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史上最も危険な小惑星
「2024 YR4」追った
科学者たちの60日間
Eva Redamonti
宇宙 Insider Online限定
Inside the most dangerous asteroid hunt ever

史上最も危険な小惑星
「2024 YR4」追った
科学者たちの60日間

2024年12月末に発見された小惑星「2024 YR4」は地球衝突確率が一時3.1%まで上昇し、観測史上最も危険な小惑星となった。世界中の天文学者がATLAS、すばる望遠鏡、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡などを総動員して追跡。2カ月にわたる国際協力の末、2025年2月に警報解除となった緊迫の記録をお届けする。 by Robin George Andrews2025.10.06

この記事の3つのポイント
  1. 天文学者が小惑星2024YR4を発見し、2032年に3.1%の確率で地球衝突と発表した
  2. 都市破壊級の小惑星衝突リスクがこれほど高確率で判明したのは観測史上初めてだった
  3. 国際観測網による追跡で最終的に衝突確率はゼロとなり警報は解除された
summarized by Claude 3

もし何かが起こる確率が3.1%だと聞いたら、それほど高いとは思わないかもしれない。しかし、地球を守る責任を負っている人々にとっては、非常に大きな意味を持っている。

2025年2月18日、天文学者たちは、全長約40~90メートルの小惑星が、3.1%の確率で2032年に地球に衝突する可能性があると結論付けた。これほど危険な大きさの小惑星が地球に衝突する確率が、これほど高かったことは今までになかった。このニュースの行方を追ってきた人にとって、新事実は不安を感じるものだった。しかし、多くの科学者やエンジニアにとっては、深刻な事態にもかかわらず、少し刺激的なことでもあった。

衝突の可能性がある場所には何もない海域も含まれていたが、「2024 YR4」と名付けられたこの宇宙岩石(小惑星)は、ムンバイ、ラゴス、ボゴタなど、人口密度の高いいくつかの都市にも落ちる可能性があった。もしこの小惑星が実際にそのような大都市に衝突した場合、最良のシナリオは深刻な被害を負うことであり、最悪のケースは完全な破滅を招くことだった。そして今回初めて、国連の支援を受ける研究者たちのグループが、世界の運命についてハイレベルな議論を始めた。この小惑星が地球に衝突するとしたら、それを阻止できる可能性があるのはどのような宇宙ミッションなのだろうか? 宇宙船をぶつけて軌道をそらすのか? 核兵器によって迎撃したり、完全に破壊したりするのか?

同時に、世界中の惑星防衛の研究者たちは戦闘配置についた。その運命を回避できるかどうかを確認するためだ。精神的にもスケジュール的にも新たな負担がかかるにもかかわらず、彼らはこの銀河で最も冷静沈着な人々であり続けた。「『行けなくなった。地球を救わなければならないんだ』と言って約束をキャンセルせざるを得ないこともありました」。2024 YR4の発見者の1人である、欧州南天天文台(ESO)の天文学者オリヴィエ・エノー博士は話す。

その後、この歴史的な事実が発覚したのと同じくらいすばやく、専門家たちは危険は去ったと宣言した。2月24日、小惑星追跡者たちは警報を解除した。多くの惑星防衛の研究者たちが確信していた通り、地球は衝突を免れるだろう。

その判断はどのようにして下されたのか? いったいどうやって、小惑星の増大する(そしてさらに増大し続ける)脅威を追跡し、最終的に衝突しないと判断できたのか?

この記事は、世界中の天文学者たちから成る広範なネットワークが、わずか2カ月の間に、これまでに発見された中で最も危険な小惑星である2024 YR4を発見し、追跡し、軌道をマッピングし、対処計画を立て、そして最終的にその脅威を否定するまでの経緯を描いたインサイド・レポートである。すべてが極めて厳しいスケジュールのもとで進行し、ほんの一瞬ではあるが、最もリスクが高まった瞬間もあった。

「これは演習ではありませんでした」とエノー博士は言う。「現実の出来事だったのです。本当に正しく対処する必要がありました」。

始まり

📅2024年12月27日

🔭小惑星地球衝突最終警報システム(ATLAS、ハワイ州)

はるか昔、火星と木星の間にある宇宙岩石のハイウェイを高速で飛び回っていた1つの小惑星が、惑星の王である木星の重力によって軌道を乱された。しばらくふらついたのち、その小惑星は小惑星帯からはじき出され、太陽の周りを回った末に、地球の軌道と交差する軌道に乗ってしまった。

「最初にその小惑星を検知したのは私でした」。ハワイ大学のラリー・デノー博士は当時を振り返る。「黒い背景に、小さな白い点が写っていました」。

デノー博士は、米航空宇宙局(NASA)が資金提供している小惑星地球衝突最終警報システム(ATLAS)望遠鏡ネットワークの主任研究員の一人である。検知があったのはクリスマスのわずか2日後だったが、博士は通常通りの手順に従い、その小さな点の観測データを、マサチューセッツ州ケンブリッジにある小惑星センター(MPC)に送信した。MPCもまたNASAの資金で運営されている施設である。

もし小惑星の検知という事実がなければ、まったく異なる現実があったかもしれない。幸運なことに、私たちが生きている現実世界では、NASAをはじめ、欧州宇宙機関(ESA)や日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)といった各国の宇宙機関が、小惑星の検出活動に年間数百万ドルを投じている。

このような観測活動が可能な天文施設は複数の国にあるが、明らかに主導的な役割を担っているのは米国である。米国の惑星防衛プログラムは、潜在的に危険な宇宙岩石を特定することだけに特化した複数の望遠鏡施設に資金を提供している(少なくとも現時点では米国が先頭を走っている。しかし、ホワイトハウスによるNASAと国立科学財団への大幅な予算削減案により、惑星防衛に関わるいくつかの観測施設や宇宙ミッションが、予算不足や完全な打ち切りの危機に瀕している)。

それらの観測施設で働く天文学者たちは、脅威となる小惑星をできる限り早く見つける任務を負っている。見えないものとは戦えないからだ。「彼らは惑星防衛の最前線にいます」。ワシントンD.C.にあるNASAの惑星防衛調整局で惑星防衛官代理を務めるケリー・ファストは言う。

ATLASはこの天空監視プロジェクトの一部であり、ハワイに2基、チリに1基、南アフリカに1基の、計4基の望遠鏡で構成されている。これらの望遠鏡は、天文学者が一晩中レンズを覗いて観測するような方法ではなく、「完全にロボット化された自動制御」で運用されていると、デノー博士は話す。博士らが開発したコードスクリプトによって駆動されるこれらの「機械の目」が協調して作動し、疑わしいすべての宇宙岩石を監視しているのだ。天文学者たちは通常、遠隔地からそれらの望遠鏡の観測をモニタリングしている。

ATLAS望遠鏡はサイズが小さいため、特に遠方にある天体を見ることはできない。しかし視野が非常に広いため、宇宙の広大な領域を一度に捉えることができる。「天気さえ良ければ、北極から南極まで、夜空を常時監視しています」とデノー博士は語る。

もし星の光を反射している動く天体が検知された場合、デノー博士のような研究員がアラートを受け取り、その天体が実在するものか、アーティファクト(画像上の意図しない異常やノイズ)ではないかを目視で検証する。疑わしい小惑星(または彗星)と確認されると、その観測データがMPCに送られる。MPCには、(他の情報とともに)既知のすべての小惑星と彗星の軌道データが登録されている掲示板がある。

その天体がすでに登録されているものでなければ、新発見として発表され、他の天文学者が追跡観測をすることができる。

ここ数年の間に、ATLASは地球近傍軌道にある1200個以上の小惑星を検知している。最終的には無害であると判明する宇宙岩石の発見は、日常的な業務である。だからこそ、12月のその日、ATLASのチリの望遠鏡によって新たな地球近傍小惑星が発見されたときも、特に誰も驚かなかったのだ。

その夜、デノー博士は自宅で、コンピューターを使って深夜まで仕事をしていただけだった。もちろんそのときは、自分の望遠鏡がやがて歴史に名を刻むことになる小惑星を発見していたとは知る由もなかった。それは、地球の未来を変えるかもしれない小惑星だった。

MPCはすぐに、この新しい宇宙岩石がこれまでに「発見」されたものではないことを確認した。天文学者たちはこの小惑星に「2024 YR4」という暫定識別名を与えた。

🔭カタリナ・スカイサーベイ(Catalina Sky Survey、アリゾナ州)

同じ頃、この発見は、NASAが資金提供する別の施設、カタリナ・スカイサーベイ(Catalina Sky Survey、以降カタリナ)にも共有された。この施設はツーソン北部のサンタカタリナ山脈に3台の望遠鏡を設置し、アリゾナ大学が運営している。「私たちは非常に厳密な体制で運用しています」。この施設で彗星と小惑星の観測を担当しているカッペル・ヴィエルチョシュ博士は言う。ATLASとは異なり、カタリナの望遠鏡は多くが自動化されてはいるものの、天文学者が常駐して彗星や小惑星といった調査対象をリアルタイムで柔軟に変更できる体制をとっている。

カタリナのスタッフは、ATLASの観測仲間から物体発見のアラートを受けると、すぐに小型のシュミット望遠鏡を使って観測を開始した。この望遠鏡は、非常に速く移動する明るい天体の観測に特化している。スタッフが独自に取得した2024 YR4の観測データをMPCに送信している最中、カタリナのエンジニアであるデビッド・ランキンは過去の観測画像を確認し、12月26日に撮影された夜空の画像にこの新しい小惑星が写っていたことを発見した。ちょうどその頃に、ATLASでも12月25日の画像に2024 YR4が写っていたことに気づいていた。

これらの観測結果を総合することで、この小惑星の存在が確認された。最接近はクリスマス当日であり、つまりその時点で、すでに地球から離れ、再び宇宙空間へ向かい始めていたのだ。しかし、この宇宙岩石はどこへ向かっているのか? 太陽の周りを回った後、その最終的な進路はどこに向かうのか?

🔭地球近傍天体研究センター(CNEOS、カリフォルニア州)

もしその答えが「地球」であったとしたら、ダビデ・ファルノッキア博士は真っ先にそれを知る人物の一人だっただろう。博士は、まるで「壁の見張り役」のように、地球の安全を監視しているNASAの専門家の一人だ。

ファルノッキア博士は、自身の職務について驚くほど冷静だ。2024 YR4について初めて聞いたときも、ほとんど動じなかった。それは地球の近くを漂う、ごくありふれた小惑星の一つにすぎなかった。チェックリストの項目が一つ増えただけのことだった。

MPCによって2024 YR4が記録された後、ファルノッキア博士の仕事は、この小惑星がたどる可能性のある軌道を割り出し、そのどれかが地球の軌道と交差しているかどうかを調べることだった。博士はカリフォルニア州にあるNASAの地球近傍天体研究センター(CNEOS)に所属しており、太陽系内の既知のすべての小惑星と彗星の追跡を担うチームの一員である。「現在、対象となる天体は140万個あります」。博士は淡々とした口調で話す。

かつては、天文学者たちは複数の観測画像をつなぎ合わせて軌道を推定し、進路を手作業で図にプロットする必要があった。しかし今日では、ファルノッキア博士には「Sentry(セントリー)」と呼ばれるデジタルの頭脳がある。この自律型システムは、博士自身も開発に関わったものである(なお、ESAの地球近傍天体調整センター=NEOCCや、民間のNEODySなど、イタリアにも同様の機能を持つ2つの施設が存在する)。

このSentryは、MPCに登録されたすべての既知の小惑星や彗星の新たな観測データを用いて、それぞれの軌道を継続的に精密化し、その進路を予測する。予測にあたっては、重力という不変の法則に加え、天体が通過する惑星や衛星、他の大きな小惑星からの重力影響もすべて考慮される。最近のアップデートにより、太陽光によるわずかな圧力さえも計算に組み込まれるようになった。この結果、Sentryは今や、少なくとも100年先までの天体の動きを高い精度で予測することが可能となっている。

新たに発見された小惑星のほとんどは、すぐに衝突の危険がないことが判明する。だが、仮にごくわずかでも、今後100年以内に地球へ衝突する可能性があると判断された場合には、そのような最悪の事態を観測によって排除できるまで、Sentryの「リスク・リスト」に登録される。念には念を、というわけだ。

12月下旬、Sentryは限られたデータに基づき、2024 YR4が2032年に地球に衝突する可能性を無視できないと結論付けた。欧州のNEOCCにある同等のソフトウェア「Aegis(イージス)」が出した結論も、同じだった。だが、慌てる必要はない。観測データが増えれば、2024 YR4は高い確率でリスク・リストから除外されるだろう。ファルノッキア博士にとっては、それもまた「いつもの仕事」の一部に過ぎなかった。

地球に向かって飛来する小惑星が、常に問題になるとは限らないというのは、注目すべき点だ。小さな岩石であれば、1日に何度も地球の大気圏で燃え尽きている。今年すでに、月のない夜に一度は流れ星を見かけた人も多いはずだ。しかし、ある大きさを超えると、それらの岩石は無害な流れ星から、まるで核爆弾 …

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