KADOKAWA Technology Review
×
Innovators Under 35 Japan 2026 候補者募集開始!
スペースXの月旅行は火星植民事業の資金源
SpaceX Plans to Fly Tourists to the Moon—but 2018 Is Ambitious

スペースXの月旅行は火星植民事業の資金源

スペースXが発表した2018年中の最初の月旅行は、火星植民の資金源として、イーロン・マスクが何としても実現させたい事業だ。ただし、スペースXは予定どおりに事を進めるのが得意な会社ではない。 by Jamie Condliffe2017.03.01

イーロン・マスクが設立したロケット事業会社スペースXの最初の月旅行で、旅行客は2018年末までに月を周回して地球に帰ってくる予定だ。ただし、月旅行の実現には、多くのことを解決する必要がある。

スペースXは、2人の民間人が人生最高の旅の座席を確保するために「相当額の内金」(「宇宙ステーションへの乗組ミッションのコストよりも少し多い額」)を支払い済みだと発表した。月旅行では新型旅客運搬カプセル「クルー・ドラゴン」に旅行者2人を乗せ、輸送ロケット「ファルコン・ヘビー」で打ち上げる。その後ロケットは月に向かい、月を周回して地球に戻ってくる。

匿名の乗客2人(すでに互いに知り合いになっている)の旅程は1週間の予定で、カプセルは自律的にミッションを完了する(緊急時には乗客が乗組員として介入)。すべてが予定通りなら、2人の乗客は40年以上の宇宙開発史で、月に旅して帰還する、初めての民間人になる。

ただし、出発予定日は今後遅れる可能性がある。スペースXは自らキツい締切日を設定して間に合わないことで有名な企業だ。イーロン・マスクは2011年時点で3年以内に旅行客を宇宙に送り出すと約束していた(未達成)。また「ファルコン・ヘビー」ロケットを2013年か2014年に初めて打ち上げるとも約束していた(ロケットの初発射は2017年夏の予定)。

また、月旅行ミッションの実施前には、かなり多くの試験や検査をこなす必要がある。もちろん、月旅行は技術的には可能(アポロ計画で実証済みだ)であり、スペースXには月旅行を実現するテクノロジーがある。だが、スペースXはいまだに「クルー・ドラゴン」カプセルを宇宙に打ち上げていないし、カプセルに人間を乗せたこともない。

そこでスペースXは、年内には無人の「クルー・ドラゴン」カプセルを国際宇宙ステーションに向けて打ち上げるつもりだ。その後2018年第2四半期には、別のクルー・ドラゴンに米国航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士を乗せて打ち上げる。無人・有人の実証を経て、2018年中には、旅行代金を支払い済みの2人を打ち上げたい意向だ。

この計画には失敗時の余裕がまったくない。昨年夏、スペースXのロケットが大爆発を起こしたように、一度のつまずきが深刻な遅れにつながる。すでにNASAの乗組員を乗せた飛行は予定通りに実施されない可能性があるとする報道もある。ガーディアン紙の解説にあるように、スペースXは、計画完了までの間ずっと、米国連邦航空局(FAA)の機嫌を取る必要がある。

それでも月旅行の安全性は保証されていない。だが、イーロン・マスクはスペースXの乗客は今後徹底的な訓練を受け、「状況をしっかり理解し、この旅にいくらかのリスクがあることをわかった上で参加するのです」としている

だが、もしすべてが計画通りにいけば「本当にわくわくするミッション」になるだろう、とイーロン・マスクはいう。月旅行が「うまくいけば、人類を再び深宇宙(少なくとも人工衛星等の軌道より外側の宇宙のこと)へと送り込むことで、世界を本当に興奮させ」るだろう。宇宙旅行はスペースXにとって、それなりの収入源(火星入植構想の資金源)になるから、イーロン・マスクは本気でそう願っているはずだ。

(関連記事:AP,  “火星移住:イーロン・マスクが「すごいけいかく」を発表,” “スペースXの打ち上げ再開に暗雲 イーロン・マスクの火星行き計画に影響も”)

人気の記事ランキング
  1. It’s time to address the looming crisis in entry-level work. 「コーディングを学べ」もう通用せず、AIが若者の雇用を奪い始めた
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2026 「Innovators Under 35 Japan」2026年度候補者募集のお知らせ
  3. Anthropic’s Code with Claude showed off coding’s future—whether you like it or not 「Claudeに任せてしまおう」 たった1年で激変したソフトウェア開発
タグ
クレジット Photograph by Bruce Weaver | Getty
ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
▼Promotion
社会実装都市「ひろしま」の魅力に迫る ローカル ✕ イノベーション
MITテクノロジーレビューが選んだ、AIの10大潮流 [2026年版]

AIをめぐる喧騒の中で、本当に目を向けるべきものは何か。この問いに対する答えとして、MITテクノロジーレビューはAIの重要なアイデア、潮流、新たな進展を整理したリストを発表する。

特集ページへ
MITテクノロジーレビューが選んだ、 世界を変える10大技術

MITテクノロジーレビューの記者と編集者は、未来を形作るエマージング・テクノロジーについて常に議論している。年に一度、私たちは現状を確認し、その見通しを読者に共有する。以下に挙げるのは、良くも悪くも今後数年間で進歩を促し、あるいは大きな変化を引き起こすと本誌が考えるテクノロジーである。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る