KADOKAWA Technology Review
×
Innovators Under 35 Japan 2026 候補者募集開始!
鉱物でCO2を除去するスタートアップが資金調達 買い手も決まる
Photo by Arns Civray on Unsplash
気候変動/エネルギー Insider Online限定
A startup using minerals to draw down CO2 has scored funding – and its first buyer

鉱物でCO2を除去するスタートアップが資金調達 買い手も決まる

エアルーム・カーボン・テクノロジーズは、大気中の二酸化炭素除去に鉱物を応用する技術を開発している。現在のところ、この技術を利用するには高いコストがかかるが、最終的には1トンあたり50ドルで二酸化炭素を除去できるという。目標は、2035年までに年間10億トンの二酸化炭素を除去することだ。 by James Temple2021.06.01

鉱物(ミネラル)を利用して空気中から二酸化炭素を除去するスタートアップ企業が登場した。気候変動を遅らせるために、「風化促進法(enhanced weathering)」と呼ばれる手法を展開する最初期の商業的取り組みのうちの一つだ。

脱炭素イノベーション
この記事はマガジン「脱炭素イノベーション」に収録されています。 マガジンの紹介

「エアルーム・カーボン・テクノロジーズ(Heirloom Carbon Technologies)」は、同社の技術が商業規模にまで成長すれば、1トン当たり50ドルで二酸化炭素(CO2)を大気から除去できるという。この価格は、他の産業的手法の見積もりをはるかに下回る。同社の目標は、気候変動を激化させる主要な温室効果ガスを2035年までに10億トン除去することだ。

サンフランシスコを拠点とする同社は、5月26日、ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ(Breakthrough Energy Ventures)、ローワーカーボン・キャピタル(Lowercarbon Capital)、プレリュード・ベンチャーズ(Prelude Ventures)などの主要投資家から非公開のシードマネー(創業資金)を調達したと発表した(業界筋によると、調達額は数百万ドル規模だという)。

さらに、炭素除去実証プロジェクトに資金提供してきた決済代行会社のストライプ(Stripe)は、エアルーム・カーボン・テクノロジーズに250トン弱の二酸化炭素を除去してもらう計画を発表する予定だ。価格は1トンあたり2054ドルを予定している。

二酸化炭素の除去と再利用を提唱する調査会社「カーボン180」のノア・ダイチ社長によると、エアルーム・カーボン・テクノロジーズは二酸化炭素除去分野の中心的な難題に対処する助けとなる可能性があるという。難題とは、二酸化炭素除去技術がコストがかかりすぎるか、あるいは信頼性や耐久性に疑問符が付くというものだ。「クライムワークス(Climeworks)」や「カーボン・エンジニアリング(Carbon Engineering)」などの企業が採用する直接空気回収(direct air-capture)のような技術的手法は二酸化炭素を完全にしまい込むことができるが、コストがかかり過ぎる。一方、土壌や森林によるオフセットのように自然を利用する解決策もある。この手法は安価で利用できるが、二酸化炭素除去能力にはしばしば信頼性と耐久性の面で疑問が残る。エアルーム・カーボン・テクノロジーズがコスト目標を達成できれば、同社は比較的手頃な価格で恒久的に二酸化炭素除去サービスを提供できるはずだ、とダイチ社長は指摘する(エアルーム・カーボン・テクノロジーズのシャシャンク・サマラCEO=最高経営責任者は、カーボン180のEIRフェローシップ・プログラム(駐在起業家奨励制度)に参加している)。

ただ、このテクノロジーは初期段階にあり、エアルーム・カーボン・テクノロジーズは技術的難題に加え、市場における課題に直面するだろう。例えばストライプのように、今後何年にもわたって二酸化炭素除去に高額な費用を支払うことを厭わない顧客を見つけなければならない。

二酸化炭素除去に鉱物を利用

この事業が注目を集めている理由の一つとして同社の二酸化炭素除去の技術が、昨年発表されたネイチャーコミュニケーションズ誌の論文に掲載された点を挙げることができる。この技術は、鉱物を使用して二酸化炭素を捕捉、貯蔵する方法を研究している著名な研究者たちが開発したもので、論文の執筆者にはブリティッシュコロンビア大学のグレッグ・ディプル教授や、バイデン政権で化石エネルギー部主席副次官補を務めるペンシルベニア大学のジェニファー・ウィルコックス教授が名を連ねている。筆頭執筆者は、ノア・マックイーン。ウィルコックス教授の下で学ぶ大学院生であり、現在エアルーム・カーボン・テクノロジーズの研究責任者だ。

2018年の調査によると、2℃の温暖化を防ぐには、2050年までに年間100億トン、2100年までに年間200億トンの二酸化炭素を大気から除去する必要がある …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. It’s time to address the looming crisis in entry-level work. 「コーディングを学べ」もう通用せず、AIが若者の雇用を奪い始めた
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2026 「Innovators Under 35 Japan」2026年度候補者募集のお知らせ
  3. Anthropic’s Code with Claude showed off coding’s future—whether you like it or not 「Claudeに任せてしまおう」 たった1年で激変したソフトウェア開発
▼Promotion
社会実装都市「ひろしま」の魅力に迫る ローカル ✕ イノベーション
MITテクノロジーレビューが選んだ、AIの10大潮流 [2026年版]

AIをめぐる喧騒の中で、本当に目を向けるべきものは何か。この問いに対する答えとして、MITテクノロジーレビューはAIの重要なアイデア、潮流、新たな進展を整理したリストを発表する。

特集ページへ
MITテクノロジーレビューが選んだ、 世界を変える10大技術

MITテクノロジーレビューの記者と編集者は、未来を形作るエマージング・テクノロジーについて常に議論している。年に一度、私たちは現状を確認し、その見通しを読者に共有する。以下に挙げるのは、良くも悪くも今後数年間で進歩を促し、あるいは大きな変化を引き起こすと本誌が考えるテクノロジーである。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る