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専門家に聞く、ネットのデマから今すぐ身を守る方法
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How to protect yourself online from misinformation right now

専門家に聞く、ネットのデマから今すぐ身を守る方法

インターネットには現実に害をおよぼす可能性があるデマが溢れている。ネットの危険から身を守る方法について、デマとメンタルヘルスの専門家に話を聞いた。 by Abby Ohlheiser2020.06.11

ワシントンDCでの5月31日の通信途絶は起きなかった。だが、それでもハッシュタグ「#dcblackout」はツイッター上でトレンドとなった。 不思議なことに、ワシントンDCから一切メッセージが発信されていないとの複数のツイートがあり、人々が不安になったのだ。「通信途絶」に関するツイートや、レディット(Reddit)の投稿、フェイスブックのメッセージは大量に共有された。それは情報を広く拡散させようとする呼びかけと、抗議活動をする人たちに次に何が起こり得るかをほのめかす不吉な警告によって加速された。

しかし私は、通信途絶は無かったと言い切れる。私はワシントン在住で、不安になった友人たちに、自分のインターネットは正常に機能していると伝えて安心させねばならなかったからだ。それにもかかわらず、6月1日にこのハッシュタグは何時間もトレンド上位に表示された。このツイートの真偽を問う人や、誤りを暴こうする試みを却下する人もいたが、なぜこの噂がこんなに広く拡散されたかについては、誰一人として明確に理解できていない

害をおよぼす可能性があるデマがインターネットに拡散されることへの合理的な対応は、その虚偽性を証明し、だまされないよう人々に情報を伝えることである。 しかし、世界的なパンデミックのさなか、そして警察の暴行に抗議している人々に対して警察が強硬な態度をエスカレートさせているという心的外傷を負いつつ、おびただしい量の情報を評価するのは困難だ。

「危険なことだらけです。危機があるたびに経験する同じ反応を今回も実践しているのです」。シラキュース大学のホイットニー・フィリップス助教授(コミュニケーション)は話す。「人々は条件反射的にリツイートして」、危機のさなかに個人的な経験を呼び起こすものを共有したり、他者の声を増幅したりするのだという。「人助けをしているように感じるのです」。しかし、こうした衝動が害を与えることにつながりかねない。共有している内容が誤解を招くものや虚偽であればなおさらだ。

オンラインの有害なデマとメンタルヘルスの関係についての記事を書いているフィリップス助教授と、「女性に対するネット暴行を止める(Stop Online Violence Against Women:SOVAW)」プロジェクトの創設者であるシャイリーン・ミッチェルに、すべての状況が最悪である時にオンライン上のデマを乗り切る方法について尋ねた。

自分自身を信用する

「人々は、自分がインフルエンサーでも、政治家でも、ジャーナリストでもないから、自分がすることは意味を持たないと考えがちです」とフィリップス助教授は話す。しかし、ハッシュタグがトレンドにあがると、ツイートを投稿したアカウントのフォロワー数の多少にかかわらず、その量によってデマに注目が集まるのを示す良い例だ。自分自身のオンラインでの存在を、たとえどんなにフォロワー数が少なくても、取るに足らないものであると考えるのは危険だ。「良かれと思ってしたことでも、#dcblackoutがついた投稿をリツイートする人が十分いればトレンドを作り出し、パニックを起こすことができます」(フィリップス助教授)。

よい意味でいえば、世界をより良くするために不正な行為についてインターネット上で共有したいという衝動は、自分の直接のフォロワー数をはるかに超えた影響を与えられる。しかしそれはまた、真実ではないことを共有すると、思っている以上の害をおよぼし得るということを意味している。

立ち止まって考える

特に人種差別による暴行のデマが目の前に表示されると検討するのが難しくなる。それは内容そのものが、特に黒人系米国人にとって心的外傷を再体験することになるからだ。

「黒人系米国人である私にとって、自分たちのコミュニティの中で起こっていることです。私たちは信じてもらえていない。だから何か悪いことが起きると、人々に共有して欲しくなるのです」とミッチェルは述べる。デマはこの衝動につけ込む。その狙いは「感情を揺さぶることです。感情を揺さぶられた瞬間に、立ち止まって考えねばなりません」。

その危険は、抗議が起こっている最中の現場では一層深刻だとミッチェルはつけ加えた。もし誤解を招いたり、虚偽であったりする噂がソーシャルメディア上で拡散されると、抗議者たちはその場で情報の真偽を検討するすべが限られている。特に危険な可能性がある環境ではなおさらだ。

ミッチェルは、気が滅入る噂と直面した時は、情報源を調べるために可能な限り抗議の中心から歩み去ることを勧めている。そして、その情報源を調べ、「デマだと分かれば群衆の中に戻り」、そのことを他の人にも知らせるべきだという。

違った角度から考える

ミッチェルは、経験のある多くの偽情報の専門家同様、何年もの実践を通じてデマの可能性のある情報の扱い方を身に着けている。しかし、短時間でその能力を向上させる方法はある。その1つは、ある一片の情報について別の角度から考えることを学ぶことだ。つまり、何かを共有する前に、まずインターネットで調べることである。

デジタル・リテラシー専門家のマイク・コールフィールドは、 情報を調べる際の取り組みとして、「シフト(SIFT)」と名付けた 方法を開発した。これは「立ち止まり(Stop)、情報源を調査し(Investigate the source)、より良い報道を探し出し(Find better coverage)、事実の主張や引用、メディアをもとの文脈まで追跡すること(Trace)」である。 コールフィールドは、 この方法はプロの事実調査員がいかにデジタル情報を評価するかについて、2017年にスタンフォード大学が実施した研究 を応用したものだと語っている。研究に協力した学生や歴史学者の多くは、主として、信頼性が分かる手掛かりをその情報から見つけて、デマの可能性を評価しようとして失敗した。一方、事実調査員は、グーグル検索や報道されたニュースを読むなど徹底的に調査した。

ミッチェルの方法も似ている。「トレンド中のハッシュタグが付いたツイートを見るたび、一番の話題を求めるのではなく、もっとよく知るためにその情報を掘り下げていきます」(ミッチェル)。そして最も重要なのは、ミッチェルはまだ立ち止まったままであるということだ。

一例として、ミッチェルは抗議者らが傍観者に暴行を働いている様子が映った動画を2本ほど見た。まずミッチェルは動画の発信源を調べた。投稿者は誰か? この動画はオリジナルなのか、それとも別の動画を編集したものか? 情報源は正真正銘なのか

次に、動画が共有されている場所を調べ、同じ現場を別の角度から撮影した別の動画を探し、動画に表示された文章が実際の様子を正確に描写しているのかを確認した。結果的に、動画がいかに誤解を招くように編集されていたかを、ザ・インターセプト(The Intercept)が端的に報じていたことが判明した。

デマでさえも依然として「現実」であることを理解する

最もよく引用されているデマ専門家の多くは、白人である。有色人種のコミュニティについて事実を調査しているとき、白人専門家たちは彼らの意図とは関係なく害をおよぼす可能性がある。

ミッチェルは「白人は、黒人系米国人の生きた経験を信じていません」と指摘する。頭ごなしに会話に入り込み、誤解を招く動画を共有したと誰かに伝えることで、暗黙的に「黒人の生きた経験は真実ではないと彼らに伝えていることになります」。 黒人系米国人の生きた経験をより目に見えるものにするという意図で共有されているデマを取り扱っている場合は、特に問題が多い。

一方で、黙っているのも問題があるとミッチェルは主張する。しかし、もし拡散されているデマに取り組むのであれば、自分の専門知識がすぐに信用されて受け入れられると決めつけたり、反論されても守りに入ったりしないようにせねばならない。誰もが人々の動機について不安を抱えている。とりわけ、当局が誤った情報を発表したり、抗議に対するデマの拡散に一役買ったりしている場合はなおさらである。

フィリップス助教授はこれについて、「真実」対「現実」の情報という概念で考えようとしているという。経験的に真実ではないことでも、現実のこととして話すことができる。「これは人々が渡らざるをえない現実だと肯定する方法があります。たとえ、この特定の動画が前日に撮影されたものでなくてもです」。数百万回共有された情報がデマであると証明しようとするにせよ、母親がフェイスブックに投稿したものについて忠告するにせよ、その理解こそが、心的外傷の最中に伝わるデマを扱う姿勢であるべきだ。

ログオフする、またはインターネットから遠ざかることを検討する

デマの検証は困難な作業だ。内容自体が心的外傷を負わせるものであれば、作業の難度は一層高まる。

専門家やこの道のベテランでさえ同じことがいえる。「一層明確に強調したり、強固にしたりすべきではないと思います。私たちは、まったく未知の領域を航海することを強要されているのです」。フィリップス助教授はこう指摘する。「仲間の中には何年も同じ経験を積んできた人がいます。最適な手段を持っているのは私たち専門家です」。手段とはメディア・リテラシーと深い感情のたくわえのことだ。しかし、それでも現状には不十分だ。

「理屈としては、参考にできる資源を持っている人がいるかもしれません」とフィリップス助教授は話す。「しかし、誰もが準備ができていないのも事実です」。

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アビー・オルハイザー [Abby Ohlheiser]米国版 デジタル・カルチャー担当上級編集者
インターネット・カルチャーを中心に取材。前職は、ワシントン・ポスト紙でデジタルライフを取材し、アトランティック・ワイヤー紙でスタッフ・ライター務めた。
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