨークでデジタルメディアを扱い、21世紀のビジネスニュースを取り上げるWebメディア「クオーツ(Quartz)」の立ち上げにも携わりました。世界の機能不全を目の当たりにしてきて、より良い世の中を作るためにどのようにテクノロジーを利用できるか、また時にそれがなぜ悪い結果を招いてしまうのかについても常に興味を持っています。私の使命は、MITテクノロジーレビューが、エマージングテクノロジーやその影響、またそうした影響を生み出す人間の選択を模索するための、主導的な声になることです。
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