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Why the Rise of Driverless Cars Has Got Detroit Spooked

自動運転は
キャズムを超えるか?

数年前まで動けばマシのプロトタイプに過ぎなかった自動運転車に、自動車メーカーの幹部が慌てている。 by Michael Reilly2016.06.28

自動車メーカーは足取りの重い恐竜なのか、それとも次代の大きな破壊的アイデアを見通す俊足のイノベーターなのか? 今のところは両方だ。巨額の売上額を誇るGMやフォードのような会社は、ここ数年は過去最高益を更新する一方で、自社のビジネスモデルに限界が迫っていることを、ある程度予感しているだろう。自動車メーカーは、配車サービスから自動運転まで、あらゆる移動手段を提供するサービス型企業として自らを再発明しようと躍起になっている。

フォーチュン誌最新号は特集で、次のように書いている。

アメリカの自動車メーカーは125年にわたって車両を製造して利益を出してきた。ところが今、メーカーは、配車アプリからシャトルバス、3D地図、自動運転する車輪付きコンピュータ事業にまで参入しなければならない。自動車ではなく「モビリティー」を自称することもあるほどだ。

変化は急速に起きた。10年前、ロボット自動車は米国国防先端研究計画局(DARPA)が資金を提供するプロジェクトでしかなく、たいていは動けばマシのレベルだった。だが、最近は既存の自動車業界の既得権を脅かすまでになり、フォードのマーク・フィールズ社長兼CEOは、生き残るには「自分自身を破壊」しなければならないとまで発言した。GMは年初に自動運転の新興企業クルーズ・オートメーションを10億ドルで買収。同様の買収はすでに数多く起きている。

トヨタがウーバーと提携したのは5月、フォルクスワーゲンは配車サービスのゲットに3億ドル、アップルは中国のタクシー配車アプリに10億ドル投資し、グーグルは100台のパシフィカ・ミニバンに自動運転テクノロジーを装備するためフィアット・クライスラーと提携した。

だが、展望を描けない自動車会社の重役に対比して、一般的なドライバーが自動車を所有したり運転したりする素晴らしい未来を描くのは単純過ぎる。衝突回避やACC(定速走行・車間距離制御装置)といった自動化は中級車でも装備されているし、高級モデルには自動駐車機能も搭載されだした。勇気があればテスラの自動運転をオンにして、消費者が購入できる(時には恐ろしい)最先端の自動運転技術を体験できる

本当に大きなギャップは、先見の明のある企業家とドライバーの間にある。フォーチュン誌で紹介された新興企業ズークスの創業者は、開発中と噂される「双方向ロボタクシー」はもはや自動車ですらなく、「車の次に登場するもの」だという。ズークスはこの新しい「移動手段」を実現するために2億5000万ドル以上の資金を集めた。こうした「次世代移動手段」の展望はシリコンバレーでは人気がある一方、一般的な消費者がこうした先進的交通手段を欲しがるかは別の問題だ。

グーグルがアリゾナ州でテストドライバーを5月に募集したとき、テクノロジー関係のブロガーは時給20ドルで1日8時間何もせず車の中に座って過ごすことを「夢の仕事」と呼んだ。しかし、テクノロジーに詳しくない人のソーシャルメディアでの反応からは、ロボットカーに対する普通の人々の「恐れ」が垣間見えた。

「自律型のスチール缶にオレを乗せたいなら、もっと給料を払ってもらわなきゃ」

死亡事故はもちろん、けがや物損を実際に減らせそうな自律自動車の到来は待ち遠しい。しかし、普通の人が本当に欲しがるような未来が到来するまでには、まだ長い道のりがある。

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マイケル レイリー [Michael Reilly]米国版 ニュース・解説担当級上級編集者
マイケル・レイリーはニュースと解説担当の上級編集者です。ニュースに何かがあれば、おそらくそのニュースについて何か言いたいことがあります。また、MIT Technology Review(米国版)のメイン・ニュースレターであるザ・ダウンロードを作りました(ぜひ購読してください)。 MIT Technology Reviewに参加する以前は、ニューサイエンティスト誌のボストン支局長でした。科学やテクノロジーのあらゆる話題について書いてきましたので、得意分野を聞かれると困ります(元地質学者なので、火山の話は大好きです)。
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