KADOKAWA Technology Review
×
10/9「生成AIと法規制のこの1年」開催!申込み受付中
人権団体がAI活用、映像から戦争犯罪の証拠を機械学習で検出
Vframe
人工知能(AI) Insider Online限定
Human rights activists want to use AI to help prove war crimes in court

人権団体がAI活用、映像から戦争犯罪の証拠を機械学習で検出

国際人道法に違反する戦争犯罪の立証のために、人権団体らが人工知能を活用している。膨大な映像や画像を機械学習で分類し、より強力な証拠を短期間で法廷に提出するのが目的だ。 by Karen Hao2020.08.20

2015年、イエメン共和国(イエメン)の内戦激化を警戒した隣国のサウジアラビア王国(サウジ)は、シーア派拡大に繋がる勢力を打倒しようとイエメン空爆を主導した。サウジ当局によると、スンニ派アラブ諸国を中心とする8カ国を加えた9カ国の有志連合による軍事介入は、数週間しか続かないはずだった。それから5年近く経ったが、空爆はまだ続いている。

ある概算によると、サウジ主導の有志連合はその後2万回を超える空爆を実施し、多くのイエメン民間人が亡くなり、家屋や財産が破壊された。この空爆は国際法に直接違反しているとされており、人権団体は法的責任を問うことで空爆を阻止しようと、これまで空爆が始まって以来、戦争犯罪の記録に努めてきた。だが、ジャーナリストや活動家による現場での検証という代表的な戦争犯罪を認定する基準は、あまりにも危険すぎて実行できない。その代わり、人権団体はこの戦闘を把握するためクラウドソース化されたモバイル機器による写真や映像に目を向け、それらを目撃証言の補足資料として裁判所に提出するという手段を取り始めた。

だが、戦争現場のデジタル資料が急増するにつれ、その分析時間も爆発的に増えた。また、画像や映像を徹底的に観察しなければならないため、調査員の心に傷を負わせてしまう場合もある。一方で、英国の裁判制度のもとでこの難題に挑戦する新しいイニシアチブは、分析の代替手段に機械学習を導入する方法を試している。成功すれば、クラウドソース化された証拠資料がより利用しやすくなり、人権団体がより豊富な情報源を活用するモデルケースになるかもしれない。

英国のスウォンジー大学と多数の人権団体が率いるこのイニシアチブは、イエメンで起きている戦争犯罪の疑惑を監視し、法的責任の追及を強化しようとする継続的な取り組みの一環だ。2017年、「イエメン・アーカイブ(Yemeni Archive)」プラットフォームは、虐待を記録した写真や映像のデータベースの作成を始めた。写真や映像は、ジャーナリストや民間人からの投稿のほか、ユーチューブやフェイスブックといったソーシャルメディア・プラットフォームに公開されたものを含む数千もの情報源から収集され、改ざん防止のためブロックチェーン上に保存された。

その後、人権侵害を起こした国を訴える非営利団体「グローバル・リーガル・アクション・ネットワーク(GLAN:Global Legal Action Network)」とイエメン問題を調査している団体が連携して、特定の人権侵害の証拠を区別してデータベースにまとめ、国内外の裁判所で訴訟手続きを始めた。イニシアチブのリーダーを務めるスウォンジー大学のイヴォンヌ・マクダーモット・リース教授は、「法廷で責任を追及する場合、訴訟手続きとして、こういうことが起こりましたと資料を見せるだけでは不十分なのです」と話す。「『こういう理由で、これは戦争犯罪なのです』と言わなければなりません。理由は『違法な武器使用』かもしれないし、空爆の場合なら『民間人が標的』や『行き過 …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. Promotion MITTR Emerging Technology Nite #30 MITTR主催「生成AIと法規制のこの1年」開催のご案内
  2. A brief guide to the greenhouse gases driving climate change CO2だけじゃない、いま知っておくべき温室効果ガス
  3. Why OpenAI’s new model is such a big deal GPT-4oを圧倒、オープンAI新モデル「o1」に注目すべき理由
  4. Sorry, AI won’t “fix” climate change サム・アルトマンさん、AIで気候問題は「解決」できません
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る