KADOKAWA Technology Review
×
動画生成AI「Sora」の問題点とは? 知財専門家が解説【11/12緊急開催🚨】
Why Bitcoin’s $1,000 Value Doesn’t Matter

ビットコイン高値更新でも影響力はウズベキスタン通貨並み

暗号通貨ビットコインが過去3年間での最高値更新。これで喜んでいるのは素人だ。 by Jamie Condliffe2017.01.04

新年になってビットコインに関するうれしいニュースがあったのは既報の通りだ。1月2日、暗号通貨ビットコインは過去3年間の最高値をつけ、1BTCあたり1033ドルに達した。だが、高値には何の意味もない。むしろビットコインの欠点がいくつか浮き彫りになったに過ぎない。

ビットコインによる取引を支えるプロトコル「ブロックチェーン」の賛同者は、上機嫌に今回の価格上昇でビットコインの総価値が160億ドルに達したというだろう。確かに莫大な金額のようだが、実際には微々たる額なのだ。 フィナンシャル・タイムズ紙(ペイウォール)は次のように書いている。

状況を分かりやすくするために 米国中央情報局(CIA)が地球上の広義のマネー(紙幣、硬貨、あらゆる形態の口座預金)の総額を計算した金額を見てみよう。2014年末時点で82兆ドルである。CIAの算出額を基にすると、ビットコインの時価総額はウズベキスタン通貨スムの広義のマネー総額とだいたい同じだ。ウズベキスタン政府には申し訳ないが、スムとビットコインの総額と、そこに利害関係がある人数は、現代金融情報の観点からすると、どちらもゼロに等しい。

言い換えると、1BTCが1000ドルを超えたところで、ビットコインは地球上のマネー全体に占めるインパクトはごくわずかなのだ。逆に、価格が上昇傾向にあるからこそ、いくつかの弱点が露わになっている。

金融ネットメディア「レジスター」(本社ロンドン)によると昨今のビットコイン 高は、中国の人民元が着実に下落しているのが原因のようだ。昨年ニューヨーク・タイムズ紙 が報じた通り、数社の中国企業がビットコイン取引において事実上過半数を占めており、ほとんどは中国内部で取引されている。自国通貨の価値が下落して電子マネーへの需要が高まり、ビットコインの価値を押し上げているのだ。

しかし、このように取引が集中してしまうと、中国以外のビットコインユーザーには困ったことになる。ビットコインの仕組みのため、今回の中国企業のように、少数のユーザーが過半数の取引を押さえてしまうと、少数ユーザーは基盤となるテクノロジーの更新に拒否権を発動できる。

しかし、テクノロジーの更新こそがビットコインには必要だ。フィナンシャル・タイムズ紙のいうとおり、ビットコインが成長するには、新しいテクノロジーを採用する必要があるのは明白だ。現在、ビットコインで扱える取引は毎秒27件に限られる。たとえばVISAカードが毎秒数十万件もの取引をこなせることを考えれば、まるで話にならない。

過半数を誰かが支配してしまうとビットコインの進歩は停滞しかねない。さらに中国がビットコインの入手や取引が最も盛んな国であることは、国家による介入を懸念(暗号通貨はもともと国家による経済への介入を嫌う思想から出発している)する見方が広がる可能性もある。こういった懸念は価格が1000ドルを超えたからといって払拭はできない。

(関連記事:BBC, The Register, Financial Times (paywall), The New York Times, “Technical Roadblock Might Shatter Bitcoin Dreams,” “Bitcoin Transactions Get Stranded as Cryptocurrency Maxes Out”)

人気の記事ランキング
  1. Promotion MITTR Emerging Technology Nite #35 Soraの問題点とは? AI時代の知財を考える11/12緊急イベント
  2. What a massive thermal battery means for energy storage 1000℃のレンガで熱貯蔵、世界最大の蓄熱電池が稼働
  3. I tried OpenAI’s new Atlas browser but I still don’t know what it’s for 誰のためのブラウザー? オープンAI「Atlas」が残念な理由
  4. An AI adoption riddle AIの試験運用は失敗続き、それでもなぜ投資をやめないのか?
タグ
クレジット Photograph by Anthony Wallace | Getty
ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
気候テック企業10 2025

MITテクノロジーレビューは毎年、気候テック分野で注目すべき企業を選出し、その一覧を発表している。 今回で3回目となる本特集では、なぜこれらの企業を選出したのか、そして米国の政治的変化をどのように考慮したのかについても詳しく解説している。併せてお読みいただきたい。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る