KADOKAWA Technology Review
×
労働者に「十分な報酬」を
UCB発ベンチャーが目指す
真っ当なギグ・エコノミー
Getty
倫理/政策 Insider Online限定
Gig workers often get an unfair deal. This firm says it’s different.

労働者に「十分な報酬」を
UCB発ベンチャーが目指す
真っ当なギグ・エコノミー

オンラインで仕事を請け負う「ギグ・エコノミー」における働き手であるギグ・ワーカーは、多くの場合、劣悪な労働条件で働いている。カリフォルニア大学バークレー校の研究者らが創業したベンチャー企業は、より公平な環境をギグ・ワーカーに提供するという。 by Will Knight2019.06.27

多くの人工知能(AI)関連企業は知られたくない秘密を抱えている。アルゴリズムの背後には、せっせと働き、訓練用のデータを生み出している大勢の人々が存在するのだ。

このような被雇用者は時に、配車サービスのリフトやウーバーの運転手のように、ストレスの多い労働環境やその他の劣悪な労働条件の下で働いている。あるいは、賃金の面で最低を競う競争に巻き込まれ、最低入札者が仕事を獲得するようなプラットフォーム上で仕事を求めて競い合う。多くの経済学者が、このような形態の仕事は今後ますます一般的になっていくと予想している。

オンラインで仕事を請け負う「ギグ・エコノミー」について研究していたカリフォルニア大学バークレー校の研究者たちが創業した企業「リードジーニアス(LeadGenius)」は、(ギグ・エコノミーにおける働き手である)ギグ・ワーカーに対する自社の姿勢は他の企業とは一線を画していると主張している。被雇用者のより良い労働条件の整備をはじめとするリードジーニアスのアプローチと哲学は、仕事の未来に関するいくつかの貴重な教訓を与えてくれるかもしれない。

リードジーニアスのプラヤグ・ナルラ創業者兼最高経営責任者(CEO)が、MITテクノロジーレビューのウィル・ナイトAI担当上級編集者のインタビューに応じ、ギグ・ワーカーの生活を改善するための同社の取り組みについて語った。

——ギグ・ワーカーが公平な扱いを受けていることをどのように担保していますか。鍵となる原則は何ですか。

公平性を定義するのは困難ですが、私たちには、自分たちが正しい原則だと考えているものを要約した3つの主な原則があります。

1つ目は、「公正な賃金」です。私たちは、事業を展開する地域で少人数の家族を養うのに十分な時間給を保証しています。そうした時間給は、最低賃金の2~3倍になる場合もあります。つまり、同じ仕事をしていても、地域が異なれば賃金が異なる可能性があるということです。

2つ目は、「競争よりも協力」です。アップワーク(UpWork)やファイバー(Fiverr)では、仕事に対する最低報酬金額を提示した人が仕事を獲得します。またウーバーやリフトでは、もっとも迅速に応対した人が仕事を獲得します。この仕組みは基本的に、最低を競う競争を生み出します。私たちは、カリフォルニア大学バークレー校で研究していた頃やその後、人々が一体となって協力すれば、より良い結果が得られることを示す複数の研究論文を発表しました。そして、協力し支え合うことを人々に促すようなテクノロジー、プロセス、文化を構築してきました。

3つ目は「成長の機会」です。ギグ・エコノミーの仕事のほとんどは、プロジェクトベースの仕事に集中しています。こうした仕事では、挑戦して、評価され、認められ、成長したいという人々の本質的なニーズは満たされません。リードジーニアスは、才能のある勤勉な人がコミュニティの中で成長できるようなキャリアパスを構築してきました。マネージャーになることもできますし、福利厚生手当や企業の株式を得るフルタイム社員になることも可能です。当社のフルタイ …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る