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COP26開幕も、
「国連任せ」には限界
気候対策を加速する方法
AP Photo/Kirsty Wigglesworth
気候変動/エネルギー Insider Online限定
The Glasgow climate talks will fall short. Here are other ways to accelerate progress.

COP26開幕も、
「国連任せ」には限界
気候対策を加速する方法

グラスゴーでの国連気候会議(COP26)が開幕した。これまで国連は気候変動対策としてパリ協定をまとめるなど、一定の役割は果たしてきた。しかしグラスゴーでの会議で何が決まろうとも、気候変動がさらに進むことは確実だ。 by James Temple2021.11.04

数千人規模の各国代表団がスコットランド・グラスゴーに集う国連気候会議(COP26)が10月31日に始まった。2週間にわたって、やるべきことが並んだ長大なリストについて激しい議論を繰り広げるわけだが、最終的には1つの疑問に行き着く。「今世紀の危機的な地球温暖化を避けるために世界はどれほど早く行動できるのか?」という疑問だ。

これまでの歴史を振り返ってみると、行動のペースが大きく早まることは期待できそうにない。

国連の気候会議は過去30年間で25回も開かれてきた。だが、経済が停滞した時の数回の落ち込みを除いて、温室効果ガスの世界的な排出量は増え続けている。2021年には気候汚染の反動が大きく表れ、2019年のピーク時近くまで悪化すると予測されている。パンデミックからの経済の急回復が原因だ。

記念すべきパリ協定が採択されてから6年が経つ。パリ協定では「今世紀末の気温上昇を2℃未満に抑え、なおかつ可能なら1.5℃に抑える」との目標が宣言された。だが、各国は目標達成に必要なレベルまで排出量を減らす政策を約束しておらず、制定もしていない。富裕国は、途上国の気候変動対策を支援するために年間1000億ドル拠出することで合意したが、現状では数百億ドルも不足している。

10月26日に発表された国連環境計画(UNEP)の『排出量ギャップ報告書(Emissions Gap Report)』によると、パリ協定が定める緩やかな2030年目標に従っても、今世紀末には世界の気温は約2.7℃上昇してしまう。各国が国内ですでに実施している気候政策を進めるだけでは、上昇気温は3℃を超える可能性もある。

世界の気温が3℃上昇すると、まずサンゴ礁が姿を消し、氷床が崩れ始める。また、100年に一度の規模の干ばつが世界の広い範囲で数年ごとに起こる。そして、海面上昇により数億人が移住を余儀なくされる。これらは、すでにさまざまな研究によって示されていることだ。

「世界の大部分の人々が安全で住みやすい気候の維持を目指しているとすれば、成績はFマイナスです」。トロント大学で政治科学を研究し、特に気候統治を専門とするジェシカ・グリーン准教授は語る。「そうした目標には届いていないどころか、近いところにすらいません」。

政治力や国際的な優位性、国内成長などを考慮した地政学上の短期的な計算で考えれば、気候変動対策に進展が見られないことは驚くべきことではない。

京都議定書からパリ協定に至るまで、ほぼすべての国を網羅する条約は、どれも骨抜きになるしかなく、要求のハードルも下がってしまう。2015年のパリ協定は、排出目標を各国が自ら設定できる自主的なもので、拘束力はない。野心的な目標を設定しない国や、達成できなかった国は、国際的な批判を受けるだろうが、実際の罰則はない。

各国のリーダーや国民は、数十年後に得られるであろう恩恵を得るために、いま自発的な行動が求められている。この恩恵は、他国が目標を達成しなかったときは手にすることができない。一連の気候条約では、富裕国に比べてわずかしか温暖化ガスを排出していない貧困国に対しても、成長の抑制を要求している。エネルギーの利用を控え、生活の質をあまり上げないように求めているのだ。しかも富裕国が支援するという約束は曖昧で、責任も伴っていない。

世界のリーダーや交渉官がグラスゴーに集結する中、パリ協定の機運が再度高まり、信頼性を取り戻すことを期待する声も多数聞かれる。しかし同時に、緩やかな国際的な枠組みでは大幅な排出量削減は絶対的に不可能であり、より野心的な他のモデルから目をそらすだけだ、と考える向きも増えてきている。

どちらが正しいかは、やがて分かるだろう。米国のジョン・ケリー気候特使が先日、BBCで語ったように、国連気候会議は「世界が力を合わせる最良にして最後の希望」なのだ。

現実直視を

確かに、世界は気候変動に関して一定の進展を見せている。以前よりも多くの国が石炭燃料の使用を止め、コスト競争力の高い再生可能エネルギーや電気自動車を使用するようになった。世界の排出量は少なくとも平坦化しているように見え、数年前に言われていたような、おおむね4℃以上の温暖化という最悪の事態を回避できる可能性が見えてきている。

だが、極めて危険なシナリオはいまだ残っており、各国は今後、気候変動対策をさらに加速する必要がある。グラスゴーでの会議は、それを目指す上での国際的な決意が試される場となるだろう。ほとんどの国は、パリ協定で定めた目標を今年初めて引き上げることになっているからだ。

今年4月、米国のバイデン大統領は、排出量を2025年までに2005年比で26~28%削減するという従来の目標を引き上げ、2030年までに50~52%削減するとの新しい目標を設定した。今夏には欧州連合(EU)も「欧州気候法」を正式に成立させた。EU加盟国には2030年までに55%の排出削減が義務付けられ、2050年までに「気候中立」を目指すとしている。

独立系科学調査グループ「クライメート・アクション・トラッカー(Climate Action Tracker)」によると、9月半ば時点で、合計90近くの国とEU加盟国が国連のプロセスの一環として新たな2030年目標を提出した。だが、未提出の国がまだ70カ国以上残っている状況だ。

ロシアのウラジミール・プーチン大統領は、2060年までのカーボン・ニュートラル達成を公約した。今世紀半ば頃までに、少なくとも主要な温室効果ガスの排出をゼロにすると約束した100以上の国の仲間入りを果たしたことになる。中国もかつては同じ2060年目標を掲げていたが、最近では海外での石炭火力施 …

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