トランス男性、「3人親」手法で赤ちゃんを持てる
トランス男性が、苦痛を伴う体外受精(IVF)の手順を踏む必要なく、子どもを持てる可能性を示す研究がベルギーのゲント大学の研究者によって発表された。実験室で成熟させた卵子に「3人親」の手法を使うことで、子宮に移植できる胚を作れるかもしれない。 by Jessica Hamzelou2022.08.31
不妊治療はトランスジェンダー男性にとって望ましくない場合がある。ジェンダー肯定ホルモン治療を中断し、女性ホルモン治療や膣内検査など、苦痛を伴う可能性のある治療を受けることになるためだ。
新たなエビデンスは、既存の2つの手法を組み合わせることで、それらの問題を回避できる可能性があることを示している。その方法は、トランスジェンダー男性の卵巣の一部を摘出し、実験室でその卵巣から取り出した卵子を別の人の卵子と部分的に入れ替えてから、精子と受精させて胚を作り出すという手順である。
研究室で卵子を採取する方法により、がんを克服した人が赤ちゃんを授かれるようになった。また、第三者の卵子の一部を使用する、いわゆる「3人親」の手法は、遺伝性疾患を赤ちゃんに引き継がせないようにしたり、受胎能力を高めたりするために使用されてきた。
これらの手法を併用することで、トランスジェンダー男性が通常の不妊治療を受けることなく、自分の卵子を使って健康な胚を作り出し、赤ちゃんを授かる可能性を高められることを、新たな研究は示唆している。
今回発表された手法は、自分の卵子を使って赤ちゃんを授かりたいトランスジェンダー男性に、より多くの選択肢を与える可能性があると、ベルギーのゲント大学の博士課程生であるアントニア・クリストドゥラキは語る。彼女は先月、イタリアのミラノで開催された欧州生殖医学学会(European Society of Human Reproduction and Embryology)の年次総会でこの研究成果を発表した。「すべての人に生殖の権利があるはずです」と、クリストドゥラキは言う。
「人々が自分と血の繋がった子どもを持つための、追加的な選択肢です」。この研究には関わっていないオックスフォード大学のスザンナ・ウィリアムズ教授は言う。「最終的に3人の親を持つことになりますが、大きな可能性があります」。
氷の上の卵子
誕生時の卵巣には通常、100万個以上の卵子がある。それらの卵子はすべて未成熟で、仮死状態になっている。一部の卵子が成熟し始め、月に一度のペースで放出されるようになるのは、思春期になってからだ。多くの卵子は死滅し、その総数は年齢とともに減少していく。
体外受精(IVF)に利用可能な自分の卵子がほしい人は、まずホルモン治療を受ける。それによって卵巣を刺激し、卵子を大量に放出させるのだ。それらの卵子を取り出して、冷凍保存するか、精子と受精させる。
ジェンダー肯定治療を検討しているトランスジェンダー男性で、血 …
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