電気の届かないケニアの町で、なぜ電動製粉機が売れるのか?
電気が十分に届かない地域でこそ、電気で動く製粉機が広がっている——。一見矛盾するこの現象を支えるのは、価格が大幅に下がった太陽光発電だ。ケニアでは25%の地域が集中型の電力を得られないが、オフグリッドの太陽光がその穴を埋めつつある。 by Geoffrey Kamadi2026.06.18
- この記事の3つのポイント
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- ケニアの農村・低所得地域向けに、太陽光発電で動く製粉機がディーゼル代替として普及しつつある
- 初期費用約1300ドルを6〜12カ月で回収でき、燃料費が不要なため利益率を最大80%改善できる
- 開発途上国の電力普遍化とクリーンエネルギー移行を両立する小規模農業機械の事業モデルとして注目される
ケニアの電力網の大部分は再生可能エネルギーで賄われている。しかし、地域の25%が集中型の電力供給を受けられていない状況にあり、同国は排出量を増やすことなく2030年までに電力の普遍的アクセスを実現するという目標に向け、オフグリッド太陽光発電の活用を模索している。太陽光技術の経済性が着実に向上していることも追い風だ。数年前には太陽光パネルの価格は1ワット当たり約3ドルだったが、今では数セントにまで下がっている。
活気あふれるナイロビの外れを進むと、高層ビルと金物店が混在し、その合間にトウモロコシやジャガイモを育てる小さな畑が点在する光景が広がる。しばらくすると、眼鏡をかけたミルカ・ワンジルが営む路上の売店にたどり着いた。彼女は500ミリリットル入りの牛乳パックやパン、マッチなどを販売しているが、本業はサービス業だ。地域住民のためにトウモロコシ粉を製粉しており、その粉は主にウガリに使われる。ウガリはイタリア料理のポレンタに似ているが、それほどクリーミーではないケニアの代表的な料理である。
小さな店の中央には、製粉機が3本の調整可能な脚で支えられている。「お客さんは穀物を挽きに来るたびに、ほかの商品も欲しがりました」とワンジルは言う。「それで、こうした商品も置くようになったのです」。
製粉機を備えた店は、農村部だけでなく多くの地域、とりわけ低所得層の多い地区では都市部であっても一般的だ。しかし、そのほとんどはディーゼル燃料を使用している。ワンジルの製粉機はどうかというと、太陽光発電と系統電力のどちらでも稼働する。
ワンジルの製粉機を設計したアグソル(Agsol)のCEO兼共同創業者、マット・カーが、製品へのフィードバックを得るために私とともに店を訪れている。彼女には1つ気になる点がある。「動作が遅くなることがあります」とワンジルはカーCEOに伝えた。穀物が機械に送り込まれる前の投入室で詰まることがあり、ときには機械全体が停止してしまうという。
カーCEOによると、穀物に少しでも湿気がある場合、内部の粉砕ハンマーができるだけ多くの粉を取り出せるよう、製粉機は自動的に回転速度を落とす。そのため、残念ながら彼女が指摘するような問題が起きることがあるという。
全体として、ワンジルは2025年12月から使い始めたこの機械に満足しているようだ。この製粉機によって事業運営コストは下がった。カーCEOによれば、ディーゼル式製粉機を使う店主が顧客から受け取る料金の約40%は燃料費に消える。一方、アグソルの太陽光発電式製粉機は、約1300ドルの初期費用を回収した後(回収期間は6~12カ月)、利益率を最大80%高めることができるという。またワンジルは、ディーゼル式とは異なり、ごく少量の穀物でも製粉できる点を気に入っており、そのおかげで新たな顧客も何人か獲得した。
カーCEOは2018年にケニアでアグソル初の製品を発売し、これまでに400万ドル超の資金を調達してきた。その多くは、この地域のクリーン・エネルギープロジェクトを支援する英国政府のプログラムを通じたものだ。昨年、アグソルは530台を販売した。ナイロビ郊外に本拠を置く同社には、遠くモザンビークやアンゴラからも注文が寄せられている。
ワンジルに別れを告げると、彼女は振り返って身をかがめ、セメントの床に置かれた木製パレットの上に整然と並ぶ、ピーナツ、緑豆、米、キビが半分ほど入った麻袋に手を伸ばす。そしてその一つからひとすくい分を取り出し、秤の上にあける。客がサービスを受ける順番を待っている。
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- ジェフリー・カマディ [Geoffrey Kamadi]米国版 寄稿者
- ナイロビを拠点に活動する受賞歴のあるフリーランスのジャーナリスト。科学、気候変動、環境、技術、開発を専門に取材している。
