「科学者の声を聞く」バイデン次期大統領の新型コロナ対策が始動
バイデン次期大統領は新型コロナ対策の諮問会議を立ち上げ、「科学者や専門家の意見を聞く」方針を明確にした。 by Charlotte Jee2020.11.12
米国のジョー・バイデン次期大統領とカマラ・ハリス次期副大統領は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する諮問会議(専門家委員会)のメンバーを発表した。メンバーは13人で、元政府の保健当局トップや大物医療関係者、学術関係者が大部分を占めている。ジョージ・H・W・ブッシュおよびビル・クリントン政権で食品医薬品局(FDA)長官を務めたデービッド・ケスラー、オバマ政権で公衆衛生局長官を務めたビベック・H・マーシー、エール大学医学部のマルセラ・ヌニェス・スミス副学部長(健康公平性)の3人が共同議長に就任した。
マーシー元長官とケスラー元長官は、バイデン次期大統領のパンデミック対策に数カ月前から関わってきた。このほか、諮問会議のメンバーには、トランプ政権下で新型コロナウイルスへの対応を巡って政権を批判し、生物医学先端研究開発局(BARDA)局長を解任された免疫学者のリック・ブライトや、保健政策が専門のハーバード大学のアトゥール・ガワンデ教授らがいる。バイデン次期大統領は11月9日に発表した声明の中で次のように述べている。
「パンデミックに対処することは、私たちの政権が直面する極めて重要な戦いの1つであり、私は科学者や専門家の意見に耳を傾けます。諮問会議の意見をもとに、感染者の増加にどう対応していくのかを決めていくつもりです。ワクチンの安全性や効果を確かめ、公平かつ効率的に無料で配布することを約束します。そして、リスクのある人たちを守っていきます」。
諮問会議は何をするのだろうか? 差し当たっては、2021年1月20日の大統領就任を前に、バイデン新政権の政策と準備を導くことが仕事となる。最終目標は、バイデン次期大統領が選挙活動中に公約した政策、すなわち7項目のプランを実現することだ。7項目には、新型コロナに対する検査・追跡体制を修正し、個人用保護具(PPE)を増産し、明確な国の指針を提示し、治療とワクチンの「公正かつ効果的な」を提供することが含まれる。バイデン次期大統領は国民に対してマスク着用を義務付け、高齢者やリスクの高い成人への対策を強化していく。さらに、パンデミックへの備えや防疫を担当する機関を再構築して、新たな脅威を回避する計画だ。
控えめに言っても、諮問会議には困難な仕事が待ち受けている。新型コロナの危機は米国で急速に拡大し続けている。11月8日には、1日当たりの新規感染者が5日連続で10万人を超え、検査陽性者の合計は1000万人に達し、合計死者数は23万7000人となった。バイデン次期大統領は、パンデミックの抑制が大統領としての最重要事項だと述べている。勝利宣言後の初めての仕事の1つとして専門家チームを編成したという決断は、新型コロナ対策が次期大統領の政策課題の最上位にあるという事実を明確に示し、協調に欠けた現在の連邦政府とは一線を画すものだ。
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- シャーロット・ジー [Charlotte Jee]米国版 ニュース担当記者
- 米国版ニュースレター「ザ・ダウンロード(The Download)」を担当。政治、行政、テクノロジー分野での記者経験、テックワールド(Techworld)の編集者を経て、MITテクノロジーレビューへ。 記者活動以外に、テック系イベントにおける多様性を支援するベンチャー企業「ジェネオ(Jeneo)」の経営、定期的な講演やBBCへの出演などの活動も行なっている。