KADOKAWA Technology Review
×
ブタのコラーゲンから作った「角膜」で視力が蘇った
THOR BALKHED/LINKÖPING UNIVERSITY
生物工学/医療 無料会員限定
A bioengineered cornea can restore sight to blind people

ブタのコラーゲンから作った「角膜」で視力が蘇った

スウェーデンの研究チームが、ブタの皮膚から抽出したコラーゲンを使って角膜インプラントを作成し、円錐角膜によって視力を失った患者の視力回復に成功した。人間の角膜を使う場合に比べて、圧倒的な低コストで提供できるという。 by Rhiannon Williams2022.08.18

生物工学によって作られた角膜により、移植前には完全に目が見えなかった人を含む、目の不自由な人たちの視力が回復した。

8月11日に『ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)』誌に掲載された研究成果によって、移植用角膜が不足している国々において、これまでよりも低価格で視力回復を実現できるようになるかもしれない。2週間以内に移植が必要なヒトの角膜とは異なり、生物工学によって作られた角膜は最大2年間保存が可能なため、特に必要性の高い人々の元に届けやすい。

この角膜インプラントは、人間の皮膚と構造が似ているブタの皮膚から抽出したコラーゲンタンパクから作られる。作成に使用するコラーゲン分子は浄化して、動物の組織や生物要素が残らないよう処理されている。この角膜を作ったスウェーデンのリンシェーピング大学の研究チームは、結合が解かれた分子を安定化させ、ヒトの角膜を模倣するよう設計されたハイドロゲルの骨格へと変えた。このハイドロゲルは、目に移植するのに十分な頑丈さを備えていた。

イランとインドの外科医らが、進行した円錐角膜により視力を失ったり、視力を失いかけたりしている20人を対象に予備的な治験を実施した。円錐角膜は、目の最も外側に位置する透明な層である角膜が薄くなって、目が適切に焦点を合わせられなくなる病気だ。角膜インプラントにより、角膜の厚みと曲率が回復し、手術前には視力がまったくなかった参加者14人全員の視 …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. Inside the tedious effort to tally AI’s energy appetite 動画生成は別次元、思ったより深刻だったAIの電力問題
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2025 「Innovators Under 35 Japan」2025年度候補者募集のお知らせ
  3. IBM aims to build the world’s first large-scale, error-corrected quantum computer by 2028 IBM、世界初の大規模誤り訂正量子コンピューター 28年実現へ
  4. What is vibe coding, exactly? バイブコーディングとは何か? AIに「委ねる」プログラミング新手法
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る