KADOKAWA Technology Review
×
「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集中!
地球のためにベジタリアンに移行しなくてもいい=新分析で明らかに
AP PHOTO/ERIC GAY
気候変動/エネルギー 無料会員限定
Giving up just half your hamburgers can really help the climate

地球のためにベジタリアンに移行しなくてもいい=新分析で明らかに

牛肉の生産では大量の温室効果ガスが排出される。だが、完全なベジタリアンに移行しなくても、食生活の部分的な見直しで大きな違いが出ることが分かった。 by James Temple2019.08.15

食生活を劇的に変えなくても、気候へ影響を大幅に削減できることが最新の分析で明らかになった。

7月に非営利団体の世界資源研究所(WRI)が中心となって実施した分析によると、米国民の平均的な食事における赤身の肉(特に牛、ヤギ、羊)の消費を半分に減らすことと、完全にベジタリアンに移行することでは、温室効果ガス排出量削減の点では大きな違いがないことが分かった。

こうした収穫逓減が見られるのは、標準的なベジタリアンが肉をすべて野菜に置き換えるわけではないからだ。「代わりに、乳製品や卵、その他の動物由来製品に大きく依存しています。これらは生産には大規模な土地が必要とされ、温室効果ガスを大量に排出します」。今回の報告書の筆頭著者であるWRIのティム・サーチンジャー上席研究員はこう説明する(完全菜食主義であるビーガンならさらに大幅な排出削減になるが、今回の報告書にはその分析は含まれていない)。

気候への懸念から食事を見直したいが、ステーキやハンバーガーを完全に断つのは難しいという人にとって、これは良いニュースだ。事実、肉の消費を減らさなくても、米国家庭の温室効果ガス排出量の15%を占める、食事による環境負荷を大幅に減らせるのだ。消費する赤身肉の43%を豚肉や鶏肉に代えるだけで、排出量を約18%削減できる。

8月8日、国連はこのような選択肢について熟考することがなぜ重要であるかを示した厳しい通知を発表した。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の特別報告書「気候変動と土地(Climate Change and Land)」では、世界は地球温暖化抑止、および危機的状況が高まりつつある地球において増加を続ける人口に対する食糧確保のために、食糧生産および土地管理の方法を一新する必要があると結論付けている。

今回の報告書は、農業、林業その他の土地利用の変化が、世界全体の温室効果ガス排出量の23%を占めていると指摘している。食事の変化はすぐに大きな変化を生む可能性がある。世界規模で「牛肉のように温室効果ガス排出量の大きい食品」から脱却することで、年間の温室効果ガス排出量を7億~80億トン削減できる可能性がある。この予測の最大値(実質的にすべての人類がビーガンになる)が実現した場合、削減量は化石燃料関連の温室効果ガス排出量の約5分の1に相当する。報告書によると、こうした食生活の変化により、数百万平方キロメートルの土地が新たに …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. AI can make you more creative—but it has limits 生成AIは人間の創造性を高めるか? 新研究で限界が明らかに
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2024 「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集のお知らせ
  3. A new weather prediction model from Google combines AI with traditional physics グーグルが気象予測で新モデル、機械学習と物理学を統合
  4. How to fix a Windows PC affected by the global outage 世界規模のウィンドウズPCトラブル、IT部門「最悪の週末」に
  5. The next generation of mRNA vaccines is on its way 日本で承認された新世代mRNAワクチン、従来とどう違うのか?
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る