新型コロナ感染リスク、物理的距離2倍で半減か
医学誌ランセット(Lancet)に発表された新たな分析(レビュー論文)によると、対人距離を2メートル確保することは1メートルの距離を確保するよりも、新型コロナウイルスの感染拡大リスクを軽減する上で効果が高いことが分かった。 by Charlotte Jee2020.06.09
医学誌ランセット(Lancet)に発表された新たな分析(レビュー論文)によると、対人距離を2メートル確保することは1メートルの距離を確保するよりも、新型コロナウイルスの感染拡大リスクを軽減する上で効果が高いことが分かった。研究者は16カ国の172の観察研究を調べ、統計分析を実施し、感染リスクの推定値を算出した。9つの主要な研究で使用されたモデルで、1メートル以上の対人距離を確保した場合の感染リスクは平均約3パーセントだったが、1メートル未満の場合は約13パーセントまで上昇したことが判明した。このモデルは最長3メートルまでの範囲で、対人距離が1メートル長くなるごとに感染リスクがおよそ半減することを示している。
この研究ではまた、顔を覆うこと、目を保護することの両方が、ウイルス感染拡大のリスクを大幅に減らすことも分かった。マスク着用では感染リスクが17パーセントから3パーセントに減少、目の保護具(フェイスシールドやゴーグルなど)の着用では16パーセントから6パーセントに減少したという。どれぐらいの期間ウイルスに曝されていたかといった他の要因は元のデータセットに含まれていないため、考慮されていない。
世界各国の政府がロックダウン(都市封鎖)規制を緩和するにあたって、人々の安全を確保する方法が議論されている。人と人の間の物理的距離をできる限り確保することが、あらゆる合理的な戦略の核となるべきなのは、この査読済み論文から明らかだ。また、この研究結果は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぎながら、いかに人を呼び戻すかについて検討を進めている職場やレストラン、バー、映画館に有益な情報を提供するはずだ。
対人距離確保のアドバイスは、国によって異なる。英国では現在2メートルとなっているが、距離を縮めるよう求める声もある。米国では米国疾病予防管理センター(CDC)が6フィート(1.8メートル)の距離の確保を呼びかけており、オーストラリアとドイツは1.5メートル、フランスは1メートルが正式な指針となっている。世界保健機関(WHO)は、1メートルの距離を確保するよう推奨している。
(関連記事:新型コロナウイルス感染症に関する記事一覧)
- 人気の記事ランキング
-
- AI can make you more creative—but it has limits 生成AIは人間の創造性を高めるか? 新研究で限界が明らかに
- Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2024 「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集のお知らせ
- A new weather prediction model from Google combines AI with traditional physics グーグルが気象予測で新モデル、機械学習と物理学を統合
- How to fix a Windows PC affected by the global outage 世界規模のウィンドウズPCトラブル、IT部門「最悪の週末」に
- The next generation of mRNA vaccines is on its way 日本で承認された新世代mRNAワクチン、従来とどう違うのか?
![](https://www.technologyreview.jp/wp-content/themes/technologyreview/img/dummy.png)
- シャーロット・ジー [Charlotte Jee]米国版 ニュース担当記者
- 米国版ニュースレター「ザ・ダウンロード(The Download)」を担当。政治、行政、テクノロジー分野での記者経験、テックワールド(Techworld)の編集者を経て、MITテクノロジーレビューへ。 記者活動以外に、テック系イベントにおける多様性を支援するベンチャー企業「ジェネオ(Jeneo)」の経営、定期的な講演やBBCへの出演などの活動も行なっている。