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「胚は子ども」米アラバマ州の衝撃判決、人工子宮研究にも影響か
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The weird way Alabama's embryo ruling takes on artificial wombs

「胚は子ども」米アラバマ州の衝撃判決、人工子宮研究にも影響か

アラバマ州最高裁判所は、研究室の人工授精で作られた胚は子どもであるとの判決を下し、関係者に大きな衝撃を与えた。幹細胞から作られる人工子宮や人工胚など、開発中の将来の技術に影響を与える可能性がある。 by Antonio Regalado2024.02.28

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

米国アラバマ州最高裁判所は先日、研究室で保管されている凍結胚は「子ども」とみなされるという判決を下した。この判決は、不妊治療業界に「大きな衝撃」を与え、体外受精が中絶の議論に巻き込まれつつあるのではないかとの不安が大きくなっている。

ニューヨークタイムズ紙は、アラバマ大学のあるクリニックが、刑事訴追の可能性を懸念して、研究室での卵子の受精を中止したと報じている。

不妊治療センターでは、年間数百万個の胚が作成される。凍結されている胚や、研究に使用されている胚もあるが、ほとんどは患者の子宮に移植して妊娠させることを目的としている。

今回のアラバマ州の法的判決は明らかに宗教の影響を受けており、中絶について議論する際に、聖書の引用や「殺人」への言及が数多くある。しかしそれほど注目されていないのは、胚は「その場所に関係なく」子どもであるという、裁判所の具体的な主張である。この主張は、幹細胞から作られる人工子宮や人工胚など、開発中の将来の技術に影響を与える可能性がある。 

この事件は、アラバマ州の体外受精(IVF)クリニックである生殖医療センター(Center for Reproductive Medicine)で、患者が胚の保管場所の中に迷い込んでしまい、液体窒素の中から胚の入った容器を取り出したことに端を発している。

このとき、「胚が保存されていた容器が氷点下の温度だったため患者の手が凍傷となり、胚を床に落としてしまった」と判決文は述べている。そしてわずか数個の細胞からなる胚は解凍され、死んでしまったのだ。

この事故に激怒した一部の家族は、経済的損害賠償を請求しようとした。そして彼らは、体外受精による子どもが誕生するずっと前の1872年に初めて制定された、アラバマ州の未成年者の不法死亡法に基づいて訴訟を起こしたのである。

今回、裁判所が判断しなければならなかった問題は、「凍結された胚は、未成年の子どもとみなされるのか?」ということである。 

被告側は、体外受精用の胚はまだ生物学的な子宮の中にいないのだから、子どもとも人ともみなされないと主張した。子宮が無ければ、赤ちゃんも生まれず、子どもになることもないということである。そして話はここから興味深くなり、SFの領域に入り始めてしまうのだ。

裁判官らは、弁護側の主張の「潜在的な含意」と彼らが呼ぶものに飛びついた。人工子宮の中で育っている赤ちゃんはどうなのか? 実際の子宮内にいないという理由だけで、それは人としてみなされないのだろうか? と裁判官らは尋ねたのだ。

今回の判決によれば、不法死亡は「場所に関係なく、すべての胎児に適用される」ものであり、年齢に関係なく、たとえそれが10年間冷凍保存されていた胚であっても「例外ではない」というものだった。またこの法律は、科学が生むことのできるあらゆる種類の「子宮外の子ども」を除外するものでもない。

古い法律を新しいテクノロジーに適用しようとする際に、裁判官が複雑な問題とぶつかるのはよくあることだ。しかし今回の判決が異例なのは、裁判官が最終的に、まだ完全に発明されていないテクノロジーについて判決を下した点である。

「今回の判断は極めて異例だと思います」とミネソタ大学の法医学教授であるスーザン・ウルフは述べている。「裁判所が、実際に裁判沙汰になっていないテクノロジー、さらに、人々の間に存在しないテクノロジーに注目して判決を下した例は他に思いつきません。裁判所は、訴訟の一部にもなっていない将来のテクノロジーについて、拘束力のある決定を下すことはできません」 。

悪法であろうがなかろうが、アラバマ州の判事が判決を下したこの問題は、間もなく現実的なものとなる可能性がある。実際に、いくつかの企業は未熟児を生かし続けるための人工子宮を開発しており、マウスの胚を液体を入れたボトルに入れて心臓の動く胎児になるまで成長させる研究をしている研究施設もある。

イスラエルのスタートアップ企業であるリニューアル・バイオ(Renewal Bio)は、移植医療用の組織を採取するために、幹細胞によって形成されるヒトの人工胚を生後40日か50日になるまで培養したいと述べている。

このテクノロジーはすべて急速に進歩しているため、培養されたヒト胎児の道徳的および法的権利の問題が仮定の話であるのは、あまり長くないのかもしれない。 

弁護士や医師が直面する可能性のあるジレンマには、胎児が培養槽の中で成長している場合、その生命維持システムを停止するという決定が、一般的には妊娠している人の権利に基づいているとするリベラルな州の中絶法の下で保護されるのだろうか? というものがある。アラバマ州では、脳皮質を欠き知覚を持たず、臓器を成長させることだけを目的として設計された胎児も、やはり子どもとみなされるのだろうか?

今回のアラバマ州の判決が、科学よりもむしろ裁判官の宗教的見解を反映したものであることは明らかであり、ただ子どもを産みたいと願う人たちを傷つける可能性があることは言うまでもない。この不法死亡事件が「子宮外の子どもの倫理的地位」について提起した「多くの難しい疑問」と裁判所が呼ぶものについて、考える時が来ているのかもしれない。

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本誌は昨年、人工子宮について知っておくべきことを記事にしている。執筆したカサンドラ・ウィヤードによれば、この実験装置は未熟児の発育にもっと時間を与えるために開発されているとのことだ。これまでのところ研究は子羊で実施されているが、今後はヒトでの研究も計画されている。

ごく初期の胚を研究室でより長く発育させるために使用される別の種類の人工子宮も存在する。イスラエルに拠点を置くスタートアップ企業のリニューアル・バイオ(Renewal Bio)は、臓器をバイオプリントする方法として、この方法で「人工」のヒト胚をこれまで以上に長い時間成長させたいと考えているという。

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アントニオ・レガラード [Antonio Regalado]米国版 生物医学担当上級編集者
MITテクノロジーレビューの生物医学担当上級編集者。テクノロジーが医学と生物学の研究をどう変化させるのか、追いかけている。2011年7月にMIT テクノロジーレビューに参画する以前は、ブラジル・サンパウロを拠点に、科学やテクノロジー、ラテンアメリカ政治について、サイエンス(Science)誌などで執筆。2000年から2009年にかけては、ウォール・ストリート・ジャーナル紙で科学記者を務め、後半は海外特派員を務めた。
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