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陰謀論やデマについて子どもと話し合うための15カ条
Ms Tech | Pexels
How to talk to kids and teens about misinformation

陰謀論やデマについて子どもと話し合うための15カ条

世間には常に多くの誤情報が飛び交っているが、大統領選の前後の期間中は特に顕著となった。自分は大丈夫だと思っていても、誤情報に対して絶対の耐性を持っている人などいないし、子どもであればなおさらだ。陰謀論や誤情報に対してどのように対処すべきか、専門家に聞いた。 by Tanya Basu2020.12.15

11月3日に米国の大統領選挙が実施され、世の中は政治的な話題で溢れかえっている。米国民はひっきりなしにニュース速報の通知を受け取り、テレビでさまざまな専門家の意見や選挙広告を目にし、敵対心を煽る庭先の看板などもあちこちで見かけている。大きな賭け金がかかっている争いだけに、私たちは皆、何が事実で何が作り話なのか見極めるのに苦労している。

子どもたちといえども例外ではない。若いということは、いつの時代も楽なものではないが、ソーシャルメディアやテレビ番組、親しい大人たちまでもがたびたび真実を捻じ曲げて誤情報にしてしまうような時代には特に厳しいものだ。

年齢を問わず、誤情報についてどのように他人と話し合ったり、自分が受け取ってシェアしている情報が真実かを見極めたりするにはどうすればいいのか? ヒントを紹介しよう。

誤情報について子どもとどのように話し合えばいいのか

私たちは、子どもがどのように陰謀論や誤情報に影響されているのかあまり理解していない。「若者が陰謀論を信じることについて検証した研究はほとんどありません」。ケント大学の社会心理学教授で、10代の子ども2人の母であるカレン・ダグラスはそう話す。この文献は、高度な教育を受けるほど誤情報に対する耐性が高まることを明確に示しており、同じ理屈は子どもにも当てはまるだろう。子どもたちは、幼ければ幼いほど誤情報を信じる危険性が高まる。ダグラス教授は若者が陰謀論をどのくらい信じているかを測る心理測定尺度を開発中であり、それが完成するまでは子どもたちが誤情報をどのように受け取っているのかを詳しくは把握できないだろう。そうなると、誤情報への対策はより難しくなる。

年齢に合わせた対応する。たとえば、すべての子どもがジョージ・フロイド殺害に関する写実的な詳細や、その根本にある制度的人種差別を受け止められるわけではない。12歳未満の子どもであれば、そうすべきでもない。そう話すのは、非営利団体のコモンセンス・メディア(CommonSense Media)で教育編集戦略部長を務めるタナー・ヒギンだ。「7歳未満の子どもは、政治的議論に巻き込んだり、政治問題に関する不安を抱かせたりしてはいけません」とヒギン部長は話す。小さい子どもたちは自分が安全であり、親たちが自分を守ってくれていると感じておく必要がある。特に、新型コロナウイルスのパンデミックで友人たちとの接触が少なくなっている状況で子どもたちに不安を与えると、思わぬしっぺ返しを食らうことになるだろう。

とはいっても、うわべを取り繕わない。特に、早熟で大人びていて、鋭い質問をしたり、不安や恐れを感じることなく情報を消化できたりする子どもに対しては、はっきりと正直になるべきだ。いずれどこかで必ず真実に触れてしまう子どもたちに嘘をついても意味がない。「幼児でさえも、真実を伝えないことや間違った情報を基に決断することがいかに有害であるかを理解できます」。非営利団体ニュース・リテラシー・プロジェクト(News Literacy Project)の上級副社長を務めるピーター・アダムスはそう話す。「子どもは、公平で正確であることの重要性といった基礎的なジャーナリズムの概念も理解できます。そのことを彼らにとって現実的なものにするには、提示する例やテーマを工夫する必要があります」。

「軽い」陰謀論を提示してみる。論理に反しているかもしれないが、これは特に騙されやすい小さな子どもにとっては非常に重要だとダグラス教授は言う。「彼らが一度陰謀論を信じてしまうと、その考えを正すのは困難です」。現実社会で陰謀論に晒される前に軽めの陰謀論に触れさせ、その誤りを一緒に解き明かすことで子どもたちを守ろう。そうすれば、子どもたちはそうした推論の何が問題なのかを理解しやすくなり、より説得力の高い陰謀論に出くわしても、一歩引いて疑問を抱くことができるようになる。

年齢を問わず、誤情報と戦うにはどうすればよいのか

あなたも誤情報に引っかかる可能性があると頭に入れておくこと。そう、あなたにもその可能性はあるのだ。「多くのティーンエージャー、特にテクノロジーに精通しているタイプは、自分は賢いから誤情報には引っかからない、だから心配する必要はないと思っています」とアダムス上級副社長は言う。だが、これは口を酸っぱくして言う必要があるが、誤情報に対して絶対の耐性を持っている人間などいないのである。

再投稿に気をつける。「ある主張やスクリーンショットが異なるプラットフォームにまたがっで投稿されていたら、文脈が損なわれている兆候かもしれません」。アレクサ・ヴォランドはそう語る。ヴォランドは、メディアワイズ(MediaWise)の「ティーン・ファクトチェッキング・ネットワーク」に所属し、全米各地で10代のファクトチェッカーを育成している。このネットワークは、ポインター・インスティチュート(Poynter Institute)、グーグル ニュース イニシアティブ、フェイスブックの共同事業である。ヴォランドは、スクリーンショットの中にスクリーンショットが写っているインスタグラムのストーリーや、インスタグラムのストーリーまたはティックトックにツイッターのスクリーンショットが投稿されているのを数多く目にしてきた。こうした再投稿に対応するには、元のプラットフォームを当たって、シェアされる前にその人物が語っていたことを確認することだ。

幼児でさえも、真実を伝えないことや間違った情報を基に決断をすることがいかに有害であるかを理解できます。

ミームをチェックするには逆画像検索が最適。ソーシャルメディアでは、特定のニュースに関連していると思って衝撃的な画像を投稿する人々が時々いるが、実際は何の関係もないということがある。ヴォランドによると、拡散している画像が本当は何を意味しているのかを確認するための最も簡単で速い方法の1つが、単純な逆画像検索だという。

情報の裏に誰がいるのか自分に問う。その話題を最初にシェアした組織や人間を調べ、彼らの意図は何なのか考えてみよう。その情報がシェアされることで、彼らにどんな利益があるのだろうか? 彼らは誤情報につながるような形で真実を捻じ曲げようとしているかもしれない。

証拠を得る。自分のためのファクトチェッカーになり、できる限り情報の真偽を確かめよう。根拠は何なのか、情報ソースへのリンクはあるのか、他の複数の情報ソースが同じことを語っているのかを考えてみることだ。ファクトチェック.org(FactCheck.org)ポリティファクト(PolitiFact)のようなサイトが役に立つだろう。

自分のバイアスを検証する。ここで確証バイアスの出番だ。何らかの記事や投稿を見て、自分が「うわ、なんてひどいんだ!」というような強い反応をしたり、強く同意して何度も首を縦に振るようなことがあれば、一歩引いて冷静になるべきだ。「強い感情的反応を引き起こすような主張は、正当化されてしまう可能性があります」とヴォランドは言う。強い感情的反応が起こると、誤情報を信じやすくなってしまうのだ。

文脈を確認する。ヴォランドによると、ソーシャルメディアで拡散する誤情報の多くが、ミームを作るために文脈と関係のない画像を引用しているという。例えば、ヴォランドのグループは、数年前のミズーリ州ファーガソンで起きた抗議活動の画像が、最近のブラック・ライブズ・マター(BLM)運動の画像として拡散し、見る人に誤解を与えていたことを暴いている。

プライベートで話をする。ディナーの席であれフェイスブックのコメント欄であれ、攻撃されて嬉しい人はいない。誤情報を信じている可能性がある人に対しては、ダイレクトメッセージや他の人がいない場所で、個別に話をすることだ。

違う意見を探す。「私たちは1つの記事を行きつ戻りつ読みがちですが、複数のタブを開いて自分のエコーチェンバーの外に出ることが重要です」とヴォランドは語る。つまり、自分の考えとは反対寄りの傾向を持っていそうなニュースソースを当たったり、意見の合わない政治家のツイートや報道発表を読んでみるということだ。難しいかもしれないが、そうすることでバランス感覚を高められ、何が真実で何が誇張なのかを見極めるために役立つはずである。

コメント欄をチェックする。コメント欄に別のソースが示されていたら、その情報が真実かどうかを見極めるのに非常に役立つ場合が多い。その記事が疑わしいとか、誤解を招きかねないと他の人が指摘していることもすばやく簡単にわかる。

対話とは、他者への歩み寄りである。以前もお伝えしたように、丁寧に、礼儀正しく対応することは誤情報について語るための究極的に最も有効な方法である。他者の考えを攻撃すれば、相手をより意固地にさせる可能性がある。ヴォランドは、何らかのニュースが論争の対象になったら「情報ソースを取り替えてみる」ことを勧めている。もう1つアドバイスするなら、誰かがあるニュースソースに疑いを持っていたら、同じソースの情報を提示しても説得できないことを覚えておこう。ヴォランドは、お互いが納得できる情報ソースを探し、そこで情報を得ることを勧めている。

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人間とテクノロジーの交差点を取材する上級記者。前職は、デイリー・ビースト(The Daily Beast)とインバース(Inverse)の科学編集者。健康と心理学に関する報道に従事していた。
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