KADOKAWA Technology Review
×
テキサスの風力発電ブームが生み出す、ビットコインの採掘ラッシュ
Getty Images
ブロックチェーン 無料会員限定
How Texas’s wind boom has spawned a Bitcoin mining rush

テキサスの風力発電ブームが生み出す、ビットコインの採掘ラッシュ

大量の風力発電と規制緩和によって安価な電力が供給されている米国テキサス州で、ビットコインのゴールドラッシュが起きている。中国に集中していた採掘ネットワークの世界地図を塗り替えるかもしれない。 by Mike Orcutt2020.05.31

テキサス州はビットコイン採掘者(マイナー)にとって、新しい約束の土地なのだろうか? いくつかのビッグマネー・プロジェクトの支援者がこの考えに賛同しているのは、テキサス州の安価な電気と独自の規制のおかげだ。 採掘者らの野心的な計画が実現された場合、世界で最も普及している暗号通貨ネットワークの重要な構成要素の地理的分布に、大きな変化をもたらす可能性がある。

ビットコインの採掘(マイニング)の成功は、その施設が採掘作業に使える電力量に大きく依存している。新しい採掘施設の発表が、たびたび新しい発電所の発表のように報じられる理由だ。テキサス州西部で本番稼働したプロジェクトは、投資家ピーター・ティールが支援したことで特に注目を集めた。ティールやその他のベンチャー投資家から5000万ドルを調達したレイヤー1・テクノロジー(Layer1 Technology)が立ち上げた施設は、100メガワット(MW)の電力を採掘用にまもなく供給する予定だという。

中国に本拠を置く大手マイニング・チップメーカーであるビットメイン(Bitmain)もテキサスに移転し、2019年10月、ロックデールに50MWの施設を開設した。ゆくゆくは300MWに拡張する予定だという。世界で3番目の大手マイニング・チップメーカーであるドイツのノーザン・データ(Northern data)も、やはりロックデールに世界最大の採掘施設を建設する計画で、1ギガワット(1000 MW)の電力を暗号通貨の採掘に充てるという。ケンブリッジ大学の研究者の推計によると、現在のビットコインのネットワークは、10ギガワット(GW)強を使用している。

例に挙げたのは、いずれもテキサス州を代表する注目の採掘事業だけだが、安価な電力を追い求める他の多くの企業からも、テキサスに施設を設置する計画が発表(あるいは噂)されている。

ビットコインが大量の電力を消費するのは、中央機関に依存しない公開型の分散台帳であるブロックチェーンの安全性を確保するためだ。ケンブリッジ大学の研究者の推計に基づくと、ビットコイン・ネットワークの年間電力使用量は、フィリピンとベルギーの国家電力使用量の間に位置する。ビットコイン・ネットワークの信頼性を証明するべく、世界中に分散する数千人の採掘者が絶えず大量のコンピューティング・パワーを消費しているのは、複雑な暗号パズルを解決する競争のためだ。この競争で勝者になると、10分ごとに新しいトランザクションの「ブロック」を台帳に追加する権利を …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. A long-abandoned US nuclear technology is making a comeback in China 中国でトリウム原子炉が稼働、見直される過去のアイデア
  2. Here’s why we need to start thinking of AI as “normal” AIは「普通」の技術、プリンストン大のつまらない提言の背景
  3. AI companions are the final stage of digital addiction, and lawmakers are taking aim SNS超える中毒性、「AIコンパニオン」に安全対策求める声
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る