ガラス用クリームがヒント、MITが「低コスト」リチウム抽出法
MITの研究チームは、ガラス用クリームに着想を得た弱酸でケイ酸塩鉱物を溶かし、リチウムを低コストかつ低環境負荷で取り出す手法を開発した。スタートアップが商用化を進め、「世界最安」を目指す。ただ価格変動の激しい市場で、その試算が通用するかは見通せない。 by Casey Crownhart2026.06.02
- この記事の3つのポイント
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- MITがフッ化アンモニウムを用いた低環境負荷・低コストのリチウム抽出新技術を開発し、スタートアップが商業化を推進
- 従来の高温焼成や危険薬品を不要とし、95℃以下の撹拌タンクで鉱石成分をほぼ全量回収できるプロセスを実現
- 価格変動の激しいリチウム市場や大手競合との競争、楽観的なコスト試算への懸念が商業化の主要リスクとして残る
マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、電気自動車やエネルギー貯蔵システムに使われるリチウムイオン電池に不可欠な金属、リチウムを抽出する新たな方法を発見したと発表した。この新技術は、既存の手法と比べて環境負荷が低く、コストも安くなる可能性がある。
この研究は2026年5月28日付で、学術誌『サイエンス』(Science)』に掲載された。ロック・ゼロ(Rock Zero)というスタートアップがこのプロセスの商業化に取り組んでいる。
「大規模に展開できれば、世界で最もコストの低いリチウム調達方法になると確信しています」と語るのは、論文著者の1人であるMITのイェット=ミン・チャン教授だ。チャン教授は気候テック企業を次々と立ち上げてきた連続起業家であり、フォーム・エナジー(Form Energy)やアディス・エナジー(Addis Energy)などの創業にも関わっている。
現在、リチウムを最も経済的に入手する方法は、数千年をかけて岩石からリチウムを溶け出させた濃い塩水(かん水)から抽出することだ。しかしこの手法は地理的な制約があり、現状では大規模な蒸発池のために広大な土地を必要とする。より一般的な手法は硬岩採掘であり、大きな鉱石を爆破し、高温で焼成した後、危険な化学薬品を使って処理する。
チャン教授の研究チームが開発した新手法は、通常は反応しにくいケイ酸塩鉱物を弱酸で溶解するものだ。これによりリチウムだけでなく、アルミナやシリカなど他の有用な物質も取り出せる。
この研究と新たなスタートアップの起源は、チャン教授が設立した別のスタートアップであるサブライム・システムズ(Sublime Systems)にある。同社は電気化学を用いてセメントを製造している。
研究チームは、より強度の高いセメントを作るために、高反応性のシリカの供給源を探していた。他の物質と容易に結合できる反応性材料を作る方法の一つは、非反応性の材料を溶解し、より反応性の高い形態で再固化させることだ。ケイ酸塩を溶解すること自体は不可能ではないが、最もよく知られた方法は、極めて危険な化学物質であるフッ化水素酸を使うことだ。フッ素を含む他の化学物質も候補となるが、反応の副産物としてフッ化水素酸を生成するものもある。
チャン教授はかつて自宅のリノベーションでガラス(シリカからできている)を扱った経験からヒントを得た。「約25年前、マサチューセッツ州フレーミングハムでシャワ …
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