新型コロナ、世界の最新データが見られるサイト10選
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の最新データが得られる、おすすめのダッシュボードを紹介しよう。 by Neel V. Patel2020.03.11
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行に関する詳細情報を得ようとWebをチェックしたことがあれば人なら、少なくとも1つか2つのダッシュボードを見かけたことがあるはずだ。新型コロナウイルスの感染地域、最新の感染率や死者数、新たな症例が確認された国やアウトブレイクが見込まれる地域の内訳などの情報を、インタラクティブな地図やビジュアルを使って可視化したランディングページのことだ。
すべてのダッシュボードが同じように作られているわけでないし、すべての人が同じダッシュボードにアクセスできるわけでもない(たとえば米国の対イラン制裁により、イランではジョンズ・ホプキンス大学が運営するダッシュボードにアクセスできない)。他では見られない独自データを示すダッシュボードもあれば、操作しやすいもの、とにかく見た目が美しいものもある。
その中でも人気が高いのが、ジョンズ・ホプキンス大学のダッシュボードだ。この感染情報マップの作成に取り組んだ博士課程学生のエンシェン・ドンは、「感染症の発生から収束までの一連のライフサイクルを監視したいと思いました」と話す。ダッシュボード作成チームはこれほど注目を集めるとは考えもしなかったが、公開以来、新型コロナウイルスの感染範囲と影響に関するリアルタイムの更新情報を入手したい人が利用する主要な情報源となっている。
このようなダッシュボードの設計は、「アウトブレイク」を示す大きな円をあちこちに描画したマップを作成すればいいというものではない。表示するデータの正確性と一貫性を確保するとともに、ユーザーの懸念や不安を考慮する必要もある。例としてドンは、クルーズ船ダイヤモンドプリンセスを下船して米国に送還された感染者の表示を挙げる。この患者は当初、1つの点として表示され、その点はカンザス州の中心に配置されていた。しかし、カンザス州の住民に不評だったため、ジョンズ・ホプキンス大学はこの点をクルーズ船の停泊地に戻すことにした。些細なことに思えるかもしれないが、当事者コミュニティからの苦情や無用な心配をできるだけ抑えながら、適切な情報を提示するために必要となる膨大な作業量が浮き彫りとなる例だ。
新型コロナウイルスのダッシュボードは、感染者のプライバシーを侵害するのではないかとの懸念が多くの人から表明されてきた。たとえば、シンガポールの保健省が運営する公式ダッシュボードには、1人1人の入院患者に関する詳しいデータ(年齢、性別、居住地、勤務地、患者が訪れた場所など)が表示されている。だが、シンガポール保健省のデータを利用したダッシュボードを運営するコーディングのオンライン・コースを提供している「アップコード・アカデミー(UpCode Academy)」のZP・リーCEO(最高経営責任者)は、データに示されている場所は人口密度が非常に高いため「Webサイトに表示されているすべてのデータを使っても、患者を正確に識別することはほぼ不可能です」と述べている。
以下に、Web上で見られる新型コロナウイルス関連ダッシュボードのおすすめ(または、あまりおすすめではない)ランキングを紹介しよう。日を追うごとにダッシュボードは増え続けているので、完全なリストからはほど遠いものだが、新型コロナウイルスが世界に広がり続ける現在、ブックマークすれば役立つはずだ。
※日本版編注:本記事で紹介している内容は、米国版の記事公開時点(3月6日)の情報です。最新の情報ではない可能性があります。
1. アップコード(UpCode)
アップコード(UpCode)は、優れたダッシュボードは必ずしも派手である必要はないことを証明している。このダッシュボードは、シンガポール保健省のダッシュボードから提供されるデータを取捨選択している(新型コロナウィルスの症例データについては、そのまま使っている)。だが、驚くほど分かりやすいデザインで操作性に優れ、非常に識見に富んでいる。症例情報は美しいチャートとグラフにまとめられ、性別、年齢、国籍、および都市の場所ごとに内訳と傾向を確認できる。感染者の回復までの平均日数も知ることもできる。また、1月からのシンガポール全土における新型コロナウイルスの症例数が時系列でまとめられている。提供されるのはシンガポール国内のデータだけだが、その優れたデザインを体験しようと海外からのアクセスが80%を占めているという。
長所: すっきりとしたデザインで操作しやすい。データから得られる見通しを提供。感染場所を表示。各症例の既知の詳細情報を提供。
短所: シンガポール国内のデータのみ。プライバシーの問題がある。
2. ネクストストレイン(NextStrain)
ネクストストレイン(Nextstrain)は多くのユーザーにとって専門性が高すぎるが、新型コロナウイルスの遺伝子変異について学びたい科学者や強い好奇心を持つ人にぴったりのダッシュボードだ(「新型コロナは世界にどう広がったのか? 遺伝子解析で追跡」を参照)。ネクストストレインは、新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」のゲノム解析をしている世界中の研究機関からあらゆるデータを取り込み、系統樹として表現している。ネクストストレインの分子疫学者のエマ・ホドクロフト博士は、「私たちの取り組みは現時点では確かにあらゆる方面から注目されています」と話す。「このエピデミック(局地的流行)が続くとしたら、(中略)我々は公衆衛生機関とのさらに緊密な連携が可能です。識見から最も恩恵を得られるのは公衆衛生機関ですから」。
長所: 極めて優れたビジュアル表現とアニメーション。独自のデータを掲載したダッシュボード。
短所: 極めて専門的な情報。
3. ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センター
ジョンズ・ホプキンス大学は、米国の麻疹リスクを追跡するために作成したダッシュボードにアイデアを得て、新型コロナウイルスのダッシュボードを作成した。アクセス数は2億件を超え、世界のほぼすべての国からのアクセスがある。新型コロナウイルスの世界的な広がりを調べられる極めて包括的なダッシュボードの1つだ。感染者が確認された国や場所に的を絞って情報を得ることができ、さらに現在治療中の患者数も確認できる。また、地図の選択肢も数多く用意されている。世界中の他の多くのダッシュボードが、このデザインを参考にしている。
ただ、このダッシュボードはまだ開発途上だ。これまでに3回改訂され、以前のバージョンでは特定の場所での大流行の規模を示す円の大きさ区分に問題があった。文字サイズは小さく、黒と赤を基調する色合いは新型コロナウイルスに不安を抱くユーザーにはいただけない。また、特定の症例や特定の場所での新型コロナウイルスの感染経緯について詳しく知る方法はない。
長所:世界的な感染状況が分かる。ほぼリアルタイムの更新。モバイル版がある。
短所:不安を煽る配色。操作性はややぎこちない。任意の場所の感染拡大の経緯に関する情報はない。
4. 武漢ウイルス(The Wuhan Virus)
ベースラボ(Thebaselab)が展開している「武漢ウイルス(The Wuhan Virus)」は、全世界の新型コロナウイルスの感染者数をほぼリアルタイムで確認できる。赤色のデザインはやや無用な警戒感を起こさせるが、すっきりとした白い背景色とうまく調和している。このダッシュボードはジョンズ・ホプキンス大学と同様、これまでに感染者が確認されているすべての国の既知の症例統計をまとめて表示している。また、ベースラボはダッシュボードの仕組みと、新型コロナウイルスと他の深刻な伝染病の流行との比較に関連した独自記事を公開している。
長所: すっきりとしたデザイン。優れた配色。ページ読み込み速度が速い。
短所: 縦長すぎるレイアウト。合間に配置された記事が不自然で、気が散ってしまう。
5. 英国放送協会(BBC)
英国放送協会(BBC)は新型コロナウイルスがこれまでの数カ月でどのように広がったか、優れた手引きとなる情報の提供を目指している。静的なビジュアル表現で、確かにあまり魅力的ではない。しかし、BBCのダッシュボードはより国際的な視野に焦点を絞っており、イラン、韓国、イタリアなど、中国以外の感染者が非常に多い主要地域にも注目している。快適な使用感には乏しいが、その分、必要な情報は得られる。
長所: 理解しやすく、操作が簡単。主要なアウトブレイクに関する詳細な説明。
短所: 月並みのデザインで、インタラクティブ機能がない。「見る」というよりも「読む」スタイル。
6. ニューヨーク・タイムズ紙(New York Times)
BBCと同様に、ニューヨーク・タイムズ紙(New York Times)独自のダッシュボードは、状況を一般の人々に分かりやすく伝えている。ニューヨーク・タイムズ紙が最も得意とするところだ。しゃれたビジュアルやインタラクティブなグラフはないが、新型コロナウイルスの感染者が多く確認されている地域を大陸ごとに分けて、これまでの感染状況と、封じ込め策について有益な情報を示している。
長所: すっきりとしたデザイン。理解しやすく、きれいな配色。危機に対する優れた手引き。読者へのアドバイスを提供する。
短所: 必要最低限で、リアルタイムでの更新ではない。インタラクティブ機能がない。
7. ヘルスマップ(HealthMap)
ヘルスマップ(HealthMap)のダッシュボードはシンプルすぎて、ダッシュボードとはいえないと主張する人もいるかもしれない。だが、非常に有用な新型コロナウイルスの世界地図なのでここで紹介する。地図のアニメーションを再生すれば、感染症が世界中にどのように広がってきたのかを時系列で見られるのだ。シンプルだが、これまでの新型コロナウイルスの感染拡大の経過を最初から理解するには便利だ。
長所: アニメーションを簡単に再生できる。
短所: 必要最低限の情報。ダークグレーの地図は気が滅入る。
8. シンガポール保健省
シンガポール政府の公式ダッシュボードは、1. で紹介したアップコードのダッシュボードの情報ソースだが、こちらの見栄えはお世辞にもいいとは言えない。確認された各症例について、症例確認日、患者の年齢、入院場所、居住地、勤務地、患者が訪れた可能性のある場所などが分かる。これを透明性が高いと称賛するか、プライバシー侵害だと不快に感じるかは人それぞれだが、シンガポール全土に新型コロナウイルスがどのように広がっているかを理解するのに非常に役立つデータであることは間違いない。
ただ残念なことに、このダッシュボードではデータを簡単に掘り下げることはできない。豊富な症例データがあるにもかかわらず、最も基本的な数値と傾向線のみで表現されているからだ。
長所: 各症例の既知の詳細情報を提供。シンガポールの現状を理解しやすい。
短所: 地図がなく、データ表現に乏しい。見た目がいまいち。プライバシーの問題がある。
9. 米国疾病予防管理センター(CDC)
米国疾病予防管理センター(CDC)のダッシュボードは、実際にはメインのWebサイトの単なる拡張にすぎない。特に魅力的な点はないが、数字と情報だけが欲しい人にとっては信頼できるダッシュボードだ。米国外のユーザーが使えるデータはあまりなく、主に米国人向けだ。
長所: 米国における新型コロナウイルスの概要が「一目で」簡単に分かる。検査状況に関する情報を州別に提供。
短所: 極めて退屈なデザイン。独自の見通しや興味深い見識はなく、情報は限られている。
10. 香港政府
香港での新型コロナウイルスの広がりを示す香港政府のダッシュボードは、懐かしい一昔前のインターネット感にあふれている。無料ホームページサービスのジオシティーズ(GeoCities)で作られたページを思い出させるぎこちなさが満載なのだ。それでも、ユーザーは道路地図をたどって、確認された患者の居住地を把握し、最新の入院患者数、退院者数、死亡者数などの情報を得られるので便利だ。それ以外にも、個人向けの感染予防策や情報源へのリンクも多数掲載されている。
長所: 香港に特化した情報の取得に便利。
短所: 使いにくく、見た目がいまいち。
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- ニール・V・パテル [Neel V. Patel]米国版 宇宙担当記者
- MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。地球外で起こっているすべてのことを扱うニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」の執筆も担当している。MITテクノロジーレビュー入社前は、フリーランスの科学技術ジャーナリストとして、ポピュラー・サイエンス(Popular Science)、デイリー・ビースト(The Daily Beast)、スレート(Slate)、ワイアード(Wired)、ヴァージ(the Verge)などに寄稿。独立前は、インバース(Inverse)の准編集者として、宇宙報道の強化をリードした。