KADOKAWA Technology Review
×
マガジン刊行記念「Vol.1 AI Issue」を新規購読でプレゼント。
さらに割引も。
Babies with Three Biological Parents Are Coming to the U.K.

ミトコンドリア補充療法承認で開く? ヒト遺伝子の組み換え時代

英国政府は、ミトコンドリア病を回避できる治療法を許可し、有効な規制と子どもの発育を見守ることにした。 by Michael Reilly2016.12.16

英国は、3人の実の親を持つ赤ちゃんを作ることになる不妊治療を承認する最初の国になった。承認により、稀な遺伝的欠陥のある女性が早ければ2017年後半に母親になれるはずだ。

英国政府の英ヒト受精・胚機構(HFEA)によると、英国内の診療所は今後、異論もあるミトコンドリア補充療法の免許申請が認められる。ミトコンドリア補充療法では、欠陥ミトコンドリアがある卵子または受精した胚から採取した核を健康な提供者の卵子に交換する必要がある。

この決定を受け、ニューキャッスル・ファーテリティー・センターは、発表から24時間以内に免許を申請する予定だと述べた。ニューキャッスル大学のチームは、ミトコンドリア補充療法により年間25人までの患者を治療したいという。

ミトコンドリアは、細胞のエネルギー生産機能を担う。ミトコンドリアにはわずかな遺伝情報しかないが、母親の卵子のミトコンドリア(男性のミトコンドリアは子どもに遺伝しない)に起きる稀な突然変異は、子どもが十分なエネルギーを生み出さない細胞を持って生まれる原因となり、多くの場合、致命的な結果につながる。

多くの医師が治療法を求めて何年も研究を重ね、ミトコンドリア補充療法とは別の手法で1990年代後半から2000年代初めにかけて「三つ親」赤ちゃんが生まれた。しかし「細胞質移植」法は、先天異常を引き起こす懸念があり、米国食品医薬品局(FDA)は、全米の診療機関に対して、細胞質移植の中止を指導した。ただし、最近、米議会は、難病を回避する意図があるとしても、胚の遺伝子組み換えを許す気はないことを明らかにした。

細胞の核を提供者の卵子と交換した胚には、2人の女性と1人の男性の遺伝情報を含むことになり「遺伝子組み換えされた人」(ここが議論になる)が誕生する。しかし、提供者のDNAはミトコンドリアとしてしか存在せず、生まれてくる人の外見や性格のような特徴は、実の両親を受け継ぎ、影響しない。

今年初め、ミトコンドリア補充療法で男の赤ちゃんが誕生した。赤ちゃんが生まれたのは米国だが、治療そのものは胚の遺伝子組み換えに関する法規制がないメキシコで実施された。ミトコンドリア補充療法を正式承認することで、英国当局は治療法を厳しく規制でき、生まれた子どもの発育を見守れる。

(関連記事:The Guardian, New Scientist, “DNA操作で「三つ親」 赤ちゃん、メキシコで誕生,” “米デザイナーベビー規制 ミトコンドリア病治療も禁止”)

人気の記事ランキング
  1. A college kid’s fake, AI-generated blog fooled tens of thousands. This is how he made it. 大学生がGPT-3で偽記事を作ってニュースサイトで1位になった方法
  2. The human cost of a WeChat ban: severing a hundred million ties 中国と世界をつなぐ 「ウィーチャット禁止」の 深刻すぎる影響
  3. IBM has built a new drug-making lab entirely in the cloud 化学実験を在宅で、IBMがロボット+AIでクラウド新サービス
  4. What has AI changed? 松尾 豊教授インタビュー:人工知能は世界と日本をどう変えたのか
  5. It’s too late to stop QAnon with fact checks and account bans SNSで存在感増す陰謀論、 「Qアノン」とは何か?
マイケル レイリー [Michael Reilly]米国版 ニュース・解説担当級上級編集者
マイケル・レイリーはニュースと解説担当の上級編集者です。ニュースに何かがあれば、おそらくそのニュースについて何か言いたいことがあります。また、MIT Technology Review(米国版)のメイン・ニュースレターであるザ・ダウンロードを作りました(ぜひ購読してください)。 MIT Technology Reviewに参加する以前は、ニューサイエンティスト誌のボストン支局長でした。科学やテクノロジーのあらゆる話題について書いてきましたので、得意分野を聞かれると困ります(元地質学者なので、火山の話は大好きです)。
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.1/Autumn 2020
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.1/Autumn 2020AI Issue

技術動向から社会実装の先進事例、倫理・ガバナンスまで、
AI戦略の2020年代のあたらしい指針。

詳細を見る
人気の記事ランキング
  1. A college kid’s fake, AI-generated blog fooled tens of thousands. This is how he made it. 大学生がGPT-3で偽記事を作ってニュースサイトで1位になった方法
  2. The human cost of a WeChat ban: severing a hundred million ties 中国と世界をつなぐ 「ウィーチャット禁止」の 深刻すぎる影響
  3. IBM has built a new drug-making lab entirely in the cloud 化学実験を在宅で、IBMがロボット+AIでクラウド新サービス
  4. What has AI changed? 松尾 豊教授インタビュー:人工知能は世界と日本をどう変えたのか
  5. It’s too late to stop QAnon with fact checks and account bans SNSで存在感増す陰謀論、 「Qアノン」とは何か?
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る