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大統領選の「早すぎる」勝利宣言にSNS各社はどう対処しているか
AP Photo/Jenny Kane, File
How social media sites plan to handle premature election declarations

大統領選の「早すぎる」勝利宣言にSNS各社はどう対処しているか

米国の大統領選挙では、勝敗は投票日当日には決まらず、票を集計して正式に確定するプロセスは投票日の後も続く。投票の結果が確定する前にいずれかの陣営が早まった勝利宣言をして混乱を起こさないようにするために、ツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアは対応している。 by Patrick Howell O'Neill2020.11.05

今回の大統領選挙の結果は、7つの州が投票を締め切り始めるタイミングである、米国東部時間の11月3日午後7時(日本時間4日午前9時)にも出始める。その後の数時間で国内の他の投票所も閉められ、集計が進み、得票数が更新されていく。だが、その日の夜に最終結果が出ることはない。

これは異常なことではない。米国では、票を集計して正式に確定するプロセスは投票日の後も続く。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のために、おそらく通常より集計は長引くだろう。だが、Webメディアであるアクシオス(Axios)は11月1日、まだ何百万票もの集計が残っていたとしても、開票速報でトランプ大統領が有利だった場合には勇み足で勝利宣言するつもりだと報じた(日本版注:トランプ大統領は4日未明に勝利宣言した)。トランプ大統領は否定しているが、こうした早まった勝利宣言は、選挙の正当性を損なわせようとする大統領自身の長期にわたるキャンペーンには沿っている。トランプ大統領は、投票が締め切られたらできるだけ早く(まだ数えるべき大量の郵便投票が残っていることが想定されても)、弁護士を使ってペンシルベニア州の集計を止めさせると述べており、その言い分とも一致している。

では、本当の決着がつく前に候補者が早々に勝利宣言をした場合は、一体どうなるのだろうか?

ソーシャルメディアの対応

ソーシャルメディアは勝利宣言の最前線にいる。時期尚早の勝利宣言は、ツイッターやフェイスブック、ユーチューブといった米国のソーシャルネットワークでなされることになるだろう。したがって、こうしたプラットフォームがそのような事態にどう対処するかで、次に何が起こると報じられるかが決まる。これら3つのサイトでは、そのようなデマへの対処としてラベル付けを使う予定だ。

大統領お気に入りのソーシャルメディア・プラットフォームであるツイッターは、候補者が選挙結果について誤解を与えるようなツイートをした場合には明確なラベルを貼り、拡散性のあるツイートについても同様に対処すると述べている。真偽の曖昧な勝利宣言には、「このツイートが発信された時点で、公式の情報源では勝敗が決していない可能性があります」というラベルが貼られる。

ツイッターは、州や地域の選挙管理委員会や、専門の選挙デスクを擁した大手の報道機関に頼って選挙結果を確定する。候補者が選挙結果をツイートしても警告ラベルを張られないためには、少なくとも2つの情報源で勝敗が確定していなくてはならない。

選挙広告の第一の戦場であるユーチューブは、勇み足で勝利宣言している映像に情報パネルを添付する。そのパネルは、アソシエイテッド・プレス(AP通信)との提携で制作されるグーグルの選挙特集ページにリンクが張られている。

「私たちは、報道機関の信頼性の高いコンテンツも引き続き取り上げ、不明確な選挙情報の拡散を減らしていきます」と、グーグルの広報担当アイビー・チョイは語る。「さらに、早々に勝利宣言をした特定のコンテンツが、投票について視聴者に誤解を与えたり、民主的なプロセスへの干渉を促したりしている場合は、グーグルのコミュニティ・ガイドラインに沿ってそのコンテンツを削除します」。

投票が締め切られると、すべてのグーグルの広告プラットフォーム(ユーチューブや検索エンジンを含む)において、2020年の選挙に言及している広告を停止する。それにより、グーグルのインターネット帝国でデマが広がる可能性のある別のルートが断たれるだろう。

フェイスブックもラベルに希望を託している。対策の1つとしてニュースフィードに予防的に通知を出し、そこからロイターやAP通信などの権威ある報道機関の情報が分かるようにする。虚偽のニュースに対するフェイスブックの通常の対応は、ネットワーク上での拡散を減らし、ファクトチェッカーと協力してラベルを追加するというものだ。

上記の3社以外では、ティックトックのポリシーでは、時期尚早の勝利宣言をしている投稿があまり目につかないようにする対策をとる。ティックトックは、投票日前後に、事実確認をするパートナーと一緒に「前倒しの」スケジュールでこの対策に取り組む。

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国家安全保障から個人のプライバシーまでをカバーする、サイバーセキュリティ・ジャーナリスト。
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