KADOKAWA Technology Review
×
史上初の偉業、スペースXは宇宙飛行市場を開拓できるか?
SpaceX
宇宙 無料会員限定
SpaceX can now send humans to space. It just needs a market.

史上初の偉業、スペースXは宇宙飛行市場を開拓できるか?

スペースXは2020年5月30日、民間企業として初めて、有人宇宙飛行ミッションの打ち上げに成功するという快挙を成し遂げた。宇宙飛行新時代の到来を告げるニュースは顧客獲得につながるか。 by Neel V. Patel2020.06.05

スペースX(SpaceX)は米国東部標準時間5月30日、新型の有人宇宙船「クルー・ドラゴン(Crew Dragon)」の打ち上げに成功し、地球周回軌道上に人を輸送した初の民間宇宙船となった。米国航空宇宙局(NASA)と米国の宇宙産業、スペースXにとって歴史的な偉業だ。NASAのジム・ ブライデンスタイン長官は報道陣に対し、今回の「デモ2(Demo-2)」ミッションが新しいビジネスモデルの成功を確立し、NASAは地球低軌道への輸送ニーズを満たすために民間企業に依頼する多くの顧客の1つだと述べた。

多くのメディアは、スペースXが宇宙飛行の「新時代」を切り開いたとして、地球低軌道が商業化され、民間の宇宙船で人が宇宙に行き来できるようになると報じた。「NASAはハードウェアの所有者やオペレーターになりたいわけではありません」とブライデンスタイン長官は述べた。「唯一の顧客になりたいわけでもありません。スペースXなどの企業には、我々以外の顧客を獲得してほしいと考えています」。

今回の打ち上げで、スペースXの宇宙船は人を地球周回軌道上に輸送するための選択肢となることが証明された(宇宙船「スターライナー(Starliner)」で宇宙飛行士を宇宙に輸送できると証明されればボーイングも選択肢となる)。しかし、この選択肢を使いたいと思う顧客の市場があると考えるのはまだ早い。ジョージワシントン大学宇宙政策専門家のジョン・ログストン教授は、「今回の打ち上げとクルー・ドラゴンは、軌道を民間の宇宙旅行に幅広く開放する観点からすると、現実的というより象徴的だと思います」と語る。

このことをよく理解するには、スペースXが主力のロケット「ファルコン9(Falcon 9)」とクルー・ドラゴンの前身である貨物船「ドラゴン」をどのように開発してきたかを見直す必要がある。2008年、スペースXとオービタル・サイエンシズ(Orbital Sciences 、のちにノースロップ・グラマン(Northrop Grumman)と合併)は、国際宇宙ステーション(ISS)への貨物補給ミッションのための商用宇宙船を開発するため、NASAとの間で数十億ドルの契約を勝ち取った。NASAには、単に引退間近のスペースシャトルの代わりとなる補給機を探すだけでなく、始まったばかりの民間宇宙産業を盛り上げる狙いもあった。

スペースXにとって、これはまたとないチャンスだった。同社はISSの貨物補給ミッションにとって信頼のおける企業となった。しかし、民間宇宙団体・惑星協会(Planetary Society)の宇宙政策シニアアドバイザーのケーシ ー・ドライアは、それ以上に「すでにこのようなサービスを待ち望んでい …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. A long-abandoned US nuclear technology is making a comeback in China 中国でトリウム原子炉が稼働、見直される過去のアイデア
  2. Here’s why we need to start thinking of AI as “normal” AIは「普通」の技術、プリンストン大のつまらない提言の背景
  3. AI companions are the final stage of digital addiction, and lawmakers are taking aim SNS超える中毒性、「AIコンパニオン」に安全対策求める声
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る