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シンガポールの接触追跡アプリが方針転換、犯罪捜査でも利用可に
Singapore Press via AP Images
Singapore’s police now have access to contact tracing data

シンガポールの接触追跡アプリが方針転換、犯罪捜査でも利用可に

シンガポール警察は、同国の接触追跡アプリで収集したデータを犯罪捜査に利用可能にすると発表した。各国で運用されている接触追跡アプリについては、プライバシーに関する懸念が以前から指摘されており、今回のシンガポール当局の姿勢に批判が集まっている。 by Mia Sato2021.01.14

シンガポール政府高官が1月4日に述べたところによると、シンガポールでは、新型コロナウイルス接触追跡システムで収集されたデータに警察がアクセスして犯罪捜査に使用できるようになる。この発表は、「トレース・トゥギャザー(TraceTogether)」アプリを2020年3月に運用開始した際に政府が説明したプライバシーポリシーに反しており、接触追跡への参加が実質的に強制となった直後に方針を変えるのは問題だとして批判されている。

プライバシーポリシーでは収集したデータは新型コロナウイルスに曝露した可能性のある人の接触追跡の目的に限って使用するとされているが、シンガポールの法律上、実際には、警察は犯罪捜査のためにはどんなデータにでもアクセス可能で、接触追跡データも例外ではないと当局者は述べた。接触追跡アプリのプライバシーポリシーは、「刑事訴訟法がどのようにしてシンガポールの管轄内ですべてのデータに適用されるか」を明確にするために、2021年1月4日に変更された

スマートフォンアプリ、または小型ウェアラブル機器で利用できるトレース・トゥギャザーは、シンガポールに住む570万人の市民の80%近くが使用している。このアプリは、2020年春に発表された主要なBluetooth接触追跡アプリのうち、最初にリリースされたものだ。世界中の他の多くの国で使われているアップルとグーグルの開発による接触追跡システムと異なり、中央集権的な方法でデータを保存する。シンガポール当局者らによると、国はより詳細な感染情報を必要として、アップルとグーグルのシステムを採用しなかった。トレース・トゥギャザーへの参加は当初、任意とされていたが、昨年のうちに政府はそれを撤回。今では、人々が働いたり、買い物をしたり、集まったりするほとんどの場所で、トレース・トゥギャザーにチェックインすることが義務付けられている。

パンデミックに対するシンガポールの取り組みはこれまで、接触追跡技術に関してだけでなく、多くの面で強引だ。例えば、公の場所でマスクを着用していないところを見つかると、高額な罰金を課される。

MITテクノロジーレビューの「コビッド・トレーシング・トラッカー(Covid Tracing Tracker)」には、新型コロナウイルスに曝露した可能性をユーザーに通知する、世界中にある数十の接触追跡アプリのプライバシーポリシーが記されている。データプライバシーに関するシンガポールの一般的な姿勢は他の国とは異なるかもしれないが、世界中の接触追跡アプリについては、2020年に最初のアプリが運用開始されて以来ずっと、ユーザーのプライバシーが疑問視されている。活動家や倫理学者らは、シンガポールの今回の発表を受けて、接触追跡アプリが収集したデータが乱用されることを懸念しており、「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(Human Rights Watch)」などの団体は、すでに疎外されているコミュニティの人権が、接触追跡アプリの監視によって、どのように、より一層損なわれるかを概説している。

学術雑誌「サイエンス(Science)」に掲載された最近のエッセイで、スイス連邦工科大学チューリッヒ校の生命倫理学者であるアレッサンドロ・ブラジミー博士とエフィー・ヴァエナ教授は、接触追跡アプリを使用する人を増やしたいのであれば、「社会的な信用を少しずつ作り上げていくこと」が重要であり、そのことが現在欠けていると述べた。

接触追跡アプリで収集したデータの使用に警察権力が関与したのは今回が初めてではない。ドイツのレストランとバー、常連客らは2020年7月に、警察が捜査で目撃者を見つけ出すために接触追跡で収集された情報を使用したと報じられた際、異議を申し立てた。2020年12月に、ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事は、警察当局と移民管理局が接触追跡データにアクセスするのを禁止する法律に署名した。ニューヨーク自由人権協会(New York Civil Liberties)、電子フロンティア財団(Electronic Frontier Foundation)、ニューヨーク移民連合(New York Immigration Coalition)などの団体が、この動きを支持している。

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MITテクノロジーレビューのパンデミック・テクノロジー・プロジェクト担当記者として、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策や追跡に使われるテクノロジーを取材。以前は非営利のテクノロジー専門ニュースサイト「ザ・マークアップ(The Markup)」でオーディエンス・エンゲージメント編集者を務めた。これまでに執筆した記事はヴァージ(The Verge)、アピール(Appeal)、シカゴ・マガジンなどに掲載されている。
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