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エディターズ・レター:「進歩」とは何を意味するのか?
Ian Allen
What progress means

エディターズ・レター:「進歩」とは何を意味するのか?

新型コロナのパンデミックが続く中、恒例の「ブレークスルー・テクノロジー10」の2021年版を発表するにあたって考えたのは、「進歩とは何か?」をより深く考えてみる必要があるのではないか、ということだ。米国版編集長からのエディターズ・レター。 by Gideon Lichfield2021.05.04

「進歩」。私たちは当たり前のように、これを良いことだと捉えている。絶えずこの言葉を引き合いに出し、変化を正当化している。ただ、経済から健康や教育に関する指標、そして政治的発展や技術の高度さを示す指標に至るまで、社会について測定する方法がさまざまある中で、私たちはそのすべての方法において、「これが進歩というものだ」という長年の思い込みに依存してしまっている。今世紀に入ってから発生した経済的・政治的ショックで明らかになったように、進歩から排除されている、あるいは排除されていると感じている人たちが増えている。そうした人たちは、進歩とはすべての人に恩恵を与えるものと聞かされてきた。加えて、従来の尺度で進歩を測った場合に最高点を出している国の多くが、新型コロナのパンデミック対応では最悪の結果を出している。これらの兆候からはっきりと分かるのは、従来の進歩の尺度には何かが欠けているのではないか? ということだ。

今回の特集では、世界を変える技術的ブレークスルー(ブレークスルー・テクノロジー10)のリストを掲載している。言い換えれば、私たちが予測する進歩の代表的な例であり、さらなる進歩につながると言えるものだ。毎年恒例のブレークスルー・テクノロジー10の開始から20年目を迎えるにあたり、私は「進歩とは何か?」ということを、より深く考えてみる必要があるのではないかと考えた。

まず、議論の舞台を用意したのがデビッド・ロットマンだ。ロットマンは2001年以降に起きたテクノロジーの変化を振り返り、人々にとってより重要なことをより適切に把握できる新たな進歩の尺度を生み出そうとする経済学者たちの試みについて概説している。そこから導かれた結論は意外なものだった。次の10年について楽観的になれる理由があるとしても、最新テクノロジーのおかげではないという。むしろ、進歩を計測する方法についてのより衡平なアイデアのおかげであり、それは進歩を適切に使うためのよりよい指針となるだろう、という。

多くの人にとってはこうした変化が起きても、もう遅すぎるかもしれない。スージー・ケーグルは、米国資本主義が約束した進歩がいかに「私たちの(ミレニアル)世代で止まってしまっている」のか、事態が今後悪化へと向かっているようなのはなぜなのか、そして自分の生まれたばかりの子どもにとってそれが何を意味するのかについて考察している。ブライアン・アレクサンダーは、過去数十年間の進歩から取り残されてしまった、米国の孤立地帯について書いている。チェルシー・シーズレイは、デジタル格差にパンデミックが重なった結果、白人と有色人種間の経済格差が今後数年にわたってさらに拡大する可能性があるとして、その可能性について考察している。

そのほか、エイミー・ノードラムはさまざまな分野の人々に「自分にとって進歩とは何か」と質問し、ジェームズ・テンプルは専門家を対象に「気候変動対策における最善の方法をひとつだけ挙げてほしい」との質問を投げかけている。デビッド・ヴィンティナーは、見る者が時折不安になるようなバイオハッカーや身体拡張の研究者の写真と共に、サイボーグ人間は進歩の一形態なのか、それとも進歩からの逸脱なのか、との疑問を投げかけている。

さらに、進歩がいかに「前進している」かについて、社会でまかり通っている通説についてもいくつか取り上げている。カール・ベネディクト・フレイは、進歩の先駆者として誕生した巨大テック企業が、逆に進歩の障害となってしまった事情について検証している。ジョン・マルコフは、シリコンバレーといったテクノロジーハブの台頭は偶然な幸運に負うところが大きい、と論じている(シリコンバレー信者は認めたがらないかもしれないが)。アダム・ピオル
は、成功していいはずのすばらしいアイデアが時として行き詰まってしまうのはなぜなのか? そして新型コロナ危機のような危機が行き詰まりを打破する可能性について検証している。J・ベンジャミン・ハールバットは、「クリスパー(CRISPR)ベビー」の生みの親であるフー・ジェンクイ(賀建奎)は科学者としてならず者だったという見解が誤りであることを証明し、フーの野心は科学の進歩の一形態を代表するものなのだと主張する。リア・ストークスは、気候変動と闘うためにはもっとテクノロジーが必要だという考え方に疑問を呈している。

そしていよいよ最後に、「ブレークスルー・テクノロジー10」を紹介する。いつものように、このリストには3つのことが当てはまる。まず、多岐にわたる、さまざまな要素を含んでいるということ。また、リストに挙げられている技術革新には、現在明らかにインパクトを与えているもあれば、まだインパクトを与えていないものもあるということ。そして、その多くが、良いことだけでなく悪いことにつながる可能性も秘めている、ということだ。リストに挙げられたテクノロジーが20年後に進歩を代表するものになるかどうかは、それらがどのように使われるかにかかっている。そしてもちろんその時までに、私たちが進歩をどう定義しているかにもよるだろう。

 

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ギデオン・リッチフィールド [Gideon Lichfield]米国版 元編集長
MITテクノロジーレビュー[米国版]編集長(2017年12月〜2021年3月)。科学とテクノロジーは私の初恋の相手であり、ジャーナリストとしての最初の担当分野でもありましたが、ここ20年近くは他の分野に携わってきました。まずエコノミスト誌でラテンアメリカ、旧ソ連、イスラエル・パレスチナ関係を担当し、その後ニューヨークでデジタルメディアを扱い、21世紀のビジネスニュースを取り上げるWebメディア「クオーツ(Quartz)」の立ち上げにも携わりました。世界の機能不全を目の当たりにしてきて、より良い世の中を作るためにどのようにテクノロジーを利用できるか、また時にそれがなぜ悪い結果を招いてしまうのかについても常に興味を持っています。私の使命は、MITテクノロジーレビューが、エマージングテクノロジーやその影響、またそうした影響を生み出す人間の選択を模索するための、主導的な声になることです。
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MITテクノロジーレビューの記者と編集者は、未来を形作るエマージング・テクノロジーについて常に議論している。年に一度、私たちは現状を確認し、その見通しを読者に共有する。以下に挙げるのは、良くも悪くも今後数年間で進歩を促し、あるいは大きな変化を引き起こすと本誌が考えるテクノロジーである。

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