KADOKAWA Technology Review
×
Greenland’s Ice Sheet Is Less Stable Than We Thought

海面上昇の規模は、沿岸部の不動産価格を下落させるほど深刻だった

氷床が溶けていることはわかっていた。だが地球全体の海面上昇の因果関係は、科学者が考えていたよりもずっと深刻だった。 by Michael Reilly2016.12.09

次に高い樹木や建物のそばを通ったら、約7mがどれくらいの高さか、よく目をこらして見てみよう。グリーンランドの氷床が溶けると、海面はそれまで上昇する。

ネイチャー誌が掲載した歴史的な新発見によれば、温暖化の脅威は人類の認識よりはるかに大きい。北半球最大の氷床の下から史上初めて掘り出された岩盤の標本が物的証拠となり、この研究結果の基になった。

コロンビア大学のヨーグ・シェーファー教授が率いる研究チームは、岩石標本に含まれる同位体を調べると氷に覆われていなかった期間の長さがわかることに着目した。従来、科学者は氷床が少なくとも過去140万年間(おそらくもっと長期間)は安定していたと考えていた。だが、新たな研究によって、グリーンランドの標本採取地は、最短でも28万年間は岩盤が露わになるまで氷が溶けていたとわかった。もし事実なら、モデル計算から氷床は現在の大きさの10%以下だったことになる。

「氷床は、再び、しかも近い将来に消えることを覚悟しなければなりません」とシェーファー教授はコロンビア大学Webサイトの報道発表で語った。人類が温室効果ガスを大気中に投入し続けており

「相当に高い海面上昇、多くの予測より著しく高い海面上昇の引き金を、人類はすでに引いてしまいました」

災害が明日発生するわけではない。これほどの氷が溶けるには数百年から数千年数の時間がかかる。だが私たちが不安になる理由は、地球全体で海面が毎年3mm上昇するうち、グリーンランドは要因の約25%を占めていることだ。地球温暖化が続き、加速度的な氷解の段階に達すれば、グリーンランドの割合も海面上昇の高さも跳ね上がる可能性がある。

今回の研究は、懸念が現実化する可能性を示している。海面上昇や洪水により、沿岸部の不動産価格には破滅の兆しが見えている。海に落ちていくのは氷だけではないのだ。

(関連記事:Columbia University’s Earth Institute, The New York Times

人気の記事ランキング
  1. Why it’s so hard for China’s chip industry to become self-sufficient 中国テック事情:チップ国産化推進で、打倒「味の素」の動き
  2. How thermal batteries are heating up energy storage レンガにエネルギーを蓄える「熱電池」に熱視線が注がれる理由
  3. Researchers taught robots to run. Now they’re teaching them to walk 走るから歩くへ、強化学習AIで地道に進化する人型ロボット
タグ
クレジット Photograph by Wasif Malik | Flickr
マイケル レイリー [Michael Reilly]米国版 ニュース・解説担当級上級編集者
マイケル・レイリーはニュースと解説担当の上級編集者です。ニュースに何かがあれば、おそらくそのニュースについて何か言いたいことがあります。また、MIT Technology Review(米国版)のメイン・ニュースレターであるザ・ダウンロードを作りました(ぜひ購読してください)。 MIT Technology Reviewに参加する以前は、ニューサイエンティスト誌のボストン支局長でした。科学やテクノロジーのあらゆる話題について書いてきましたので、得意分野を聞かれると困ります(元地質学者なので、火山の話は大好きです)。
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. Why it’s so hard for China’s chip industry to become self-sufficient 中国テック事情:チップ国産化推進で、打倒「味の素」の動き
  2. How thermal batteries are heating up energy storage レンガにエネルギーを蓄える「熱電池」に熱視線が注がれる理由
  3. Researchers taught robots to run. Now they’re teaching them to walk 走るから歩くへ、強化学習AIで地道に進化する人型ロボット
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る