KADOKAWA Technology Review
×
脳デバイスで卓球をプレイ、麻痺男性がE・マスクのサルに挑戦状
Ms Tech | Getty, Pixabay
人間とテクノロジー Insider Online限定
A paralyzed man is challenging Neuralink’s monkey to a match of brain Pong

脳デバイスで卓球をプレイ、麻痺男性がE・マスクのサルに挑戦状

イーロン・マスク率いるニューラリンクが、最新の脳コンピューター・インターフェイスを使ってビデオゲームをするサルの動画を公開したのを受けて、別の脳インターフェイスを使用中の男性が試合を申し込むことを発表した。 by Antonio Regalado2021.05.18

頭の中の信号によってコンピューターを操作できる脳インプラントを装着したある男性は、脳コンピューター・インターフェイス(BCI)の開発を進めるイーロン・マスクの企業、ニューラリンク(Neuralink)に挑戦する準備ができているという。ニューラリンクが実験に使用しているサルを相手にした「ポン(Pong)」ゲーム(ピンポンを模したビデオゲーム)の1対1対戦である。

ニューラリンクは、人間の脳をコンピューター・ネットワークに直接接続する先進的な無線式の脳インプラントを開発している。4月、同社の研究チームは、ペイジャー(Pager)という名前のアカゲザルの動画を披露した。ペイジャーは、思考する際の信号を使って、古典的なラケットゲームである卓球をプレイできる。ニューラリンクが公開した「マインドポン(MindPong)」をプレイするサルの動画は、億万長者マスクの最新の驚異的偉業として信奉者から称賛を得た。

「動画を見てすぐに、『あのサルに勝てるだろうか』と思いました」。6年前、ニューラリンクとは別の種類の脳インプラント手術を受けたネイザン・コープランドは話す。コープランドはその脳インプラントを使用して定期的にビデオゲームをプレイしている。

コープランドは自動車事故で怪我をし、今は歩くことも指を動かすこともできない。肩を動かすことはでき、拳の側面でタイプすることでコンピューターやトラックパッドを操作できる。つまり、コープランドは脳インターフェイスに完全に頼っているというわけではない。だが、「自分の思考でプレイするのは本当に楽しいですけどね」と言う。

コープランドは、ニューラリンクのサルに対し、ポンの「異種生物間の初対決」を挑む準備ができていると語る。

「私たちはすでに準備しており、練習を開始しています」とコープランドは言う。彼は今週、ポンを思考信号で初めてプレイした。

ゲームスタート!

ヒト対サルの思考試合は、科学の進歩にはほとんど関係がない。重度に麻痺した人々に対し、どんなニーズや要望であっても、より自由にコンピューターとインターネットを利用できるようにする脳インターフェイスの展望を示そうとしているのだ。

ポンの試合はオンラインで開催され、ゲーマー向けストリーミング配信サービスである「ツイッチ(Twitch)」で放送されるかもしれない。コープランドはツイッチにプロフィールを持っており、何千人ものフォロワーを持つスターになるという空想にふけることもある。

ニューラリンクの先月のブログ投稿で説明されたように、同社の脳インプラントの初期目標は、「体が麻痺している人々にデジタルの自由を取り戻させる」ことだ。「テキストを介してより簡単にコミュニケーションを取れるようにし、Web上で好奇心を追いかけ、写真や芸術を通して創造性を発揮し、そしてもちろんビデオゲームをプレイできるようにする」ことである。

コープランドはすでに、頭 …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. A long-abandoned US nuclear technology is making a comeback in China 中国でトリウム原子炉が稼働、見直される過去のアイデア
  2. Here’s why we need to start thinking of AI as “normal” AIは「普通」の技術、プリンストン大のつまらない提言の背景
  3. AI companions are the final stage of digital addiction, and lawmakers are taking aim SNS超える中毒性、「AIコンパニオン」に安全対策求める声
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る