KADOKAWA Technology Review
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史上最高解像度の「太陽」の画像、ハワイのDKISTが撮影
NSO/AURA/NSF
This is the highest-resolution photo of the sun ever taken

史上最高解像度の「太陽」の画像、ハワイのDKISTが撮影

ハワイ・マウイ島のダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡(DKIST)が撮影した史上最高解像度の太陽の画像が公開された。 by Neel V. Patel2020.02.01

最高解像度の太陽の画像が天文学者たちによって先週、公開された。マウイ島のダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡(DKIST)が撮影したこの写真は、これまでに見たことのない太陽の姿を示しており、長年にわたるいくつかの謎の解明に向けて近づくこととなった。

新しい画像は、DKISTの潜在的な能力を示していると言える。画像に映し出されている、テキサス州ほどの大きさの組織に分かれた太陽の表面は、まるでひび割れた砂漠の乾いた土のようだ。プラズマが表面から滲み出し、空中に上昇した後、より暗い割れ目へと沈みながら戻っていくのが分かる。

DKISTのトーマス・リメル所長は、「私たちはいま、太陽系最大の天体の最小の詳細を目にしています」と述べた。この新しい画像は、DKISTの最初の試験観測である2019年12月10日に撮影された。厳密に言えば、この望遠鏡はまだ建設中であり、さらに3つの機器が稼働する予定だ。

2020年7月に正式な観測が開始されれば、DKISTは13フィート(約4メートル)の主鏡を持つ、世界で最も高性能な太陽望遠鏡となる。マウイ島で最も標高の高いハレアカラ火山に建設されたDKISTは、太陽の表面の構造を18.5マイル(約30キロメートル)の細部に至るまで観察できる。DKISTの解像度は、それまでの最高であるニューメキシコ州のリチャードB.ダン太陽望遠鏡の5倍以上となる。

特に、DKISTは太陽の最も外側のガス層であるコロナを通じて太陽の磁場を正確に測定し、コロナの温度が太陽の表面より数百万度高い理由など、さまざまな疑問を解明するために設計されている。

今後6カ月以内に稼働する他の機器も同様に、温度、速度、太陽の構造に関するデータを収集する予定だ。まもなく太陽の新しい活動周期が始まろうとしているので、太陽の活動が豊富に観測される可能性がある。

太陽を観測するためには、単に昔ながらの方法で望遠鏡を建設するわけにはいかない。DKISTは、世界で最も複雑な太陽補償光学システムの1つを誇る。形状可変鏡を使い、毎秒2000回形状を調整することで、地球の大気が原因で起きる歪みを相殺する。また、太陽を観測し続けると、望遠鏡は金属を溶かしてしまうほど熱くなってしまう。そのため、DKISTは氷のプールと7.5マイルに及ぶパイプで配管された冷却装置を使って冷却している。

太陽を詳しく観測するには、それ相応の理由がある。太陽のガス層が磁気エネルギーを放出すると、地球を含む太陽系全体のあらゆる方向に超高エネルギー粒子を浴びせかける、太陽フレアのような爆発的現象が生じる。いわゆる「宇宙天気」は、GPSや送電網などに壊滅的な打撃を与える可能性があるので、太陽の活動をさらに詳しく観察すれば、有害な宇宙の天気がいつ襲来するのか、より多くの兆候が把握できるかもしれない。

DKISTの建設は、これまで順調に進められてきたわけではない。ハレアカラ火山は、ハワイ先住民の文化にとって重要な山であり、2015年夏には、ハワイ先住民がDKISTの建設に対する抗議活動が起こしている。DKISTチームは、ハワイ大学マウイカレッジでハワイ文化に関連した科学を学ぶ2000万ドルのプログラムを立ち上げたり、ハワイ先住民のために観測時間の2%を確保するなど、さまざまな方法で懸念に対処している

計画では、DKISTを少なくとも4回の太陽の周期(約44年間)の間中稼働し続けることになっている。リメル所長は、「私たちは今、非常に長かったマラソンのラストスパート地点に到達しています」と話す。「これら最初の画像は、実際にはほんの手始めにすぎません」。

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MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。地球外で起こっているすべてのことを扱うニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」の執筆も担当している。MITテクノロジーレビュー入社前は、フリーランスの科学技術ジャーナリストとして、ポピュラー・サイエンス(Popular Science)、デイリー・ビースト(The Daily Beast)、スレート(Slate)、ワイアード(Wired)、ヴァージ(the Verge)などに寄稿。独立前は、インバース(Inverse)の准編集者として、宇宙報道の強化をリードした。
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