充電不要!体温と外気の温度差で自家発電できるスマートウォッチ
マトリクスのパワーウォッチはフィットビットの対抗機種で、皮膚と外気の温度差から自家発電できる。 by Signe Brewster2016.11.17
メンロー・パーク(カリフォルニア州)のスタートアップ企業マトリクス(Matrix)が、体温で動くスマートウォッチ「パワーウォッチ(PowerWatch)」を開発した。充電不要のウェアラブル機器の新時代を切り開くかもしれない製品だ。
製品の実演中、マトリクスのエンジニア部門を率いるアン・ルミンスキーは、自分の手首にその時計を着けると、数分後には白黒の画面が立ち上がった。ガーミン製スマートウォッチのフォーランナー(Forerunner)とほぼ同じ大きさと形だが、歩数計やカロリー計算、睡眠管理などの機能は、高性能なスマートウォッチ「フィットビット(FitBit)」に迫る。
パワーウォッチは「熱電性発電」で自家発電する。温度の変化が時計内部の電子を動かし、電流を発生させるのだ。ルミンスキーによれば、余分な熱は温度変化を阻害してしまうが、熱を逃がす方法を発見したことにマトリクスのブレイクスルーあるという。
マトリクスは、デバイスの省電力化が進む最近の流れに乗っている。パワーウォッチはわずかな電力で十分動作する一方で、比較的多くの機能がある。時計内部の小型のバックアップバッテリーにより、腕に着けていなくてもデータは消えず、時計としての機能を維持できる。
マトリクスは体温で動くウェアラブル機器を作った初の企業ではない。ノースカロライナ州立大学の研究者は、シャツなどの衣類と一体化できる熱電性発電器を最近公開した。別のチームも、人体以外の余分な熱源の利用を目指している。しかし、実際に製品化できるほどの機能がある熱電性ウェアラブル機器はパワーウォッチが初めてだ。
マトリクスはパワーウォッチの事前注文を15日から99ドル(想定小売り価格は160ドル)で受け付け、2017年7月に出荷する計画だ。マトリクスは、パワーウォッチ用のソフトウェアを開発していないが、ルミンスキーは、ハードウェアは完璧だという。つまり、まだ単に電源が入る以上の時計の機能は開発されていないのだ。
マトリクスは熱電テクノロジーを利用し、他の機器への応用も計画中だ。医療機器や補聴器、ウェアラブルセンサーなどが体温で動作すれば、優れた利用例になるだろう。スマートウォッチ愛好家はアップルウォッチ等と比較してパワーウォッチのシンプルさに注目するはずだ。しかし、パワーウォッチに搭載されるセンサーは、従来製品ほど高感度ではない。
ペンシルベニア大学のメティシュ・パテル助教授(健康管理学)は、ウェアラブル機器を購入した人の約半数は数カ月以内に利用を止めるという。充電のためにスマートウォッチを外すことは、利用をやめるきっかけになる。
「ウェアラブル機器がより長期間個人の役に立つためには、そのテクノロジーが定期的な充電の必要性など、利用の障害を減らすよう設計されることが必要です」とパテル助教授はいう。
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クレジット | Image courtesy of Matrix |

- シグニー ブリュースター [Signe Brewster]米国版
- シグニー・ブリュースターは科学とテクノロジーのライター。特に注目しているのは、たとえば実質現実やドローン、3Dプリントなど、芽生えたばかりのテクノロジーが今後どうなるか、です。記事は、TechCrunch、Wired、Fortuneでも執筆しています。