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新型コロナとインフルエンザの「ツインデミック」到来に備えよ
Ringo Chiu/ZUMA Press Wire
Is a covid and flu "twindemic" on the horizon?

新型コロナとインフルエンザの「ツインデミック」到来に備えよ

北半球がインフルエンザ・シーズンに突入しようとしている今、新型コロナウイルスの感染者数も再び増加傾向に。「ツインデミック」の到来が懸念される。 by Jessica Hamzelou2022.10.26

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

私は9月末、不老不死を望む百万長者たちに会いにスイスのアルプスに行った。そして今、ロンドンの自宅に戻っている。不老不死を謳う怪しげなサプリメント以外にも、やっかいなお土産を持ち帰ってしまったようだ。何かのウイルスにやられてしまい、過去数日にわたって寝込んでしまっていたのだ。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ではなさそうだ(抗原検査では陰性)。体調を崩したのが、会議出席者からウイルスをもらったのが原因だとは限らない。往復で合計13本の電車に乗ったし、その中の数人は咳をしている人もいた。それに、10月3日に娘を保育園に預けた時、職員全員の具合が悪いと言われた。北半球に風邪の季節がやってきたということだ。

それも1つの理由となって、大西洋の両側の公衆衛生当局はインフルエンザと新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)両方のワクチン接種を受けるよう人々に呼びかけている。数カ月前から、インフルエンザと新型コロナウイルスの「ツインデミック(twindemic)」がやってくるかもしれない、という警告が聞かれるようになっている。心配する必要はあるのだろうか。

少し心配する必要がある。理由はいくつかある。北半球では、過去2年間にわたってインフルエンザ・ウイルスに感染する人が非常に少なかったため、今年は人々の間で抵抗力が特に低くなっていると考えられている。

米国疾病予防管理センター(CDC)の推計によると、米国では、通常、毎年数千万人がインフルエンザ・ウイルスに感染する。この推定値は、インフルエンザ・ウイルスに感染して入院した人の数から算出されている。2018〜2019年のインフルエンザ・シーズンでは2900万人が発症し、2019〜2020年は3600万人が発症したと推計されている。

しかし、2020〜2021年は米国におけるインフルエンザの入院患者数が極めて少なかったため、米国疾病予防管理センター(CDC)は感染者数の総計をまったく推計できなかった。CDCはインフルエンザの流行状況について、「1997年に現在の報告体制が始まって以来、最も感染者数が少ない」と説明していた。一部の疫学者は、インフルエンザ・ウイルスへの接触があまりなかったことから、人々は免疫の一部を失っている可能性があると心配している。

インフルエンザの感染者数が減少した大きな理由は、新型コロナウイルスのパンデミックだ。新型コロナウイルスの蔓延防止のために導入されたあらゆる対策は、インフルエンザ・ウイルスを含む他の呼吸器系ウイルスの蔓延を抑える連鎖的な効果を持っていたのだ。

今問題が生じているのは、こうした対策の多くが廃止されたからだ。オフィス、交通機関の乗り換え駅、そしてパブをはじめとする、感染が広がりやすい場所へ、人々のほとんどが、今では平気で出かけているのだ。多くの国々は海外からの旅行者受け入れを再開しており、一部の国を除くと新型コロナウイルスのワクチン接種証明なしでも入国できる。私は英国、フランス、そしてスイスを横断するように旅行したが、接種証明の提示を求められたことはなかった。

また、旅行していてはっきり気づいたのは、マスクをしている人がほとんどいなかったことだ。多くの疫学者は依然として、特に換気が行き届いていない混雑した屋内空間では、マスクの着用を推奨している。しかし、多くの国はマスク着用に関する国からの要請を止めている。私が乗った13本の電車でマスクを着用していたのは、わずか10人ほどだった。

新型コロナウイルスのアウトブレイクは、インフルエンザのように季節ごとにやって来るわけではない。しかし、この2年半で何度も見てきたように、新型コロナウイルスは対策が手薄になると感染者数増加という波になって襲ってくる。英国では、新しい波が始まっている可能性がある。政府発表の統計値によると、新型コロナウイルスの検査で陽性となった人の数は、10月に入ってから42%も増加している。そして、これまでの傾向と同様であれば、英国で波が始まると、その約1カ月後に米国でも同様の波が始まる可能性がある。

また、南半球の国々でも懸念すべき傾向が見られる。オーストラリアでは通常、インフルエンザ・シーズンは5月頃に始まり、10月にピークを迎える。オーストラリア政府の疾病監視システムによると、今年のインフルエンザ・シーズンは一足早く到来し、6月上旬にピークが見られたという。このインフルエンザのアウトブレイクは、2年にわたってインフルエンザがほとんど流行していなかったため、人々の免疫が弱まっていると考えられるタイミングで発生したものだ。2歳未満の子どものほとんどは、今年になるまでインフルエンザを経験したことがなかった可能性がある。

オーストラリアのインフルエンザの感染者数が今年大幅に増えたもう1つの原因として、インフルエンザのワクチン接種率が下がったことも指摘されている。インフルエンザのワクチン接種という点において、英国は比較的備えができているかもしれない。インフルエンザのワクチン接種の対象となる65歳以上人の中で接種を受けた人の割合は、2020〜2021年のインフルエンザ・シーズンでは80.9%だったが、今シーズン(2021年9月1日から2022年2月28日)は82.3%まで増加している。これは、世界保健機関(WHO)が目標としている接種率の75%を十分に超えている。

しかし、米国の接種率はかなり低い。昨シーズンにインフルエンザのワクチン接種を受けた65歳以上の人の割合は、66%にとどまっている。また、米国の接種率はこの数年で減少傾向にある。

そのため、CDCやWHOをはじめとする公衆衛生当局は、ワクチン接種を呼びかけている。もちろん、よく知られた話ではあるが、反対する声もある。それでも事実として、現在でもインフルエンザや新型コロナウイルス感染症で亡くなる人がいて、ワクチン接種をしていない人が最も大きなリスクにさらされているのだ。

北半球では気温が下がり人々が屋内で一緒に過ごす時間が増えることで感染者数の増加が見込まれる、とWHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェソス事務局長は10月5日の記者会見で話した。新型コロナウイルスが新たに広がりを見せているのは、英国だけではない。欧州ではいくつかの国で、新型コロナウイルスの感染者数、入院患者数、そして死亡者数がすでに増加している。

もう1つ懸念されるのは、新型コロナウイルスの変異だ。今でも世界の新型コロナウイルスの感染者の大多数は、変異したオミクロン株に感染している。しかし、WHOは300種類を超えるオミクロン株の派生系統を監視しており、これらはどれも「流行の懸念」があると考えられている。WHOで新型コロナウイルス担当の技術責任者を務めるマリア・ヴァン・ケルコフは、同じ記者会見で「感染の波はこれからも発生し続けるでしょう。(中略)新型コロナウイルスが消える事はなく、このウイルスと一緒に生きていくことになるのですから」と述べている。

MITテクノロジーレビューでは、パンデミックの初期から継続的に、新型コロナウイルスについて報じている。最近の記事のいくつかを紹介する。

  • 新型コロナウイルスは、他の要因よりもはるかに大きな打撃を人種問題に及ぼした。エレーヌ・シェリーがこの記事で報じているように、新型コロナウイルス感染症の長期化による人種格差の検証はまだ始まったばかりだ
  • 私がこれまでに報じたように、子どもの新型コロナウイルス感染症の後遺症についてはいまだに大きな議論が続いている。後遺症の影響や定義さえも研究者の間で意見が割れているのだ
  • 同僚のヤン・ズェイが報じている通り中国では、スマートフォンに新型コロナウイルスのPCR検査を受けるよう促すポップアップが表示され、明らかな理由なく何日も隔離される可能性がある
  • 私が9月に報じたように、インドと中国が新型コロナウイルス感染症に対する2種類の吸入式のワクチンを承認した。
  • あらゆる新型コロナウイルスに効果があるワクチンをナノ粒子を使って作る試みが続いていると、アダム・パイオールが報じている

その他の注目のWeb記事

(リンク先はいずれも英文記事)

  • 頭が真っ白になった事はあるだろうか。脳のスキャンから、人間の脳は思考力が一切なくなる神経状態に入ることができると判明した(米国科学アカデミー紀要)。
  • ある医師グループは極めて珍しい血液型の分類法を新たに発見し、このほど44番目にあたる分類法を報告した(ワイアード)。
  • 新型コロナウイルスの迅速抗原検査が普及したことで、インフルエンザから腎臓病までのすべてを網羅する家庭用検査キットへの道が拓かれた(ネオライフ)。
  • 注意欠如・多動症(ADHD)やナルコレプシー(居眠り病)用に処方されるアデロールが米国で不足しており、その影響が広がっている。服用できなくなった患者は、生活が「一変」したと話している(ヴァイス)。
  • 近視の人がますます増えている。2050年までには、世界人口の半数が近視になる。その原因の1つは、室内での読書時間が増えているからだ(BBC)。
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ジェシカ・ヘンゼロー [Jessica Hamzelou]米国版 生物医学担当上級記者
生物医学と生物工学を担当する上級記者。MITテクノロジーレビュー入社以前は、ニューサイエンティスト(New Scientist)誌で健康・医療科学担当記者を務めた。
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