逆風の洋上風力発電業界、2024年はどう動く?
洋上風力発電業界が苦境に立たされている。コストの高騰やサプライチェーンの混乱拡大に伴い、プロジェクトの中止や延期が相次いでいるのだ。だが一方では、新たな取り組みや技術開発も続いており、明るい兆しもある。 by Casey Crownhart2024.01.15
洋上風力発電業界は嵐に見舞われている。
海岸線に沿って林立する風力タービンは、沖合で安定的に吹く強い風を利用することができる。海から約100キロメートル以内に世界人口の40%が住んでいることを考えると、洋上風力発電所は世界中の電力供給をクリーン化する取り組みに大きな恩恵をもたらす可能性がある。
しかし、ここ数カ月、コストの高騰やサプライチェーンの混乱拡大に伴い、世界各地でプロジェクトが延期や中止の憂き目にあっている。こうした後退は、気候変動の原因となる温室効果ガスの排出量を削減する取り組みに支障をもたらす可能性がある。
2024年以降もプロジェクトの延期や中止が続出する可能性は高い。だが、洋上風力発電業界では新たな取り組みも始まり、技術開発も続いている。問題は、現在のトラブルが発展を一時的に妨げるものなのか、それとも2024年にこの産業が発展の軌道から大きく外れる兆候なのかということだ。ここでは、洋上風力発電の今後について検証していく。
発展の阻害と後退
風力発電大手のオーステッド(Ørsted)は2023年11月1日に、金利上昇、高インフレ、サプライチェーンのボトルネックを理由に、大いに期待されていた2つの洋上風力発電プロジェクト「オーシャン・ウィンド(Ocean Wind) 1」と「オーシャン・ウィンド2」の中止を発表した。この2つのプロジェクトは、ニュージャージー州の送電網に2.2ギガワット強を供給する予定だった。これは、100万世帯以上に電力を供給できる量である。オーステッドは世界有数の洋上風力発電開発企業で、2023年の注目企業としてMITテクノロジーレビューの「気候テック15」にも選ばれている。
エネルギー関連のリサーチサービスを提供するブルームバーグNEF(BNEF:BloombergNEF)の分析によると、現在の米国における洋上風力発電の後退は、オーステッドのプロジェクト中止に限ったことではない。2023年には12ギガワット超相当の契約がキャンセルされたか、再交渉の対象となった。
ブルームバーグNEFの風力アナリスト、チェルシー・ジャン=ミシェルによると、この問題の一端は一般的なプロジェクトの計画方法と資金調達方法にあるという。開発業者は風力発電所の建設場所を確保した後、そこで発電される電力の販売契約を結ぶ。その電力価格はプロジェクトが完了する数年前に固定される。現在進行中のプロジェクトの場合、一般的に契約は2019年か2020年に交渉済みだ。
この5年間で多くのことが変わった。アメリカン・クリーン・パワー協会(ACP:American Clean Power Association)の2023年の報告書によると、風力タービン建設で最も重要な材料のひとつである鉄鋼の価格は、2019年1月から2022年末までに北米と北欧で50%以上も上昇した。
インフレにより他の材料の価格も上昇しており、金利の上昇により借入コストも上昇している。そのため開発業者は、以前に合意した価格は妥当ではなくなったと主張するようになった。
業界の経済問題は世界的なものだ。英国で最近に実施された洋上風力発電のリース権入札では、応札はゼロだった。また、北海で計画 …
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