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新型コロナ対策、今こそ
「血清学的調査」が必要だ
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Why the US can’t go back to work by Easter

新型コロナ対策、今こそ
「血清学的調査」が必要だ

検査を受けていない多くの人たちがすでに無症候性あるい軽度の新型コロナウイルス感染症にかかっているのではないかとする「パンデミック懐疑論者」が、少数ながら増えつつある。この説が正しければ、通常の社会生活を思ったよりも早く再開できることになるが、真偽を確かめるためには、より多くの人たちを検査する必要がある。 by Michael Reilly2020.03.31

ドナルド・トランプ大統領は、米国における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のエピデミック(局地的な流行)から何とかして立ち直ろうと躍起になっている。3月24日には、復活祭(4月12日)には米国を「開放し、再出発が待ちきれない状況になる」と期待していると表明した。

トランプ大統領の希望は、ほとんどの公衆衛生専門家にとっては夢物語だ。新しい感染者が大量に発生し続けていた中国が、厳格で強制的な都市封鎖を徹底的に実施することで新しい感染者の発生を少数に抑えるまでに2か月かかった。湖北省は3月25日に移動制限を解除し始めたばかりだ。これに対し、米国でこれまでに自宅待機命令を発令したのは一部の州と郡だけだ。先陣を切ったカリフォルニア州でさえ、発令はわずか1週間ほど前のことだ。米国で確認された感染者数は中国を追い抜き、3月30日の時点で14万人を超え、感染者の増加スピードはますます加速している。

米国が今から復活祭までの間に、(強制はできないだろうが)中国式の都市封鎖を実施したとしても、復活祭の時点では感染の拡大スピードは規制解除を正当化するのに十分なレベルまで低下しない。しかも、規制を解除したら新しい感染者が再び急増する可能性がある。3月16日に発表された有力な論文の中でインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者は、パンデミック(世界的な流行)を制圧するには、ワクチンまたは治療法が見つかるまで、英国や米国など国家は1カ月の猶予を挟んで2〜3か月にわたる社会距離戦略を何回も維持する必要があると予測した。ワクチンの実用化には18カ月かかる可能性がある。

しかし最近になり、そのような対策はあまりにも厳格すぎるかもしれないと示唆する専門家の一群(「パンデミック懐疑論者」と呼ぼう)が小規模ながら増え続けている。実際、新型コロナウイルスに感染して症状が出なかった人や、症状が軽度で気づかなかった人など、確認されていない感染者の数は思っているよりはるかに多いかもしれないとパンデミック懐疑論者はいう。

もしそれが本当なら、見逃せない重大な事実だ。第一に、新型コロナウイルス感染症の致死率が、これまで集計されたデータが示唆しているような発症者の3〜4%という値をはるかに下回ることを意味する。パンデミック懐疑論者の一部の主張では、平均致死率が約0.1%のインフルエンザよりもはるかに低い可能性がある。

第二に、「集団免疫」を獲得する時期が思ったよりもはるかに近い可能性があることを意味する。集団免疫とは、新型コロナウイルス感染症の感染者がある程度の人数まで増えると新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が新しい宿主を見つにくくなり、新たな感染者増加の割合が抑制される効果のことだ。この2つの要因はどちらも、経済と通常の社会生活を思ったより早く再開できることを意味する。

こうした主張の根拠は断片的だが、興味をそそられる。ロンドン大学衛生熱帯医学大学院の疫学者であるアダム・クチャルスキー准教授が3月24日にツイートしたように、クルーズ船「ダイヤモンド・プリン …

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