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「富裕国は人工肉を食べよ」
ビル・ゲイツ、
気候変動問題を語る
John Keatley
気候変動/エネルギー Insider Online限定
Bill Gates: Rich nations should shift entirely to synthetic beef

「富裕国は人工肉を食べよ」
ビル・ゲイツ、
気候変動問題を語る

『How to Avoid a Climate Disaster(気候災害を避ける方法)』を出版したビル・ゲイツが、自身の気候変動に対する考え方の進化や楽観主義の限界、人工肉、温暖化対策としての植林プロジェクトの是非について語った。 by James Temple2021.02.22

ビル・ゲイツは、新著『How to Avoid a Climate Disaster(気候災害を避ける方法)』の中で、気候変動の原因となっている温室効果ガスの排出をなくすためには何が本当に必要なのかについて述べている。

10 Breakthrough Technologies
この記事はマガジン「10 Breakthrough Technologies」に収録されています。 マガジンの紹介

マイクロソフトの共同創業者で、現在はビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団の共同理事長、および投資ファンド「ブレークスルー・エネルギー・ベンチャーズ(BEV:Breakthrough Energy Ventures)」の理事長を務めるゲイツは、これまでどおりの主張を同書においても貫いている。すなわち、経済のあらゆる領域をクリーンアップし、世界の最貧地域もクリーンアップしたいという望みを少しでも実現しようと思ったら、エネルギー業界におけるブレークスルーがいくつも必要であるというのだ。実際、本書の大部分は、鉄鋼、セメント、農業といった「解決の難しい」業界における温室効果ガス排出量削減に必要なテクノロジーの概説に費やされている。

ゲイツは、イノベーションによって、あらゆる国が排出量の削減・防止をより低コストで実現できるようになり、政治的にもより実現可能性が増すと主張している。だが併せて、気候に関する同氏の処方箋が「エネルギーの奇跡」に焦点を絞りすぎており、そのために政府の積極的な政策が無駄になっているという批判に対しても答えを一部、示している。

本書の最終章では、各国が移行を加速させるための方法として、炭素価格の値上げ、クリーン電力の基準、クリーン燃料の基準、研究開発に対するこれまでよりはるかに多くの資金提供など、数多くの方法を挙げている。ゲイツは、各国政府に対し、クリーンテックに対する年間投資額を5倍にすることを求めている。これは米国では合計350億ドルという額になる。

ゲイツは自らを楽観主義者と呼んでいる。だが、それは不自然で無理のあるタイプの楽観主義だ。本書では、気候変動がどれほど対処困難な問題であるかが、1章まるごとかけて説明されている。さらに、必要なテクノロジーを開発することは可能であり、惨事を回避することは可能であると一貫して述べられてはいるものの、そうなるかどうか、どれほど望みがあるかについては明確には書かれていない。

2020年12月に、新たな著作や自らの楽観主義の限界、そして自分の気候変動に対する考え方がどのように進化していったのか、ゲイツに聞いた。

ゲイツは、個人的に、あるいは自身の投資ファンドであるBEVを通じて、以下に登場するビヨンド・ミーツ(Beyond Meats)、カーボン・エンジニアリング(Carbon Engineering)、インポシブル・フーズ(Impossible Foods)、メンフィス・ミーツ(Memphis Meats)、ピボット・バイオ(Pivot Bi)といった企業に投資をしている。なお、以下のインタビューは、発言の趣旨を明確にするため、要約・編集されている。

◆◆◆

——以前あなたは、気候変動の政策的な側面とは距離を置いているように見えました。そのため、イノベーションを重視しすぎなのではないかという批判も出てきました。考え方に変化があったのでしょうか、それとも、著書の中では政策的な側面を説明しようという、意図的な選択があったのでしょうか。

いいえ、まったく公正です。一般的には、政治的な問題に巻き込まれずにイノベーションができるのであれば、自分では常にそれに越したことはないと思っています。偉大な科学者を見つけて、複数のアプローチをバックアップする方が、自分にとっては自然なことなのです。

ですが、あなたの言葉にも一理あると思うのは、グローバルヘルスの仕事において、10年かかって徐々に気が付いてきたことがあるからです。それは、自分たちが望むようなインパクトを得るためには、援助する側の政府と、援助を受ける側の政府の両方と一緒に、とても深く協力し合わなければならないということです。プライマリ・ヘルスケア体制を実際に作るのは、援助を受ける側の政府なのですから。

最初の頃は、世間知らずな考え方をしていました。「マラリア・ワクチンを作りさえすれば、あとは他の人が心配してそれを現場に出してくれるだろう」といった考え方だったのです。明らかに、その考え方は間違っていました。下痢や肺炎など多くの病気には、実はワクチンがすでに存在することに気づいたのです。限界価格を設定したり、資金を調達したり、ワクチンの接種率を上げたりするといった課題は、科学的というよりも政治的な課題だったのです。

ここで明らかなのは、政府の政策がとても重要だということです。クリーンなスチールを例に考えてみましょう。こうしたものには、クリーンであるという以外、他に利点がありません。1トンあたりの炭素税のコストが低くなったとしても、利点として十分とは言えません。だから、クリーンなスチールについて十分な知識が得られるのに時間がかかっているのです。クリーンなスチールが利点を持つためには、1トンあたり300ドル規模の炭素税が必要になります。ですから、この業界をうまくやっていくためには、基礎的な研究開発をし、実際に購入要件や資金を持つことから始める必要があります。あるいは、そうした割り増し分を支払うために資金を蓄えておくのです。購入要件も資金も、政府から獲得しますが、企業や個人を組み合わせるのも手だと思います。

しかし、これには多くの国に関わってもらう必要があります。2、3カ国ではだめなのです。

——本当の意味で政治的に進歩を遂げる可能性については、どう感じていますか?特に米国において、自分たち自身がこういう状況にいる中ではどうでしょう。

自分は楽観的に見ています。バイデンが大統領に選ばれたのはよいことです。それよりもっと心強いことは、若い世代、ミレニアル世代の有権者を対象とした世論調査では、共和党支持を自称する人、民主党支持を自称する人の両方で、気候変動問題に対する関心が非常に高いということです。世界がこの問題に大いに苦しむ …

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