KADOKAWA Technology Review
×
2024年を代表する若きイノベーターたちに会える!【11/20】は東京・日本橋のIU35 Japan Summitへ
「深層学習の父」も注目のAIピッキングロボ、倉庫作業員を置き換え
Elena Zhukova
人工知能(AI) Insider Online限定
AI-powered robot warehouse pickers are now ready to go to work

「深層学習の父」も注目のAIピッキングロボ、倉庫作業員を置き換え

米国のスタートアップ企業が、強化学習の手法を用いて、かつてない正確さで商品を判別して移動させるロボットアームを開発し、すでにドイツの電子機器メーカーの倉庫などで実運用されていることが明らかになった。人工知能研究の著名人などから2700万ドルの資金を調達している注目企業だ。 by Karen Hao2020.02.18

2018年夏、バークレーにある小さなロボット工学スタートアップ企業に、ある課題が舞い込んだ。倉庫物流テクノロジーの主要提供元であるナップ(Knapp)は、できる限りたくさんの種類の商品のピッキングができる新たな人工知能(AI)を搭載したロボットアームを求めていた。ナップは8週間にわたり、毎週難易度が増していくさまざまな商品、具体的には、不透明な箱、透明な箱、錠剤のパッケージ、靴下などのリストをそのスタートアップ企業に送った。こうした商品は、ナップの顧客が扱う幅広い商品に対応するものだった。リストを受け取ったスタートアップ企業は地元でそれらの商品を買い求め、ロボットアームが商品をグレーの容器から別の容器へと移し替える映像を1週間以内に送り返した。

課題が終わりを迎える頃には、ナップの幹部たちは困り果てていた。彼らは6~7年間にわたって多くのスタートアップ企業に課題を課してきたが成功せず、今回も同じ結果を予想していたのだ。しかし今回のスタートアップ企業が送ってくる映像には毎回、ロボットアームが完璧な正確さと実用化可能な速度ですべての商品を移し替えている様子が映っていた。

「毎回難易度が上がっていくので、次は上手くいかないだろうと予想していました」。オーストリアに本社を置くナップのイノベーション担当副社長を務めるピーター・プフヴァインはそう話す。「ですが重要なのは彼らが成功したことです。すべてが本当にうまくいったのです。これほど質の高いAIはこれまで見たことがありませんでした」。

そのスタートアップ企業は、「コバリアント(Covariant)」という。同社は1月29日、ナップとの取り組みを発表した。すでにコバリアントのアルゴリズムは、ナップの顧客が運営する2カ所の倉庫で稼働するロボットに実装されている。そのうちの1つであるドイツの電子機器サプライヤーであるオベタ(Obeta)では、このロボットアームが昨年9月から現場で実際に稼働している。コバリアントの共同創業者らは、別の産業用ロボティクス大手企業とも契約締結が間近だと話す。

このニュースは、AI主導のロボット工学の状況の変化を示している。こうしたシステムはこれまで、非常に限定された学術的な環境での使用にとどまっていた。だが、コバリアントは、現実世界の複雑さに合わせてシステムを一般化し、倉庫業界に旋風を巻き起こす準備ができているという。

倉庫での作業は2つのカテゴリーに分けられる。ある空間の前から後ろへと箱を動かすような脚を使うものと、商品を取り上げて適切な場所に配置するような手を使うものの2種類だ。ロボットは長い間にわたって倉庫で利用されてきたが、その活用例は主に前者の作業の自動化に限定されてきた。「現在の倉庫では、人が動き回ることはほとんどありません」。コバリアントの共同創業者でCEOのピーター・チェンはそう話す。「決まった場所の間で物を動かすのは、メカトロニクスが非常に得意とするところです」。

しかし手の動きを自動化するのは、適切なハードウェアだけでは不可能だ …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. How ChatGPT search paves the way for AI agents 脱チャットGPTへ、オープンAIが強化するプラットフォーム戦略
  2. Promotion NIHONBASHI SPACE WEEK 2024 アジア最大級の宇宙ビジネスイベント、東京・日本橋でまもなく開催
  3. Promotion Innovators Under 35 Japan Summit 2024 in Nihonbashi 2024年のイノベーターが集結「U35 Summit」参加者募集中
  4. This AI-generated Minecraft may represent the future of real-time video generation AIがリアルタイムで作り出す、驚きのマイクラ風生成動画
  5. The winners of Innovators under 35 Japan 2024 have been announced MITTRが選ぶ、 日本発U35イノベーター 2024年版
  6. Inside a fusion energy facility 2026年の稼働目指す、コモンウェルスの核融合施設へ行ってみた
▼Promotion イノベーター under35 2024
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る