「顔認識禁止」を回避、体格や髪型で防カメ映像を追跡するAIツール
体格や髪型、服装などの属性を使って複数の防犯カメラ映像に映る人物を追跡できるAIツールが開発され、米国の警察や政府機関で導入が進んでいる。 顔などの生体情報を使わないため、規制を回避できるという。 by James O'Donnell2025.05.16
- この記事の3つのポイント
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- 顔認識の代替として別の人物追跡ツールが米国の警察などで使用され始めている
- 体格や服装などの属性で人物を識別し場所を跨いで追跡できる
- 顔認識を制限する法律の抜け道となり、プライバシー侵害などが懸念されている
顔認識技術の使用をめぐる規制の導入が米国で進む中、警察や連邦政府機関が規制を回避する新たな方法を見つけ、物議を醸している。体格や性別、髪の色、スタイル、服装、アクセサリーなどの属性を使って人々を追跡できる人工知能(AI)ツールを使うというものだ。
このAIツールは、映像分析企業ヴェリトーン(Veritone)が開発した「トラック(Track)」。米国内の州警察や地方警察、および大学など、400機関がすでに利用している。顧客基盤は拡大し、連邦政府も採用した。司法省の連邦検事たちは昨年8月、犯罪捜査目的でトラックを使い始めた。ヴェリトーンによると、正真正銘の顔認識ツールなどの同社の多様なAIツール群は、移民局を抱える米国国土安全保障省や、米国防総省も利用している。
「人々の顔を追跡することが許されないのであれば、犯罪者、あるいは悪意のある行動や活動を識別できるようにするための取り組みを、どのように支援すればよいのかという考え方がトラックの背景にあります」。ヴェリトーンの最高経営責任者(CEO)であるライアン・スティールバーグは話す。同CEOによれば、トラックは顔認識が法的に許可されていない場所でも個人を追跡でき、顔が不明瞭または見えないような場面でも追跡が可能だという。
米国自由人権協会(ACLU:American Civil Liberties Union)は、トラックを批判している。MITテクノロジーレビューを通じてトラックの存在を知った同協会は、生体認証に頼らずに個人を追跡するシステムが、米国で広く使われているのを見たのはこれが初めてだと述べた。そして、トランプ政権が連邦政府機関に抗議者、移民、学生の監視を強化するように圧力をかけているこの時期に、顔認識と同じプライバシーに関する多くの懸念を引き起こすだけでなく、新たな懸念ももたらすと警告した。
ヴェリトーンは、トラックを使って、2021年1月6日に発生した合衆国議会議事堂襲撃事件から地下鉄の駅まで、さまざまな場面を映した映像で人々を分析するデモを見せてくれた。トラックを使えば、体格や性別、髪の色やスタイル、靴、衣服、さまざまなアクセサリーを指定することで、特定の人物を探すことができる。またこのツールは、異なる映像を時系列で整理し、場所や映像を跨いで1人の人物を追跡することも可能だ。トラックは、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS:Amazon Web Services)やマイクロソフト アジュール(Microsoft Azure)を通して利用できる。
スティールバーグCEOはインタビューの中で、トラックが人々を識別するために使用する属性の数は、今後も増え続けると述べた。トラックは肌の色に基づいて識別しているのかという質問に対し、同社の広 …
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