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廃炉から復活へ、米国で異例の原発再稼働に道筋
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How to reopen a nuclear power plant

廃炉から復活へ、米国で異例の原発再稼働に道筋

政府の支援を受け、米国ミシガン州のパリセード原子力発電所が再稼働の準備を進めている。米国で閉鎖後の原発が再稼働するのは初めて。 by Casey Crownhart2024.04.05

ミシガン州にある閉鎖済みのパリセード原子力発電所は、米国エネルギー省からの15.2億ドルの融資を受けて、再稼働する可能性がある。成功すれば、米国で初めて、閉鎖後の原子力発電所が再稼働することになる。

パリセード発電所は、50年にわたって低炭素電力を供給した後、2022年5月20日に閉鎖された。しかし、同発電所の新しい所有者は、この数年間で経済状況が改善したと考え、2025年末までに運転を再開する計画を立てている。

実際に再稼働に至れば、米国原子力業界にとって重要なマイルストーンとなるだろう。また、この原子炉の800メガワットという発電容量は、米国の気候目標達成に寄与する可能性がある。とはいえ、再稼働は照明のスイッチを入れるように簡単なことではない。パリセード発電所が運転を再開するには、技術、管理、規制に関する障害を乗り越える必要がある。原子力発電所の再稼働に必要なことは次の通りだ。

手順1:準備

パリセード発電所が再稼働の可能性を得た主な理由の1つは、同発電所の新しい所有者が数年前から計画を立てていたからだ。非営利シンクタンク「原子力イノベーション・アライアンス(NIA)」のパトリック・ホワイト研究部長は次のように述べている。「技術的に、発電所の稼働を継続するための条件が揃っていました」。

ホルテック・インターナショナル(Holtec International)は、原子炉や核廃棄物用の機器を供給し、原子力発電所の廃炉などのサービスを手掛ける企業だ。同社はもともと、施設を閉鎖して解体し、除染する目的でパリセード発電所を購入した。同社は、ニューヨークのインディアン・ポイント原子力発電所を含め、最近閉鎖された他の原子力発電所の廃炉も手掛けている。

経済状況の変化を受けて、多くの原子力発電所、特に小規模な発電所では、運転の継続が不採算なものになっている。特に、パリセード発電所のように、比較的小規模の原子炉を1基しか持たない発電所の場合は難しい。

原子力発電所が一度運転を停止すると、その再稼働はすぐに困難になる可能性がある。庭に放置された車と同じように、「ある程度の劣化は免れません」とホワイト研究部長は言う。重要なサポート・システムの保守や検査が遅れたり、止まったりすることがあるからだ。例えば、補助用のディーゼル発電機は、原子炉が稼働している間は定期的に点検と検査を実施する必要がある。しかし、発電所の閉鎖後に同じような扱いを受けることは、おそらくないだろうと同研究部長は話す。

ホルテックは原子炉が停止し、核燃料が除去された後の2022年にパリセード発電所を所有することになった。その当時でさえ、同発電所の低炭素電力を送電網に維持するように求める声があったと、同社の政府業務およびコミュニケーション担当部長のニック・カルプは述べている。

ホルテックはすぐに方針を転換し、パリセード発電所の運転維持に取り組むことを決めた。それにより、記録と保守作業の大部分が継続された。「昨日閉鎖したかのようです」とカルプ担当部長は言う。

時間とリソースが継続的に投入されたおかげで、パリセード発電所の再稼働は完全閉鎖済み施設の再開というより、定期的な核燃料補給や保守による休止後の再稼働に近いものになるだろう。メンテナンス作業を完了して新しい核燃料が投入された後、同発電所の原子炉は再稼働する。そして、約80万世帯に十分な電力を供給できるのだ。

手順2:資金および許認可の確保

パリセード発電所には次々と支援が舞い込んだ。ミシガン州は、同発電所の再稼働のために過去2年間で3億ドルの資金を確保している。そして今回、米国エネルギー省(DOE)が15.2億ドルの条件付き融資を決定した。

融資を受けるにあたり、ホルテックは一定の技術的、法的条件を満たす必要がある。この資金は、最終的には利子とともに返済することになる(ホルテックとDOE融資プログラム局は、融資の条件やスケジュールについての詳細情報を明かさなかった)。

ミシガン州からの資金と連邦政府による融資は、パリセード発電所の設備に必要な修理とアップグレードを支援し、閉鎖以降も残っている約200人の従業員への支払いの継続に役立つだろう。同発電所は稼働中、約700人を雇用していた。ホルテックは現在、再稼働を支えるための追加雇用に取り組んでいるとカルプ担当部長は説明する。

パリセード発電所再稼働の可能性に残されている主な問題の1つは、規制当局からの許認可の取得だ。米国には原子力発電所を監督する、原子力規制委員会(NRC)である。しかし、同機関には閉鎖済み発電所を再び認可するための確立された手順がない。マサチューセッツ工科大学(MIT)で原子力工学を指導するヤコポ・ボンジョルノ教授は、「米国は今回、新しい一歩を踏み出そうとしているのです」と言う。

パリセード発電所は、施設を閉鎖して原子炉から核燃料を取り出したとき、運転業務の法的権利を事実上放棄した。ホルテックは、同発電所を安全に再稼働する方法についての詳細な計画をNRCに提出する必要があるだろう。

ホルテックは、NRCとの業務再認可手続きを2023年10月に正式に開始した。残りの資料については年内の提出を予定している。

手順3:利益?

規制当局から許認可が下りれば、パリセード発電所は2025年末までに再稼働する計画だ。カルプ担当部長によると、核燃料供給の準備はすでに整っており、同発電所の全出力量に対する長期的な買い手も確保済みだという。

すべてが順調に進めば、パリセード発電所は少なくとも、最初の稼働開始から80年後の2051年まで発電を続けられる。

低炭素電力、特に原子力への支援の拡大が、米国全土で古い原子力発電所の寿命延長を可能にしている。「今回の原子力発電所の再稼働は、クリーンな安定電力に対する支援の大転換を象徴しています」とDOE融資プログラム局のジュリー・コゼラッキ上級顧問は話す。

ピュー研究所(Pew Research)が実施した世論調査によると、原子力発電の増加を支持する米国人の割合は2016年の43%から上昇しており、昨年時点で過半数(57%)に届いている。原子力やその他の低炭素エネルギーに対する数十億ドルの税額控除がインフレ抑制法に盛り込まれるなど、このテクノロジーに利用可能な資金も増えている。

MITのボンジョルノ教授によると、支援や資金調達の拡大は電力価格の上昇と同時に起こっている。それは、既存の原子力発電所の価値をほんの数年前よりも大きく上昇させることに貢献しているという。「すべてが変わりました」と同教授は付け加えた。

しかし、パリセード発電所の再稼働が成功したとしても、閉鎖済みの他の原子力発電所が米国各地で次々と再開するということはないだろう。「多くの先進的な取り組みが実施された非常に稀なケースです」とホワイト研究部長は話す。廃炉が迫っている他の発電所では、そもそも運転を停止するより、延長する方が安価であり、簡単かつ効率的だ。

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MITテクノロジーレビューの気候変動担当記者として、再生可能エネルギー、輸送、テクノロジーによる気候変動対策について取材している。科学・環境ジャーナリストとして、ポピュラーサイエンスやアトラス・オブスキュラなどでも執筆。材料科学の研究者からジャーナリストに転身した。
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