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スタートアップ投資ファンドも登場、「炭素除去」産業勃興の兆し
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A climate-focused venture firm plans to invest $350 million into carbon removal startups

スタートアップ投資ファンドも登場、「炭素除去」産業勃興の兆し

「二酸化炭素の除去」を手掛けるスタートアップ企業に特化した投資ファンドが米国で立ち上がった。同分野にはマイクロソフトやアルファベットなども資金を投じており、新分野への関心が急速に高まっていることを示している。 by James Temple2022.04.21

ベンチャーキャピタル企業のローワーカーボンキャピタル(Lowercarbon Capital)が、二酸化炭素除去のスタートアップ企業への投資に特化した3億5000万ドルのファンドを立ち上げた。数年前にはほとんど存在しなかった新分野への関心が急増していることを示す最新のニュースだ。

脱炭素イノベーション
この記事はマガジン「脱炭素イノベーション」に収録されています。 マガジンの紹介

ローワーカーボンキャピタルのパートナーであるライアン・オルブッフはMITテクノロジーレビューの独占取材に対し、二酸化炭素除去企業の開発とスケールアップを加速することが新ファンドの目的だと説明した。オルブッフは新ファンドを率いるために、決済代行サービス企業のストライプ(Stripe)から最近同社に転職してきた人物だ。ローワーカーボンキャピタルは特に、今後数十年で必要になるであろう二酸化炭素除去能力を生み出す、炭素を確実かつ長期的に貯蔵できる方法を開発するスタートアップ企業を求めている。

「これから始まるスタートアップ企業たちによって、二酸化炭素除去業界は今後10年間で世界で最も急成長する産業の1つになるでしょう」。オルブッフは電子メールでこう語った。

地球温暖化を2℃未満に食い止め、気候をより安全な領域に戻すためには、今世紀半ばまでに二酸化炭素排出量を世界中で急速に削減した上で、毎年数十億トンもの二酸化炭素を大気から除去する必要があることが、さまざまな研究によって分かっている。各国はすでに大量の温室効果ガス汚染を引き起こしており、既存のエネルギー・システムを見直すには数十年かかると予想されるからだ。また、特定の分野や製品では温室効果ガスを減らす手頃な方法もまだ確立されていない。

問題は、地球規模で二酸化炭素を除去する方法が分からないことだ。現在の選択肢としては、木を植える、炭素を吸収する機械を作る、炭素を吸収する鉱物を撒くなどの方法がある。しかし、これらの方法はどれも高価で信頼性が低く、寿命が短い上に、検証データが乏しく、制限を抱えるなど、どれも実現が困難なものばかりなのだ。

ローワーカーボンキャピタルは2018年、クリス・サッカとクリスタル・サッカの2人によって設立された。2人は前職のローワーケースキャピタル(Lowercase Capital)で、インスタグラム、スラック(Slack)、ツイッター、ウーバーへの初期段階の投資を担当していた。ローワーカーボンキャピタルは設立直後から、気候テックに特化した投資企業として注目される企業の1つになった。

ローワーカーボンキャピタルは昨夏、気候変動対策として8億ドルのファンドを立ち上げた。具体的には、高まる危険への適応、温室効果ガスの排出量削減、大気中の温室効果ガスの除去という3つのアプローチを通じて、「地球を救うための時間を買う」企業を支援している。大気中の温室効果ガスの除去の分野では、鉱物を使って二酸化炭素を回収するエアルーム(Heirloom)、海藻を利用するランニングタイド(Running Tide,)、電気化学的アプローチを開発したベルドックス(Verdox)などに先行投資している。

クリス・サッカ創業者は、新ファンドへの出資希望者に宛てた書簡の中で、「地球が安全な水準まで冷却されるには、放っておけば10万年はかかるでしょう」と記し、「したがって排出量の劇的な削減に加えて、空から二酸化炭素(CO2)を吸い上げて地中に戻す必要があります」と付け加えた。

ローワーカーボンの創業パートナーであるクレイ・デュマによると、エアバス、マイクロソフト、ショッピファイ(Shopify)、スイス再保険会社などによる大量の炭素除去クレジットの購入によって、市場機会は急速に拡大しているという。デュマはさらに、企業が信頼性の高い炭素除去方法を評価し、購入するのを支援するプラットフォームが数多く出現していることにも言及した。例えば、パッチ(Patch)プレッジ(Pledge)ソースフル(Sourceful)、ストライプクライメイト(Stripe Climate)などは、顧客の売上高の一部を、将来の炭素除去の購入に充てられるようにしている。

関連するニュースとして、ストライプ自身も4月12日、アルファベット、メタ、マッキンゼーなどの主要企業と共同で、2030年までに9億2500万ドル相当の恒久的な炭素除去の購入にコミットすると発表した。ストライプは、ローワーカーボンの新ファンドにも出資しており、これらの投資で得た利益をさらなる炭素除去に再投資する予定だ。

一方、炭素除去産業の立ち上がりに対しては、企業や政策立案者が排出量の削減を考える代わりに炭素除去を当てにしてしまうのではないか? との懸念もある。

ストライプの気候変動責任者であるナン・ランソホフは、「抜本的な排出削減」が政府や企業の優先事項であり続けるべきだ、と強調する。

「ストライプのような企業や、(カーボン除去プログラム)に取り組んでいるすべてのパートナーには、いくら想像力をたくましくしても二酸化炭素除去が特効薬にはならないということを、声を大にして再強調することが非常に重要です。計算すれば明らかです。排出量の削減と除去の両方が必要です」。

また、二酸化炭素除去をどれだけ安くできるのか、何十億トンもの炭素を除去するコストを誰が永続的に負担するのか、そしてその理由についても疑問がある。

排出量の削減と同様に、炭素除去を本当に意味のある水準で実現するには、炭素に高い価格をつけるなど、取り組みを奨励または義務付ける政策が必要になるだろう。複数の支援策がすでに実施されており、さらにいくつか追加案検討されている

ストライプのランソホフ責任者は、2050年までに必要な炭素除去の水準は、今年予想される世界のGDPの約100分の1である約1兆ドルかかる可能性があると指摘し、政策が不可欠だと言う。

「民間市場がそのような規模になるとはとても考えられません。市場は一歩を踏み出すには最適ですが、残りの道のりは政策によって進められなければならないのです。それを回避する方法はないでしょう」。

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ジェームス・テンプル [James Temple]米国版 エネルギー担当上級編集者
MITテクノロジーレビュー[米国版]のエネルギー担当上級編集者です。特に再生可能エネルギーと気候変動に対処するテクノロジーの取材に取り組んでいます。前職ではバージ(The Verge)の上級ディレクターを務めており、それ以前はリコード(Recode)の編集長代理、サンフランシスコ・クロニクル紙のコラムニストでした。エネルギーや気候変動の記事を書いていないときは、よく犬の散歩かカリフォルニアの景色をビデオ撮影しています。
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