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露 ウクライナ侵攻で広がるデマ、片棒を担がないためには?
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How to avoid sharing bad information about Russia's invasion of Ukraine

露 ウクライナ侵攻で広がるデマ、片棒を担がないためには?

ロシアのウクライナ侵攻に伴い、ソーシャルメディア上では真偽不明の大量のニュースが飛び交っている。不用意な情報の拡散はたとえ善意であっても被害をもたらす可能性がある。 by Abby Ohlheiser2022.03.01

2月23日にロシアがウクライナへ侵攻したことを受け、ネット上では次々と情報が伝えられている。写真や映像をはじめとする情報が、真偽の確認ができないほどの猛烈なペースで、各プラットフォームに投稿され、それらが再共有されているのだ。このような現象は、世界各地で何らかの危機が発生するたびに、最近ますます見られるようになっている。

その結果、誤った情報が真実であるかのように受け止められ、増幅されてしまう。善意の人々がそれに加担してしまうこともある。悪意ある行為者たちは、こうした状況を利用して、罪のない民間人に恐怖を味わわせたり、不穏なイデオロギーを広めたりするかもしれない。そうなれば、実際に苦しむ人が出てしまう。

ウクライナ侵攻の正当化を試みてきたロシア政府にとっては、偽情報の流布はその大きな手段となり、あからさまな形で実行されている。ロシアは、親ロシアの分離派が多いウクライナ南東のドンバス地域で、ウクライナ軍が激しい攻撃を計画し、分離派を標的とした砲撃や大量虐殺をしていると主張した。この主張は誤りだ。でっち上げられた攻撃のフェイク映像は、ロシア国内のプロパガンダ作戦で大きく取り上げられている(これを受けて米国政府は、こうした嘘を暴き、先手を打ってそもそも嘘を流布できない状況にしようと取り組んでいる)。

しかし、政府による活動に関わっていない一般人であっても、今回の侵攻に関して不正確な情報、誤解を招く情報、または誤った情報を意図的に共有してしまう可能性がある。イデオロギー上のナラティブを主張しようと、もしくは閲覧数を上げようとして共有するのだ。しかし、共有したことでどのような悪影響があるのかまではほとんど考えていない。戦争という混乱した状況の中では、意図せず誤って伝えられてしまった情報が、正しい情報として一気に拡散される場合もある。

すでに、ロシアによる侵攻に関する不正確な情報が、ソーシャルメディア・プラットフォーム上で多くの人々の目に触れる状況になってしまっている。ソーシャルメディア・プラットフォームは根本的に、エンゲージメント(いいね!やシェア)を得られるコンテンツを、多くの人に表示するよう設計されているのだ。

ティックトック(TikTok)では、訓練の模様を収めた2016年の映像が、あたかも現在ロシア兵がウクライナにパラシュートで降下しているかのような誤った印象を与える目的で共有された。再生回数は数百万回にも達した。ある声明は誤訳された状態でツイッターで大きく拡散され、複数のジャーナリストが共有してしまった。これによって、チェルノブイリ周辺での戦闘で原子力廃棄物貯蔵施設に被害が生じたという誤った情報が広がってしまった(本来の声明は、戦闘によって原子力廃棄物に被害が生じる可能性がある警告する内容だった)。

悲惨な出来事に関してニュース速報が次々と舞い込んできたり、拡散されたりしている。こうした投稿を目の当たりにした人々はしばしば、有害なプロパガンダおよび偽情報をそうとは知らずに増幅してしまう。意図せず悪意ある行為者たちの手助けをしてしまう状況を避けたければ、本記事を参考にしてほしい。

MITテクノロジーレビューではこれまでも、ここに挙げたようなアドバイスをいくつか掲載してきた。具体的には、2020年のブラック・ライヴズ・マターの抗議活動の際、そして同年秋の米国の大統領選挙前だ。以下は、ウクライナからのニュースを扱うにあたって具体的に気をつけなければならない点を反映し、以前に掲載したアドバイスを更新および補足したものだ。

重要なのは、一人ひとりが注意力を発揮すること

まず、一人ひとりのネット上での行動が大きな影響を持ってしまうことをしっかりと理解してほしい。「自分はインフルエンサーではないから、自分は政治家ではないから、自分はジャーナリストではないからと、自分の(ネット上での)行動はたいしたことがないと人々は考えがちです」と、シラキュース大学でコミュニケーションと修辞学を研究するホイットニー・フィリップス助教授は2020年に語っている。しかし、一人ひとりの行動は、実は重要なのだ。疑わしい情報を共有してしまうと、たとえ共有相手がわずか数人の友達や家族であったとしても、その情報がさらに拡散される原因につながる可能性がある。

怒りに任せた引用ツイートや返信に気をつけよう

緊急ニュースになるような事態が発生すると、人々は、良心からそれに異を唱えて批判しようと、ソーシャルメディアの投稿を引用したり、ツイートしたり、共有したり、返信したりすることがある。ツイッターとフェイスブックは、偽情報の流布と戦うために、新たなルール、モデレーション戦略、そして事実確認に関する規定を導入した。しかし、どのような形であれ、人々が偽情報に対して反応してしまうと、拡散を防ぎたいコンテンツを逆に増幅させてしまう危険がある。なぜなら、反応を起こすことで、プラットフォームに対してそのコンテンツに関心を持ったというシグナルを与えてしまうからだ。不正確であるとわかっている投稿があれば、それに反応するのではなく、フラグを立てて投稿先のプラットフォームが審査できるようにしてみよう。

一旦立ち止まろう

デジタルリテラシーの専門家であるマイク・コールフィールドは、ネット上の情報の真偽を確認する方法として、「シフト(SIFT、「ふるい」という意味)」を提唱している。これは、「Stop(一旦立ち止まって考えよう)、Investigate the source(ソースを調査しよう)、Find better coverage(よりよい報道を見つけよう)、Trace claims, quotes, and media to the original context(主張、引用、およびメディアファイルをオリジナルの文脈まで辿ろう)」の頭文字をつなげたものだ。コールフィールドは、ウクライナのニュースに関しては、「Stop」に重点を置くべきだと言う。つまり、表示された投稿に反応したり投稿を共有したりする前に、立ち止まって考えようということだ。

コールフィールドは、「周囲の人々に対して真っ先に自分がその話を共有することで、自分がそのニュースを教えてあげたことにしたいという衝動に駆られるのは、人間なら仕方がないことです」と言う。ジャーナリストは日々、その衝動に気をつけている。しかし、これは誰しもが気をつけなければならないポイントだ。現在のように、情報が次々と舞い込んでくる状況であれば、なおさらだ。

デジタルアナリストでデマを研究しているシャイリーン・ミッチェルは、ウクライナに関するニュースに触れて何らかの行動をしたいのであれば、「自分たちの身に起こっていることについて、ウクライナ現地から伝えてくれる人々をフォローするべきです」と言う。

しかし、ウクライナ発に見える情報だからといって、むやみにリツイートしてはならない。身元がはっきりしている本物のアカウントからの情報だけを共有しよう。ジャーナリストたちは、ロシア軍の動きが写っていると思われるティックトック動画の真偽の検証をし、自身の身に起こっていることをウクライナから伝えているように思われる人物からのツイートを共有している。

それでも、細心の注意が必要だと専門家は言う。デマを研究するケイト・スターバードは、ツイッターに優れたスレッドを投稿し、今回の侵攻に関するソーシャルメディアの投稿をいかに精査すべきかを指南している。その中でスターバードは、現在の状況下では、信頼できる周囲の人々でさえ「大急ぎのため、もしかするとそれほどきちんとは精査ができていない」可能性があると指摘している。

スターバードは、偽物かもしれないアカウントを見抜くためのいくつかのポイントを紹介している。

自分にできる役割をこなそう

この記事をお読みの方は、おそらくニュース速報記者でなければ、ウクライナとロシアの関係の専門家でもないだろう。専門家は、今このタイミングで専門家ではない人が専門家のように振る舞おうとして、ネット上で見つけた情報の真偽を自分で判断して拡散するのは避けるべきだと指摘する。自身が見かけた情報の真偽を確認しようとするのは常に良いことだが、新たな情報や説を実際に周囲の人々に対して共有するかどうかは慎重に考えてほしい。

ミッチェルは、インターネット上で「人々は自分で調べられるようになったと考えがちです」と言う。ソーシャルメディアでデマやその他の不正確な情報が拡散されている事実が注目されることで、人々はますますこう思ってしまう。「調べる力が少しはついたと考えているので、今回の動きでも自分で調べられるはずだと考えてしまうのです」。こうした考えは必ずしも正しいわけではない。さらに、悪意ある行為者たちはこれまでも、「自分で調べたい」という衝動につけ込んできた前例が多く判明している。この衝動につけ込んで、蜘蛛の巣のように張り巡らせたデマに人々をおびき寄せようとしてきたのだ。

あなたにできる最善のことは、足場となる現実をしっかりと把握することだ。

コールフィールドは、英語話者がウクライナからのニュースをリアルタイムで事実確認しようとする場合、「正直なところ、言葉の壁は大きな問題です」と言う。「映像の場所がどこかもわからず、喋っている言語が理解できない状態」なら、その映像を慎重に調べても何が本当かはわかるはずがないと語る。

共有する前に、自分自身に問いかけてみてほしい。話されている言語を自分で翻訳できるか? それまでに触れたことのないソースからの映像および写真について、調査や分析をするだけのスキルがあるか? 市民によるジャーナリズムはしばしば非常に深い価値を持つが、正しく実行するには相当のスキルとトレーニングが必要だ。自分には何ができるのか? なぜ自分にはそれができると言えるのか? 現実的に考えてみよう。

誤った話を拡散してしまうと、実際に悪影響を及ぼすという事実を、いま一度肝に銘じよう。現在進行中の状況に関して、誤った情報や誤解を招く情報を共有してしまうと、人々を傷けたり死に追い込んだりする原因になる可能性がある。

その代わりに、正確な情報を拡散して、信頼できるソースからの情報を増幅しよう

このような状況下では、自分の正気を保つためにも、インターネットで自分の情報に耳を傾ける人々のためにも、足場となる現実をしっかりと把握することが大切な対策だ。英語で信頼できる報道をしているのはどのソースだろうか。誰をフォローして拡散を手助けすれば、正確な情報を広められるだろうか。

自身もウクライナ人で、誤情報に関する報道に携わった経験もあるジェーン・リトビネンコのようなジャーナリストは、ウクライナの慈善活動やニュースメディアを支援したい人向けにまとめた情報を共有し、今回の侵攻を正しく捉えるために欠かせない背景情報も発信している。その他のジャーナリストの間でも、避けるべきプロパガンダまみれのニュースメディアおよびソーシャルメディアのアカウントを、クラウドソーシングで一覧化する動きが出ている。べリングキャット(Bellingcat)のサイトでは、虚偽であることが判明した主張をスプレッドシートで公開して随時更新している。現地ニュースメディアのキエフ・インディペンデント(Kyiv Independent)は、ツイッターでコンスタントに最新情報を配信している。

コールフィールドは、「あなたの役割は、ニュース記者よりも先に友だちにニュースを伝えることではないかもしれません」と言う。真っ先にニュースを伝えるのは、その道の大勢のプロのすべき仕事だ。「この状況における一般の人の役割とは、事態を説明してくれる信頼の置ける情報源を見つけたり、ロシアが2014年にクリミアでいかに偽情報を流したかに関する背景情報を人々に伝えることなのかもしれません」。

不正確なことを伝えてしまったら、きちんと訂正しよう

偽情報を見分ける専門家であっても、偽情報を共有してしまう可能性はある。自分がどのような立場にあり、どの規模のプラットフォームに共有するかに関係なく、現在進行形の状況に関して情報を共有するのなら、間違っていた場合には責任を取って訂正し、その影響と向き合う準備をしておかなければならない。

ミッチェルもコールフィールドも、この点に関しては似たようなベスト・プラクティスを推奨している。ツイッターで不正確な情報を共有してしまったら、不正確なツイートのスクリーンショットを撮り、不正確な情報への返信または引用ツイートという形で訂正を投稿し、その後、偽情報を含むツイートを削除するという手順だ。

ティックトックの場合は仕組みが異なるが、考え方は同様だ。偽情報を削除し、どうしてその映像が削除されたのかを述べ、修正したものを投稿し、フォロワーに対して修正後の情報を共有するよう促すという手順だ。

ミッチェルは、誰であれ、自分が不正確な情報を共有してしまった場合には、その情報を再共有した人々に連絡を取って訂正するくらいの対応をして、その責任を取る準備をしておくべきだと付け加える。

ログオフも考えてみよう

世界が一大事で、悲惨なことが起きている場合、目を背けたり沈黙したりすると、非情な人間になったように感じられてしまうこともある。しかしそれは違う。ひたすらスクロールして悲観的な情報を読み続ける行為(ドゥーム・スクローリング)はやめよう。

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アビー・オルハイザー [Abby Ohlheiser]米国版 デジタル・カルチャー担当上級編集者
インターネット・カルチャーを中心に取材。前職は、ワシントン・ポスト紙でデジタルライフを取材し、アトランティック・ワイヤー紙でスタッフ・ライター務めた。
日本発「世界を変える」35歳未満のイノベーター

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