KADOKAWA Technology Review
×
「世界の消費電力量の10%がAIになる日」はやってくるか?
Dean Mouhtaropoulos | Getty
コンピューティング Insider Online限定
Is AI the next big climate-change threat? We haven’t a clue

「世界の消費電力量の10%がAIになる日」はやってくるか?

人工知能(AI)の需要の高まりに伴い、機械学習アルゴリズムの訓練や実行などのAI関連ワークロードが消費する電力が急増していることに警鐘を鳴らす人々が増えている。しかし、一方では、AIの消費電力を削減するための取り組みもいくつか始まっており、今後、事態がどう転ぶかを予測するのは難しい。 by Martin Giles2019.08.01

7月上旬にサンフランシスコで開催されたカンファレンス「AIデザイン・フォーラム(AI Design Forum)」で、半導体産業の大手サプライヤーであるアプライド・マテリアルズ(Applied Materials)のゲイリー・ディッカーソンCEO(最高経営責任者)が大胆な予測をして注目を集めた。 ディッカーソンCEOは、材料やチップの製造、設計に大きなイノベーションがなければ、2025年までにはデータセンターの人工知能(AI)ワークロードが世界の電力使用量の10分の1を占めるようになる可能性があると警告したのだ。

現在、世界中の何百万というデータセンターが、世界全体に占める電力使用量の割合は2%弱であり、しかもその統計には、センターが持つ膨大な数のサーバーで処理されるあらゆる種類のワークロードが含まれている。アプライド・マテリアルズでは、現在AIを実行しているサーバーが世界の電力消費量に占める割合はわずか0.1%と見積もっている。

警戒の声を上げるテック企業幹部はほかにもいる。ファーウェイ(Huawei)のアンダース・アンドレー上級エキスパートは、データセンターが2025年までに地球全体の電力の10分の1を消費する可能性があると考えている。ただし、アンドレーの予想値にはすべてのワークロードが含まれており、AIだけについて言っているわけではない。

一方、非営利団体のロッキー・マウンテン研究所(Rocky Mountain Institute)で上級科学者の特別顧問を務めるジョナサン・クーメイ博士の見方は楽天的だ。クーメイ博士の予測では、AI関連活動の急増にもかかわらず、データセンターのエネルギー消費は今後数年間は比較的横ばいに留まるという。

こうした大幅に異なる予測こそが、AIが大規模コンピューティングの将来にもたらす影響やエネルギー需要に最終的にもたらす影響が、いかに不確定なものであるかを浮き彫りにしている。

より大きな全体像

AIが電力を大量に消費することは確かだ。深層学習モデルなどの訓練や実行には膨大な量のデータ処理が伴い、メモリやプロセッサに負担をかける。非営利のAI研究団体「オープンAI …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. A long-abandoned US nuclear technology is making a comeback in China 中国でトリウム原子炉が稼働、見直される過去のアイデア
  2. Here’s why we need to start thinking of AI as “normal” AIは「普通」の技術、プリンストン大のつまらない提言の背景
  3. AI companions are the final stage of digital addiction, and lawmakers are taking aim SNS超える中毒性、「AIコンパニオン」に安全対策求める声
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る